171. プリマエヴィリルム・アモエヌム

文字数 354文字

 世界最古の化石は、なぜ生まれ、なぜ化石に残ったのだろう?

 そう悩む頭はなかった。
 青空を愛する眼はなかった。
 代謝を繰り返す日々に、幸福を感じることもきっとなかった。

 過去はサンクコストだから、いまと未来だけ見つめるのが正しいだろうか?
 振り返っても、無意味な感傷だろうか?

 世界最古の化石は伝えた。
「私を生き物とするヒトがいた。私は、ヒトの尺度では想像すらできない過去、海に揺られていた。生きるということを、はじめたんだ」

 糸状のソレを、彼・彼女と呼ぶことに、批判的なヒトもいる。
 化石としてヒトの目に触れない世界最古の生物は、ヒトの無関心に憤慨していた。

 糸状や楕円状ばかり気にしやがって!
 ぼくも、確かに、生きていた!

 生きるが始まった理由も、その是非も、私達はまだ知らない。
 生きて良かったですか?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み