154. 血のレシピ

文字数 359文字

 老人は思った。
 死にたくない。長生きしたい。不老の研究はまだ終わらないのか。

 ある研究で、若い鼠と老いた鼠の循環系を繋げた。
 若い鼠が作った血液が老いた鼠の体を巡り、老いた筋肉や肝臓に若返ったという。

 老人は飛びついた。
 若者からカネで血液を買い取り、自分の体に注入する。
 蘇った快感が湧き上がる。

 互いに合意の上だ。
 科学的に正しそうで、資本主義も肯定してくれる。
 何か悪いか?

 出産を外注し、選挙権を売り払う。
 きれい好きの生き物をすし詰めにし、糞尿を垂れ流させる。
 屠殺(とさつ)された牛に群がい、うっとりと血を(すす)る上流階級の乙女達。

 こんなヒトに、若い血をブランデーで割って晩酌する老人が増えたところで、違和感もあるまい。

 もし道端でヒトに噛みつかれても、健康に気を遣う先進的なヒトなのだと、微笑ましく見守るとしよう。
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