こんなお話いかがでしょう⑦ *転載分

文字数 901文字

『無敵艦隊vs魔王』

 忙しくて想像力も生産性も下降気味ですが、こんなコメディ(?)が頭の中をぐるぐる回っております……本能寺の変とアルマダの海戦が意外と同じ頃、というお話。

***

 オレはボートから跳び降りて、周りの部下たちに「あまりはしゃぐな」と怒鳴り散らしているイングランド最高位の海賊のもとまで走った。
 「キャプテン、ノブナガ様はこちらに来られませんでしたか?」
 砕けたタール塗りの木片塗れになっていたサー・キャプテン・ドレイクは遂に怒りも頂点達したらしく太陽の下、吼えた。
「あのジジイ! 海賊よりもタチが悪いときてやがる!!」

 オダ・ノブナガという人物が陛下の前に引き出されたのは、まったくイングランド史上最大の災いだったと言えないこともない。なんでも日本という国の王だったらしいが、部下の反乱に遭い出奔したところ明の海賊に攫われ、オスマンの商船に売られてから、キャプテン・ドレイクの船に捕縛されたという悪運の強さである。因みにオレは、オランダから連れてこられた何の変哲も無い日本語と英語の通詞である。胃が痛い。

「女が王とはと思ったが、なかなかのものである」

 エリザベス女王の前で跪くこともなく、ノブナガ様は言ってのけた。陛下は爆笑し、今でも“アンクル・ノブナガ”と親しんで呼ばれている。「陛下は父親のような年齢の男性に甘いからな……」とキャプテンは明後日の方向を見る。そんな身も蓋も無い……

 イングランドは現在スペインと一触即発である。陛下とキャプテンはスペインの無敵艦隊(アルマダ)を駆逐するため、あらゆる手段を講じてきた。

「まず、スペインの港を席捲し、“樽”を全て破壊することだ」

 陛下に茶を立てて差し上げながら、ノブナガ様は言った。タールを塗った樽は、船上で飲料水や食糧を保管するのに欠かせない。キャプテンの船は逃げ足の速さで有名である。それで今日も、樽を壊して回っているのだ。

「”火攻め“を心得よ」

 タールの塗られた木材は回収して、海流に浮かべて火を放つ。投石機と”ギリシャ火“で火勢を呼べ。イギリス艦隊の機動力を以て取り囲め。神の名をかたって政ごとをおこなうとどうなるか、思い知らしてやるがいい。
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