関口 陽(ひなた) (2)
文字数 499文字
激痛が私の意識を現実に呼び戻した。
「ああ、気が付いたか?」
「気が付いたか、だと? 私が気絶したのは、お前のせいだろうが‼」
このチビに、あっさり絞め落された私は近くまで運ばれたらしい。
表通りに比べれば、細い道……。私は、片側一車線で、自転車用のレーンすら無い狭い道路の言い訳程度の幅の歩行者用スペースに横たえられていた。
道の両側には大きなビルが並んでいるが、私達が居る道路の側に有るのは、正面玄関ではなく、裏口・勝手口・従業員用の出入口ばかりだ。
「ああ、そうだ、これを患部に貼っとけ」
そう言って、チビは使い捨てカイロみたいな外見のモノを、身を起した私に寄越した。
「何だ、これ?」
「応急治療用の冷却材だ。一応、関節は元に戻したが、筋肉や靭帯が炎症を起してるみたいだ」
「一応、礼は言っとく」
「あ、そうだ、鎮痛剤と水も要るか」
「あ、どうも……」
「それと、はい、自白剤」
「はい、ありがとう。お前、案外、優しい……待て、今、何て言った?」
「あんたは、案外、人がいいんだな。さて、残念なお報せだ。即効性なんで、そろそろ効き始めるぞ。まず、お前は誰だ?」