259. ヒト嫌いが子犬をかわいいと愛でる矛盾
文字数 715文字
科学者という動物は、三つのAを呪っていた。
逸話/Anecdote
アナロジー/Analogy
擬人化/Anthropomorphism
科学は「客観的な真理」だけで構成されるべきで、主観的で個人的な要素は排除されるべきだ。
客観的?
主観的な動物が、完全に客観的に振る舞えるの?
まるですべて、上から俯瞰できるみたいな物言いだ。
神様になったつもりかよ。
擬人化とは、ヒトの価値観を押しつける行為ではない。
たとえ彼ら特有の情動を完璧に表現できなくとも、進化の列の中でヒトと他の動物が共有した普遍性を、ヒトだから必然的にヒト中心となる言葉で、できる限り正しく表現する行為だ。
無知で馬鹿な私達は、他の動物の言語をほとんど理解していない。目一杯注意深く「動物であるとはどういうことか」と自問して、その不確実性を忘れず、擬人化に頼らざるを得ない。
還元論的な「頬の筋肉が収縮した」「脳内物質がいくらか増加した」といった正しいだけの説明が、「犬は幸せそうに吠えた」ような擬人的説明より、適切だというの?
伝わるというの。
読み手の動物が価値を見出せるの。
某有名テーマパークのキャラクターは、徐々に赤子化したと聞いたことがある。
ヒトは、赤子的特徴を愛する。
大きな目。
出っ張った頬。
比較的大きな頭。
短くて太い手足。
ぎこちない動き。
どんなヒト嫌いも、あるいはヒト嫌いであるが故に特に、子犬にかわいいと呟く。
それが擬人化と露とも疑わず。
何が悪い。
南極の冬の嵐の中、数百羽のエンペラーペンギンがおしくらまんじゅうする様を想像してみてほしい。
かわいい。
超カワイイ。
エンペラーペンギンの幼鳥に萌えないヒトがどこにいる。