73. 梅のつぶやき

文字数 182文字


 そぼ降る雨が恋しい。
 しょぼしょぼと泣く小糠雨(こぬかあめ)に、耳を傾けたのはいつだろう?
 梅のつぶやきが遠のいたことに、気づいていなかったことさえ、知り得たのはいつだろう?

 絶叫か、無言か。
 ちっぽけな人間は乱れ、黒の海と空がすべてを呑み込む。
 慈雨(じう)は陰り、退屈な快晴が続く。

 凪いだ完新世は終わっている。
 怒号渦巻く暴風雨の中で、わたしのつぶやきは、誰かに届くのだろうか?
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