208. 新生代の火事 現代の火事世界へ

文字数 599文字

 チクシュルーブ・クレーター生成前、生成中、生成後にかけて、木炭の含有量は一定で、暁新世は白亜紀と同程度によく燃えていた。

 暁新世・始新世境界の温暖化極大(PETM)は、同時期に地球の平均気温が5~8℃と急上昇した現象を指す。
 PETM開始後、木炭の含有量はがくっと下がった。

 惑星は燃えづらくなった。

 石炭になり切れない褐炭層を切り出し、PETM直後の層を分析する。
 植物の腐敗物が埋まっている。

 雨だ。湿潤温暖環境で、酸素濃度も現在と同程度、濡れれば燃えない。PETM中の層の有機化合物から、メタン菌が生成する化合物群を数多く発見する。
 陸地には湿地が広がっていた。

 海洋からのメタン放出もあっただろう。泥炭地の大規模火災は確認できない。湿地がメタンを放出し、温暖化が進み、温暖湿潤環境が強まり、メタンがまた増す。

 このフィードバックループが、PETMの要因かもしれない。

 白亜紀の炎の時代から、火事に適応した被子植物、PETMを経て温暖湿潤環境へ、熱帯雨林の繁栄、4500万年前、火事は完全に現代に至る。

 古生代初期、炎はなかった。
 それから中生代、暁新世を経て、炎は荒ぶる。
 PETM後、哺乳類のある種が立ち上がるまで、炎は自然に揺らめいていた。

 ヒトが炎をいじる時代が始まる。

 新たな火種は尽きることなく、いつまでも世界を燃やし続けた。
 焼野原が待ち遠しい。

 次代はやって来るのだろうか?
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