百瀬 キヅナ (1)
文字数 870文字
この世界は……本当の意味で「近代」を迎えてなどいなかった事を……。
「科学技術と
ただ、それは、私達にとっては、あまりに当り前の事なので、その「事実」を全人類が知った時の「衝撃」は……逆に想像する事さえ困難だ。
私達の世代は、三〇代半ばより上の連中から、こう呼ばれている。
……デジタル・ネイティブ……「インターネットや携帯式デジタル端末が生まれた時から当り前のように身の回りに溢れていた世代」……。
そして……アノマリー・ネイティブ……「様々な先天的・後天的『異能力者』の存在が生まれた時から当り前のように知られていた世代」……と。
だが、流石に、この状況は、そんな世代である私にとっても異常だ。
ガスマスクを顔につけバックパックを背負った約二十匹の日本猿。
背中には、コスメの試供品のスプレーボトルほどの大きさの金属缶を括り付けられ、頭部には小型カメラを取り付けられた数十匹のネズミや野良猫。
同じく小型の金属缶を「背中」に背負った小型の八足歩行ドローンが十数台。
動物を操る「魔法」と「科学技術の産物」の共同作業。
……いや……これこそが……これからの時代の「当り前」なのだろうか?
もちろん……この時、私は、まだ知らなかった……。
この世界は「科学技術の時代」と「魔法の時代」だけでなく、更に……「人間の『科学』や『魔法』を超えた『神々』が我が物顔で振る舞っている『神話の時代』」も重なって存在していた事を……。
そして、この時は、まだ想像してすらいなかった……。
この夜の内に……「神々」としか呼べない「何か」の力の片鱗を目撃する事になる、と云う事を……。