2. 不気味な予感
文字数 2,396文字
「たまらん。」
首を
「死にそう。」
カイルも、まるで気力無しといった
「情けねえなあ二人とも。これくらいの熱さで。」
「よく言うぜ。」
レッドは、目が虚ろのリューイに言い返した。
「お前は南国も南国育ちだろ。なんだ、その今にも吐きそうな顔は。」
「服が暑いんだ。リーヴェ ※ も蒸し暑いけど、好きに裸でいられたぞ。ちょっとくらい脱がせてくれ。」
「またシャナイアに叱られるぞ。」
リサの村でのこと。リューイは風呂上りに着替えもせず、服を
三人は
「こらガキ、どこへ行く。」
「あっ!」
方向感覚を失って勝手な道を行くカイルを、レッドが呼び止めたとたん、カイルがいきなり叫んで座り込んだ。
レッドとリューイは顔を見合わせる。
「とうとう吐いたかな。」
介抱してやろうと、リューイはカイルに近寄った。そして手を差し伸べ、頭の上から顔を
「おい、大丈 ―― 」
「これはっ!」
「ふがっ⁉」
リューイは悲鳴を上げた。急に立ち上がったカイルのおかげで、まともに
「ほらこれ、塊根を乾燥させて適量で使うと解毒剤になるんだよ。ただし、本来は毒性の強い植物だから、安易に触れないようにね。」
触れるなと言っておきながら、カイルは二人の前にその植物を突き出して、無邪気に微笑んだ。
「寄るな小悪魔っ。」
レッドがわめいた。
リューイもぎょっとして、一歩引いた。
「仮に触った指を舐めても、少しくらいなら大丈夫だよ。食用と勘違いして食べたり、殺意をもって盛られない限り。」
カイルはそう言うと、急に湧いてきた意欲のおかげで暑さを忘れ、生き生きと
「あ、これは!」
また何かに反応して、カイルが飛びつくようにしゃがみ込んだ。
「こっちにも!」
まるで
カイルはすっくと立ち上がった。
「うわあ、ここ薬草の宝庫だ。取って来ようっと。」
カイルは軽快な足取りで、誘われるように道を外れて駆けていく。
「迷子になるなよ、坊や。」
レッドが声をあげて言った。
カイルはピタリと立ち止まり、
「僕もうすぐ十七だよ、おじさんっ。」
そう言い返すと、カイルは背中を向けて走り去った。
「最近気になりだしたってのに・・・。」と、実年齢より年上に見られがちのレッドは、肩を落とした。
二人は森の細道へと叢をかき分けて戻り、単独行動に出たカイルは放っておいて、先に湖へ向かうことにした。
カイルは、二人が向かった先とは別の、かなり湖に近い場所で、せっせと薬草摘みに励んでいた。暑さにだらけていた時は、下よりは上ばかり見て歩いていたので気付かなかったが、よく注意して目を凝らせば、大木の根元や
薬剤師としての腕がなった。
「これは解熱、これは発汗、これは腰痛に効くんだよね。で、これは傷薬に使える・・・と。ああっ、強心薬みっけ!」
とても両手に抱えきれないので、カイルは脱いだ上着を
すっかり夢中になって薬草集めに余念がないカイルは、妙な独り言に調子をつけて口ずさみながら、そのまま知らずと奥へ奥へ。
すると・・・だんだん気分が悪くなってきた。この感じには度々覚えがある・・・。
これは・・・呪い。
カイルは頭を上げ、顔をしかめて辺りを見まわした。視界一杯に、どこまでも緑の自然が広がっている。何の変哲もない。カイルは振り向いて、今度は背後に目をやった。そちらには、木々を透かして、すぐ目の前に広大な湖があった。
カイルは首をかしげた。湖の方へ歩いて行き、何に
カイルは湖を見つめた。数キロ離れた場所に小島があり、そこの
「なんだろう・・・。」
そう眉をひそめたカイルは、薬草でいっぱいになった上着を抱えて、レッドとリューイがいる浅瀬へようやく足を向けた。
胸に、
※ リーヴェ・・・アースリーヴェの略。大陸最南端にあるジャングルの名称。リューイが育った野生の王国。