246. 私の幸せの為に死んで

文字数 451文字


 カーバンクルの宝石を手に入れた者は、永遠の富と幸運を約束される。

 宝石は、幻獣の脳内にある。
 首を切り落として初めて、結晶化されるという。

 子犬のような生き物の首に、錆びた(なた)を当て、躊躇なく体重をかけられますか?
 無理? ああそう。

 デパートに小奇麗に陳列された「カーバンクルの宝石」を購入できますか?
 100万円じゃ無理? 50万なら?

 実際に殺すことと、死骸を購入することに、大きな違いがあるだろうか?
 もし手ずから潰した肉しか食べられないなら、食肉の消費量は下がるだろうか?

 生き延びるために食べることは悪いこと?
 快楽のために食べることは悪いこと?
 罪を決めるのは誰?

 誤魔化すからややこしい。
 ただ素直に認めればいいのに。
 私は罪人だ、それでも食べて生きていく。

 ギルトフリーの人生は憧れるけれど、誰に何に対しても罪悪感を抱けない人間なんて、ただの独りよがりな屑野郎じゃないか。
 関わりたくない。

 罪を知って生きる。
 鉈を押し当て、血の沼に手を突っ込む。

 返り血は、けして、拭えないんだよ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み