緋桜 (1)
文字数 1,928文字
意識を取り戻して、最初に耳に入ったのは、その一言。
「……ここ……どこ? あと、誰?」
それほど大きくない部屋に仮眠ベッドが2つ。
1つにはボクが……もう1つには、ボクを助けようとしてくれた2人組の女の子の片方。
声の主は知らない女の子。
革ジャン。男物のシャツ。厚手のズボン。見た目より頑丈さ重視っぽい革のブーツ。
何とも独特の感じの太めの眉にショートカットの髪。
声で女の子だと判ったけど、美少女と云うより美少年風の顔。
「あ……あれ? 今……何時?……えええええっ⁉」
もう1人の女の子も目を覚ました。
「あ……あの……それと、あたしの眼鏡はどこに?」
「無くても大丈夫でしょ」
「い……いえ、その……そんな事は……」
「まぁ、
「知ってたんですか……?」
「まぁ、どっちみち『秋葉原』には戻れないけどね」
「えっ?」
そう言いながら入って来たのはボクを助けてくれたもう1人の女の子。
「あんた達が意識を失なってる間に起きた事を説明すると……『銀座』港は壊滅。普通の方法じゃ『島』の外には出られない」
「あ……あの……じゃあ、ボク、当分、帰れないの?」
「そもそも、どこから来たの?」
「……台湾」
ボクを助けてくれたおね〜さんと、知らない女の子は顔を見合せる。
「あ……あの……じゃあ、『秋葉原』は?」
そう聞いたのは、ボクの隣のベッドに居た女の子。
「『本土』のヤクザと、同じく『本土』御当地ヒーローと、複数の『自警団』がドツキ合い中」
「ええええっ?……あの勇気さんと……」
「ねぇ、所でさ、『Armored Geeks』のメンバーって、何人ぐらい?」
「部外秘で……熱っ⁉」
何が起きたんだ?
「気」や「霊力」は全然感じなかったのに、隣りで寝てた女の子の首筋から薄く煙が上がり火傷が出来る。
「正直に言ってもらえるよね?」
「あと、あたし、人の心が読めるんで、嘘言ったらすぐ判るよ」
どうなってんだろ?
ボクを助けてくれた2人は仲間同士じゃないのか?
「えっと……前線メンバーが三〇人弱でぇ、後方支援要員が十五名ほどぉ……」
さっきよりカン高い声で、目を泳がせながら答える隣のベッドの女の子。
「聞こえた? 『Armored Geeks』の本部に居るのは、最大でも戦闘員が十名そこそこ
ボクを助けてくれたおね〜さんが、どこかに連絡。良く見ると片方の耳には、マイク付きの小型イヤフォン。
「あの……ボク、その……『九段』で探し物が有るんだけど……」
「何?」
「ええっと……第2次世界大戦前に、台湾から日本に持ち込まれたモノが有って、それの本当の持ち主は、ボクの先祖で……」
「それが、今、『九段』に有るので、取り戻しに行こうとしてた、と」
「1人で?」
「……う……うん……。それを取り戻すのが、少し前に死んだ、お祖父ちゃんの夢だったんだ……」
「えっ? 音声をスピーカーに切り替え」
その時、何かの連絡が入ったらしい。
『台湾? ひょっとして、直径一五㎝ぐらいのほぼ球形の翡翠の玉か? たしか、大地の「気」を集める効果が有るとか云う、台湾先住民のセデック族の……』
二〜三十代の女の人の声。
「な……何で知ってるの?」
『それは……日本に持ち込まれた後、更に、旧満洲国に渡り……あるモノを作る実験の為に魔改造されて……不要になった後、旧・靖国神社の宝物庫に納められた』
「だから……何で知ってるの? あと……魔改造って何?」
『大地の「気」を集める力を「死霊」を集める力に変えられた……
「ま……まさか……その……」
『そうだ……。「九段」の自警団が「死霊」を呼び出すのに使っているのは……旧・大日本帝国陸軍の特務機関「大連高木機関」「哈爾浜高木機関」の実験の産物だ』
「高木?」
「あと……死霊って……まさか……」
「何が……どうなってんだよっ?」
『「九段」に有る大量の「死霊を呼び出す呪具」の完成品を使った「兵器」が……既にこの島に1つ有る。そして、もう1つが、間も無く、この「島」に上陸する』
「また……怪獣大戦争か……。ところで、3つ目は何者なの?」
『3つ目……待て、何だ、そりゃ?』
「空から、この『島』に近付いて来てるよ……『護国軍鬼』と……あと『国防戦機・特号機』とか云う名前のヤツに良く似た……『死霊』と『太陽』の2つの力を持った『神様モドキ』が……もう1つ」