英霊顕彰会 大宮司 田安俊孝
文字数 1,077文字
日本列島に残る、最後の「
あまりにも馬鹿馬鹿しい理由で……。
我々の武器は……大幅に減り……最後の方法を使っても……失なわれたモノの十分の一も補充する事は出来なかった。
だが……それでも希望は有る……。闇夜の蛍ほどの儚い希望かも知れないが……。
いつの日か再建されるであろう「日本」を導く者達である我等さえ居れば……新たなる陛下すらいくらでも生産出来るし、いつか、外国勢力の手先と化した本土の奴らを忠良なる日本の臣民に改造する日も夢では無い。
我々自身こそが、将来の日本にとっての希望となる。
我々の使命は……この、か細い希望を明日へと繋ぐ事だ……。
「大宮司……御面会の方が……」
「誰だ? こんな時にか?」
そう聞いた次の瞬間……その職員の声にある感情が混っている事に気付いた。
……恐怖……。
「お……お客様は……も……もう……お部屋までいらっしゃっています……」
「よう……」
「だ……誰だ?」
執務室に入って来たのは、右手に拳銃を、左手にジュラルミン製のトランクを持った……白いダブルの背広に、派手なピンクのワイシャツ、白い絹のネクタイをした男だった。
頭には一本の髪の毛もなく……その代りに……縫合痕……。素人目にも、出鱈目な場所に、わざと付けたとしか思えぬモノだった。
「いやぁ……見事だったぜ。なるほど……最初から、こうすれば良かったのか……。史上最悪級の狂人になりたけりゃ……『狂人になりたい』と云う気持ちを捨てて、自分を正気だと思い込むだけで済んだのか……」
そいつは……昨晩……「護国軍鬼」を名乗る非国民どもが言ったのと似たような戯言をほざいた。
「何の用だ? 私を殺したとて……日本を滅ぼせると思うなよ」
「業務提携をしたい。あんた達に好き勝手出来る力を与えれば……俺達の望みを、俺達より効率的に叶えてくれそうなんでな」
「だ……だから、名前ぐらい名乗れっ‼」
「親から付けられた名前は忘れた。とは言え、俺が誰かは明白だ。『本当の関東』の『
どう云う事だ? ヤツの言っている事が本当なら……ヤツは我々が支持する正統なる日本政府の敵の筈……。それに「『予備機』の1つ」とは……何を意味している?
「まずは手土産だ。あんたらが保有してる『国防戦機・特号機』の……起動方法を教えてやるよ」
そう言いながら、その男は、ジュラルミンのトランクを開けた。
そこには……6つの金属球が有った。