高木 瀾(らん) (2)
文字数 759文字
さっき、相手がハンマを振り降した時、そのハンマを払い除けつつ、相手の力を利用して、相手を投げ飛ばし……。
ここまでは問題無かった。
投げ飛ばした後、相手が宙を舞う軌道が、想定したものと……わずかに……しかし致命的に違っていた。
わざと相手が受け身を取れるように投げたつもりが……相手は頭から落ちている。
ほんのわずかの間に「数息観」と呼ばれる呼吸法で心を落ち着ける。
続いて、私が、自分が投げ飛ばした相手を助けようとした次の瞬間……馬鹿野郎。
相手は、よりにもよって、頭が地面に激突する直前、地面に片手を付け……骨は折れてないようだが、手首・肘・肩の関節は外れたようだ。
「おい……何なら手当しようか?」
「ふざけるなぁっ‼」
私の提案に対する答は颶風だった。
私は距離を取る。
「不自惜身命」
相手は、「火事場の馬鹿力」を引き出す自己暗示か呪術を使っているようだ。
なら……私も同じ手を使うとしよう。
「うおおおっ‼」
相手の更なる攻撃。だが、私は相手の懐に入り込む。
相手の攻撃が命中……ただし柄だ。ダメージは防具で防げる。
私は両手を交差させ、相手の横襟を取り……。
「ん?」
「てめぇぇぇぇぇっ‼」
私の両手には……千切れた相手のスカジャンの襟が握られていた。
しまった。私も相手も「火事場の馬鹿力」を引き出している状態だ……。絞め落そうとする私の力と、反射的に、それから逃げようとする相手の力が、相手のスカジャンの強度を上回ってしまったようだ。
仕方ない。私は、相手の水月に膝蹴りを入れる。
「うげっ‼」
倒れない。
だが、一瞬の隙は出来た。
私は、その隙を突いて、相手の背後に回り込み裸絞。
数秒後……相手は落ちた。