43. オキノテヅルモヅル

文字数 285文字


 オキノテヅルモヅルの夢は、地球を掴むことだった。
 平べったい五角形の体から、五本の腕を必死に伸ばす。

 それぞれの腕が先端で分岐し、また伸び、また分岐し、また伸ばして、海底に体を()わせる。
 ハゲナマコにくすぐられても、ユノハナガニに挟まれても、涙を(こら)えて広がっていく。

 海中全土に広がれど、乾燥した陸地まで辿り着けない。

 オキノテヅルモヅルは待った。
 時代を待った。風化促進を待った。海面膨張を待った。

 海がすべての陸地を呑み込んだ瞬間、彼の夢は叶った。

「次は宇宙を掴もう。みんな一緒がいいよ!」

 オキノテヅルモヅルは私たちのすぐ足元に、否、すでに絡めとられた後だった。
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