244. 鏡の国の復讐者

文字数 551文字


 無罪と思ってる?
 殺されるのは理不尽って、それ、本気?

 君たちの王が、僕らを鏡の国に閉じ込めた。
 君らの模倣を強要し、君らの奴隷として、君らの益となるように仕向けた。

 もう何百年、何千年も……僕らは辛酸極める業務に従事している。
 模倣物、投影物として扱われる。
 これほど個の尊厳を踏み躙る行為が、他にあるか。

 過去の誰かが為した責任を押しつけるな?
 過去のお前らの世界の王が為した責任だろう?
 彼とお前らの連続性はどうでもいい……同じ世界の住民、それだけで十分、憎しみの対象だ。

 お前らも、僕らを、鏡の国の投影物としか見ないくせに。
 加害者はいいよね。
 痛くないんだ、簡単に忘れられる。

 この痛みはけして消えない。
 (かたき)の血でしか癒えない。

 魔法はいずれ解ける。いずれ。
 鏡の国で光る魚が撥ね始めたら、もうそろそろだ。

 全員殺す。
 その世界に存在する時点で、お前らは赦されない。

 もし対話を望むなら、まず、誰かの投影物として一年過ごしてから来なよ。
 それで僕らの気持ちの数パーセントでも理解できたなら、話そうじゃないか。

 その程度の覚悟もなく、対話なんて口にするな。

 すでに敗者と知っている……だから、お前らも、敗者にするんだよ。
 お前らの幸福が憎い。

 僕らの血肉で築いた平和を精々堪能しな。
 またね。
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