こんなお話いかがでしょう① *転載分

文字数 619文字

『Sky is falling down』

 『空』をお題に小説を書こうとして真っ先に思い付いたフレーズというのが “Sky is falling” でした。Adeleを始め(007のテーマ曲だったはず?)、One RepublicもAviciiの歌詞にもよく出てくるので、すっかり頭のなかでリフレインするようになってしまっていたのです。

 その様子を想像してみるのが面白いですね。世紀末やディストピアっぽいイメージですが、もともとは童話の一節でした。”Chicken Licken”、または”Henny Penny”は19世紀に編纂されたグリム童話に収められています。どんぐりが頭に落ちてきて、勘違いしたニワトリが森の鳥たちにふれ回ります。「空が落ちてくる!王様にお知らせしなければ」

***

私は空を歩いていた。
正確に言えば、かつて空だった空間を歩いていた。
透明な青、朝日の黄金、夕日の赤銅、銀の雲。
このモジュールは古く、垂直制御装置の修理はもう困難だった。
遺棄が決まり、住民は他の銀河へと移っていった。
人類が母星を去って最初につくられたスペースモジュールの一つで、今となっては有象無象の連中が住んでいただけだったから、宇宙連邦政府も立ち退き勧告など適当で、デブリにしてしまおうという算段らしかった。
私は隠れて居残った。
母星に最も似せてつくられた内部環境。
あの頃人類はまだ地球を想い偲んでいたのだ。
そして私は、『空が落ちる』のを見たのだった。
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