オーバリーの話②:舟を引く道

文字数 463文字

 オーバリーは、マーレイ・リバー(Murray River)沿いに発展してきた街で、川が州境となっています。マーレイ・リバーはオーストラリアで一番長い河川であり、重要な水源です。

「孫の面倒を見るために、川を渡るのよ」

 オーバリーのボータニックガーデンを訪れた際、芝生に椅子を出してお茶を飲みつつ寛いでいる老夫婦と話す機会が有りました。

 生まれも育ちもオーバリー/ウォドンナ、子供たちはシドニーで働いている者もいれば、地元に暮らしている者もいるが、昨今の状況で州を越えて会いにいくのが一苦労。

 マーレイ・リバーを登っていったところにある湿原はとても美しい、けれど蛇に気をつけて。

 そんな話をしながらふと、Jさん(夫氏)が尋ねました。

「オーバリーの街は、区画がきちっとしていて、道が広いですね」
「ああそれは、昔から“舟を引く”ためです」

 川に漕ぎ出す舟を、馬車につないで運ぶために、道幅が大きいのです。

 子供庭園で遊び回った娘を何とか連れ戻した夕方、老夫婦は既に帰った後のようでした。

……仙人かな?やはりここは、渡りの街なのです。
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