遺るもの(少なくとも私には)

文字数 695文字

 ここで世界情勢の話をするつもりはないのですが、オルブライト元国務長官の訃報に触れて、個人的な思い出として書いておきたいと思います。

 マデレーン・オルブライトさんはクリントン政権で、アメリカ初の女性国務長官になった方です。コソボ紛争やイラクへの経済制裁など強硬派というイメージがありますが、もともとチェコからアメリカへの移民で、政治・外交畑に進んだのはほぼ四十代になってからという経歴の持ち主です。うだつの上がらない大学生だった私にとって、社会的に恵まれた立場にあったとは言えない女性でも、政治的指導者になれる、それだけの責任を引き受けて、世界を(良くも悪くも)変えられるという、衝撃的な気付きをくれた人でした。

 思想や主義主張の問題ではなくて、その存在や出来事自体が、自分を構成する根本にあるような人たち、っていませんでしょうか。

 もう一人は、当時のイスラエル首相イツハク・ラビンさんで、パレスチナや周辺諸国との和平交渉を進めていたなか、暗殺されたその瞬間は、録画されて世界中に放映されました。宗教も歴史も遠い国の出来事ですが、平和を希求し、和平交渉を支持して堪え忍んできたどちら側もの人々の悲嘆を、忘れてはならないと思います。

 私の心のなかにはいつもこの二人の影があって、(もう一人、米原万里さんもいるのですが、また日を改めて)社会や政治について考える時に、私をじっと見ています。直接知っている訳でもなく、そもそもずっと高度な外交戦略のなかにいた人たちなので変な話なのですが、そこから『大事なものは何か、思い出せ』と囁くのです。

 ご冥福をお祈り申し上げます。

ダボのジャパニーズ・ガーデン



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