128. コンサートホール

文字数 456文字


 (かも)のオーケストラが湖上演奏に飽き飽きしていた。
「音が逃げちゃう!」
 コンサートホールの建設が決定した。

 初めに悩んだのは、ステージ設計だ。

 数百匹の演奏家、楽器が整然と並ぶには、場所を喰う。
 毎回全員並ぶわけではない。最頻の演目は、半分いるかいないか。
 空間を狭める可動式の板が必要だろうか?

 ステージを収める室内は、シューボックス式を採用した。
 直方体の一端にステージを配置し、縦に長く客席を用意し、天井は高く反射音が響く。

 初期反射音。回析。吸音。
 客席の位置で、音質の差を作りたくない。
 重く硬い物体で囲み、豊かな反射音を生みたい。

 予算。時間。視覚効果。
 あれやこれや。

 建設を終え、オーケストラの面々がステージに集まった。
 弦が擦れ、膜が弾む。
「なんか……、うん、え?」

 二日目、音に馴れた演奏家は、自信たっぷりに頷いた。
「これこそ、僕らの求めた音だ」

 コンサートホールと演奏家、徐々に心は(つな)がり、音が変わっていく。
 オーケストラの音が生まれていく。

 音に歴史が積もり、重厚に響くかは、わたし達次第。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み