19. マウンダー極小期

文字数 338文字


 支配者を欲して、蛙がゼウスに頼み込んだ。
 ゼウスは不承不承頷き、太陽に黒い点を浮かべた。

 蛙は初め、有り難がって黒い点を拝んでいた。
 黒い点が怠惰な王と知ると、見向きもしなくなる。沼にどぼんと飛び込み、「ここまで来てみろよ」と挑発した。

 こんな愚図(ぐず)しか王を持てないとは、哀れな我らに慈悲を。
 蛙は、王を替えて欲しいとゼウスに頼んだ。

 要らないのか。ならば構わぬ。
 ゼウスが黒い点を取り上げれば、太陽は弱まり、地球に寒気が訪れた。
 氷河が進行して村を呑み込み、小麦の不作が続き、冬期鬱病で人間も鹿も蛙も無気力となった。

 沼がかちこちに凍り付き、蛙は寒くて地中に潜り込む。
 蛙は死んだ。

 ゼウスが言うには、
「己の料簡(りょうけん)だけで、物事を判断しよって。偉大なる王は必ずしも声高ではない」
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