高木 瀾(らん) (5)
文字数 978文字
なるほど……この「悪霊」とやらは意識が無かったり……有っても普通じゃない状態になってるヤツに取り憑くらしい。
なら……当然、こいつもそうなるか……。
とは言え、胸に矢が刺さったまま……つまり高速治癒能力の鍵である心肺機能が低下しているので、まだ表皮の火傷は治りきっていない。
もちろん、私が外した右肘の関節もそのままだ。
「こいつでも何とかなると思ったのか?」
ヤツの勢いを逆用して投げ飛ばす。
「神保町」の自警団のリーダーの真横にヤツの体が落下。
受け身は取れていない……。やはり……そうか……。
「馬鹿な……」
「神保町」の自警団のリーダーの呆然とした声。
しかし、その一言が終らぬ内に、久米は立ち上がる。
「そうだ……まだ、いける筈だ……やれっ‼」
残念なお報せだが……「神保町」の自警団のリーダーは、肝心な事に気付いていない。
何故、久米が「有楽町」の警察の特殊部隊を壊滅させるほどの戦力を持っていたのかを……。
久米の持つ高速治癒能力、超身体能力、鋼鉄さえ穿ち斬り裂く爪や牙……そして、「防御特性を自由に変えられる鎧」である体毛……。そんな……持って生まれた能力や武器だけでは、久米はここまでの……警察の特殊部隊をたった1人で易々と壊滅させる事が出来るような……化物にはなっていない。
再び、久米が飛びかかろうとする直前……私の蹴りが久米の右の太股に入る。
それと同時に、「鎧」の足に有る
久米の大腿骨が砕け、太股の動脈が有る辺りに穴が開く。
「来てくれたか……」
「がじっ♥」
制御AI搭載の
搭載されていた軍刀を取り出し……抜刀。
反りの外側は通常の刃……内側はノコギリ刃の両刃の刀。
内側の刃で左肩に斬撃。
ヤツの鎖骨が砕け……文字通り……ノコギリで挽いたようなズタボロの傷口が開く。この傷口なら……高速治癒能力持ちでも、塞がるまでに綺麗な切り口よりも数倍……場合によっては十倍以上の時間がかかる。
こいつの能力は、こいつの知恵・経験・直感・技が有ってこそ活きる……。それらを失なった状態では、こいつの戦力は半減する。
ましてや、この重傷……。
「まだ……やるか……?」
「神保町」の自警団のリーダーは……再び……あの「獣の咆哮」のような呪文を唱え……しかし……。