78. 雨禁獄

文字数 356文字

「けしからん! 雨ばかり降りよって、供養(くよう)が台無しではないか! ええい、衛兵、衛兵! 雨を獄に入れよ! まったく、けしからん!」

 衛兵はお椀に雨を溜め、牢獄にやりました。
 翌日も雨も降ったので、翌日も同じようにしました。

 一年が経過すると、獄中は雨ばかりとなりました。囚人は湿気に悩まされ、看守は日々の水遣りに辟易(へきえき)としています。
 蒸発すると、囚人が逃げ出したと、院がうるさいのです。

 ちっとも雨が止まない為、院はお怒りです。
 (しゃく)を振り回してあれこれと雲に暴言を吐きますが、雨は降る一方です。

 気に食わない?
 相手の話も聞かずに牢獄行き?
 暴言を並べるだけで、自らの愚かさを顧みない?

 雨が嫌なら傘を差しましょう。屋内に避難しましょう。
 心通じ合わない獣相手に、できることは多くありません。

 ――獣は相手か、自分か。
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