玉置レナ (2)
文字数 941文字
『言うんじゃなかった』
私は瀾に電話しながら現場に自転車で向かっていた。
何故か、他の島の「自警団」がこの近くで喧嘩を始めやがった。しかも、これまた何故か、その喧嘩の場に、まんざら知らない仲じゃない女の子が居たのだ。
「何言ってんの? あんたが、今のあたしの立場だったら、あの
電話の向こうからは「痛いとこ突きやがって」と云う感じの舌打ちが聞こえた。
知り合って2〜3ヶ月。直に会ったのは、片手で数えられるほど。
しかし、1つ言える事が有る。瀾は言うなれば「ナチュラル・ボーン・ヒーロー」……「困った人が居たら、自分を犠牲にしてでも助ける」が第2の本能になっているようなヤツだ。
『判った。顔は隠してるよな?』
「……」
『あと……身元がバレそうな格好はしてないよな?』
「…………」
『何故、返事しない?』
「マズいかな?」
『当り前だ。まさか、学校の制服じゃないよな』
「え……っと……流石に……それは……あ……あ……」
『ちょっと待て、何かを胡麻化したがってるような口調に思えるんだが……?』
「
より正確に言えば、ウチの「秋葉原高専」には、瀾がイメージしてるであろう「制服」は無くて私服登校が基本。ただ、作業着を着用しないといけない実習が有る日には、
もっとも、作業着の色・材質・デザインは複数有って、工業化学科は白衣代りに白を使う生徒が多く、土木や建築は暗め・地味めの色の人が多いなど、学科・用途・各人の好みに合ったのを選んで着ているが。
『すぐ、家に帰れ』
「ごめん、もう現場……」
そこで喧嘩をやってた面々は……あたしに気付くと……次々と馬鹿を見る目で、あたしを見た。
「おいッ‼ 姉ちゃんッ‼ 危ないから帰れッ‼」
スカジャン姿のグループで、一番年上らしい中年男が、大声でそう叫んだ。
目的の眼鏡っ娘は、知らない男とバイクに2人乗り。あれ? 何で、ガスマスクを付けようとしてるんだ?
その時、あの眼鏡っ娘の連れらしい男が銃を構えて……あたしと同じか、少し年上の女の子を狙い……。
前にも有った、こんな事……よし……あれしか……。