関口 陽(ひなた) (6)
文字数 656文字
ある薬を打たれた「英霊顕彰会」の親玉らしき老人は、そう叫び続けていた。
本人は毒だと思い込んでるが……正体は単なる「恐怖心を呼び起こす」効果が有るだけのモノだ。
「判った。その前に、あんたらが集めたモノが、どこに有るか吐け」
私達が鳥居を出ると、すぐ、その爺さんは……ある建物を指差した。
かつて、「本物の靖國神社」に有った……らしい……遊就館とか云う見世物小屋そっくりの建物だ。
「あ……あそこの地下……」
「って……あれ、何?」
「あ、どうも……」
鳥居から少し離れた所に居たのは……。
「えっと……その声は……まさか……」
白い狼男は……それを操作してるのが誰か判ったようだ。
「な……なるほど……。あいつには人間の生命力を検知する能力が有る……らしい。なら、あいつは、これの存在に気付いてない可能性が高い訳か……」
「ええ、そう云う事です」
そいつの横には、
「あの……俺……嫌な予感しかしないんですけど……。あいつの……いつもの……その……」
「いや……あいつにも、学習能力は有るだろ」
「は……早く……解毒剤……」
老人は、そう叫び続けていた。本当に死ぬと思ってるせいか、薄々は薬の正体に気付いているが、強制的に植え付けられた「恐怖」に耐えられなくなったせいかは判らないが……。
「すぐには死なんよ。まずは、私達が探してるモノが有る地下室まで案内してくれないかな?」
そして……私達が「紛物の遊就館」に入った途端……。
……爆音が轟いた。