高木 瀾(らん) (7)
文字数 1,564文字
私は後方支援要員に加わっている望月に、そう聞いた。
「いや、そっちの『鎧』と同じで射撃補正機能が付いてるみたいだ……。でもさ……こんな、どこにでも有るモノが……えっと……その『鎧』以上の化物との戦いの切り札になるの?」
「起きてるモノは親でも使えってヤツだ。そいつは……ヤツの能力の盲点になる筈だ。けど、気を付けろ。普通の敵と真正面から戦えば、あっさりやられる可能性が大だ」
「そんなモノかな?」
「あのさ……お前……人殺した割に、普通過ぎないか?」
「い……いや……VRゴーグル越しなんで、あんまり実感が湧かないって云うか……」
「これは、VRゲームじゃなくて、現実なの」
「ついでに……カメラは赤外線モードだったんで、あんまり、現実の光景っぽく見えなかった」
「やれやれ……こんな状況に慣れ過ぎないように気を付けろ」
私は望月が狙撃銃で倒した「
その額には……「LJG Subject:」……そして、シリアル番号らしい何桁もの数字とアルファベットの羅列。
しかも、短髪の頭には……脳手術の跡。
胸糞悪くなる過去の軍事研究の成果……もしくは失敗作だ……。
だが、前者の実験の結果生まれたのは「もの凄く頭のいいコントロール不能な人造のサイコパス」で……後者は成功したが……指揮官が居なければ大した役には立たない。
しかし、後者を今も作り続けている組織が有る。「関東難民」の内、行き場の無い人達を誘拐し……脳改造している組織が……。
「『
「おい……冗談だろ……」
「よりにもよって、警察機構がテロ組織から使い捨ての兵士を買ってるのか……保護したはいいが、不可逆的な脳改造を施されてた人間を兵士に流用してるのかまでは、判らんけどな……」
「でもさ……何で……こんな……脳改造されてる以外は普通の人間が……『最精鋭部隊』なんだよ?」
「何で、軍隊や警察では昔ながらの『新人いじめ』的な訓練をやってるか判るか?」
「えっ? 何の事だ?」
「右翼的・軍隊的な校風の男子校や、高校や大学の体育会系のサークルや部活の『新入生歓迎会』。理不尽企業の文字通り理不尽な内容の『新人研修』。軍隊や警察の……能力や技術やノウハウを身に付けるだけではなく、受けてる奴らの心を折る為としか思えない『新人訓練』。……形骸化したモノも有るが、それらの本来の目的は……ミもフタも無い言い方をすれば……『洗脳』だ。『新人』を組織や上位者や権威に従う人間に改造する為のな。でも、それらの『洗脳』は、精神支配・精神操作系の特異能力への抵抗訓練と相性が悪い。方式にも依るが……お互いの効果を打ち消し合って、どっちも中途半端になるか、逆に強め合って、精神操作への強い抵抗力を持つ代りに現場では使いモノにならない程に融通の効かないヤツが出来上がるか」
「おい、まさか、その解決方法がコレか……?」
「ああ。私達『御当地ヒーロー』の先人達は……構成員を『洗脳』する必要が無い『上下関係無き分散型の組織』と云う答を出したが……『レコンキスタ』は『上の命令には絶対服従し、常人と意思疎通は出来るが、操り支配すべき心を欠いた……もしくは心の在り方が常人と違う故に、常人向けの精神操作系の特異能力が効きにくい兵士』と云う答を出した……みたいだ。そして、今の時代……劣った身体能力を補う方法は、いくらでも有る」