眼鏡っ娘 (3)
文字数 1,046文字
爆発が起きた。
爆発と言っても炎は無い。でも熱は感じる。「熱い」と感じるけど、何かが燃え出すほどじゃない熱。
その爆発で、ハンマーを持った女の子は工事用のショベルカーに叩き付けられた。
「姐さんっ‼」
あたしと山内さんは、爆風で、バイクから跳ね落される。
ガスマスクのお蔭で、あたしと山内さんはガスの影響は免れてる。
しかし、どうやら、この謎の「炎が無い爆発」のせいで、ガス弾は粉砕され、催涙ガスは、普通より速く、そして、広く薄く拡散されてしまったらしい。
あたりの人達は、涙と鼻水と涎を垂らしているが……症状は思ったより軽そうだ。
少なくとも、ここに居る「魔法使い」達は、「魔法」を使う為の精神集中は無理だろう。
やがて、あたし達「Armored Geeks」のロゴが入ったバンが、やって来た。
「どうしたんだ?」
バンから出て来たのは強化服「
「あ……あの……レ……レナさんは……?」
「レナ? レナがどうした? どこに居る?」
「えっ?」
「しかし、どうすりゃいいんだ、このグダグダの状況……」
辺りには涙と鼻水と涎を出しながら、咳き込んでいる「寛永寺僧伽」と「入谷七福神」の人達。
そして、勇気さんは「寛永寺僧伽」のメンバーの中でも、大柄な男の人に近付いていく。
あたしも勇気さんに付いて行ったけど……あ……この人、確か……。
「おい、おっさん……元気だったか?」
「だ……誰?……あ……そのメスガキは、あん時の神保町の……じゃあ、お前は……」
「ああ、あの時の石川
「何て真似しやがる……」
「それは、こっちのセリフだ。他人の『町』で、何、勝手に喧嘩してんだよ?」
「うるせぇ。他の町の『自警団』に舐められるのが嫌なら
ゴッ‼
勇気さんの靴の爪先が、「寛永寺僧伽」の……多分リーダーの腹に叩き込まれた。
「少しはマシになったか、おっさん?」
「あ…あの……勇気さん……それ……やり過ぎじゃ」
「何だって?」
「い……いえ……何でもありません」
「ああ、お前、本当にいい子だな」
そう言いながら、あたしの頭を撫でる勇気さんの声は……いつもの通り、芝居がかっていた。そう……感情を無くしてしまった人が……感情が有るフリをしているのだから……。
その時……。
「あ……危ないっ‼」