ウロンゴンの話③:またくればそこにいる

文字数 701文字

 ウロンゴン(Wollongong)って不思議な名前ですよね。漢字で”臥龍崗”とも書かれるので、中国語オリジンなのかと思っていましたが、もともとはアボリジニの言葉で『五つの島』という意味のようです(諸説有り)。

 ウロンゴンには南半球で一番大きなお寺が建っています。南天寺は台湾にもフランチャイズが有るよ、とJさん(夫氏)が言っておりましたが、我々二人は全く真面目な仏教徒ではありません。ただウロンゴンの南天寺には毎年お参りしないと、何か縁起が悪いような気がしてしまいます。



 お参りと言っても、広い敷地内を散策して、本堂にちょっと手を合わせて帰ってくるだけです。敷地内には、資料館に仏教大学、ベジタリアン・レストラン、参拝者が利用できる宿泊施設もあるのですが、池の咲き掛けの蓮や、その影を泳ぐ鯉を見ながらぼんやりしていると、それだけで少し気持ちが洗われたように感じます。緑鮮やかな丘陵の合間で、鐘台への道をのんびり辿っていくのも、せいせいとした気分になれます。

 Jさんのホームタウンは台湾で一番お寺が多い(人口比当たり)ところで、私は仏像好きの父に連れられて小さい頃からお寺巡りをしていたため、お寺は生活圏の一部なのです。信仰と言うより、習慣のようなもので、お寺や仏様を見ると、勝手に内観的な気分になるのかもしれません。こちら生まれの娘にとっては、一年に一度訪れる、丘の上の大きな瓦葺きの建物に池の鯉に、可愛らしいお地蔵さんたち、という印象でしかないのでしょうが、宗教というものは日常に結びついているために、変えがたい抗いがたいものなのかもしれないなあ、と思うのでした。ウロンゴンは懐の深い街なのです。


 
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