13. 放射霧

文字数 316文字


 大地が太陽に突っかかった。
 俺のように山や谷を支えないくせに、いつも偉そうに指図しやがる。

 太陽は憤り、大地に光を運ばない。
 大地は熱を失い、気力を削がれたが、上に上にと、造山活動を緩めることはなかった。

 大地は冷えていく。
 営みを絶やすわけにはいかない。
 大地はついに、周辺の大気から、熱を奪い始めた。

 大気は寒さに震え、透明化を解く。
 人目に付きたくなかったのに。
 元来、恥ずかしがりなのだ。

 太陽の機嫌が治り、大地との和解が成立すれば、大気は再び透明の衣を(まと)った。
 ずっと喧嘩しなければいいのに。
 けれど両者の仲は一向に変わらず、毎日のように言い争っていた。

 大気の白無垢が、たまにしか地上で見られないのは、大体こんな理由。
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