第70話 イルカ騎士団
文字数 1,796文字
ベガスの街に戻ると、異様な光景を目の当たりにした。
外国の騎士団がまるで戦場から凱旋してきたかのように列をなして街路を行進していた。
街の人から好奇の視線を受け、奴らは手を振っていた。
数にして百人以上はいる。
先頭にいるのは、小さな甲冑に身を包んだ少女だった。
長い金髪碧眼に整った顔立ち、歳の頃は16歳ぐらいだろう。
その少女が大柄な騎士達を率いている。
なにごとだ?
隣にいたクロエに尋ねる。
「何でも軍事力が低下したから、外国の傭兵を国が雇っているらしいわ。まぁあんな事件があったわけだから」
そう告げたクロエはオレをジトリと睨む。
そうだった。
まぁオレは悪くない。
この国が腐ってたから悪いんだ。
オレのせいじゃない。
隊を指揮していたアーペルが興味なさげに指示を出す。
「とにかく、衛兵にコイツらを突き出すぞ。それから拠点に戻って、ブシュロンと今後の方針を決める。長いミーティングになりそうだな」
すると捕虜の男達が行進していた少女に向かって助けの声を上げた。
「隊長! 助けて下さい! この蛮族から解放して下さい!」
すると傭兵団の先頭にいた少女が駆けつけて、俺達に抗議を始めた。
「何をしてるんですか! 不当に我が団員を拘束するなんて! 何をしたと言うんですか!」
俺が静かに答えた。
「業務妨害に、殺人未遂だ。これから衛兵に突き出す。邪魔をするな小娘」
すると少女は金髪を靡かせて、華麗にオレの顔に唾を吐きかけた。
「この蛮族がっ! このことは市に抗議させて頂きます!」
俺の殺気を察したジラールとオルマが、全力で俺を羽交締めしたため、抜剣ができなかった。
クソガキめ……。
クソガキは声高々に宣言した。
「我々はイルカ騎士団! この国の正義を正します! 我が名はフィーネ、よく覚えておくのね。蛮族ども!」
ジラール達を振り解こうとした時、リューが慌てて現れた。
相変わらず辛気臭い顔してるな。
「こんな昼間っから揉め事を起こさないで下さい。ミュラーさん、今度は何をしたんですか?」
この男は何故俺が悪い前提で話を始めるんだ?
俺とクソガキの言い分を聞いて、リューはうんざりした顔をして、嘆息する。
「わかりました、その人達の身柄は市で預かる形になります。ただ治外法権が適用されますので、この国で裁くことはできません。……あなたは厄介ごとばっかりもってきますね……」
リューが衛兵に指示を出して、昨日捕まえた男達を連行する。
するとクソガキが中指を立てて、舌を出した。
あまりの侮辱サインに俺の我慢は限界だった。
俺を止めるジラールをぶん投げて、切り捨てようとした。
しかしオルマの糸とアーペルの植物魔法で身体をぐるぐる巻きにされる。
そしてデルヴォーとクロエが獣用の網で身体の自由を奪った。
俺は思わず呻く。
「ここまですることないんじゃないか?」
アーペルは頭を抱えながら答える。
「お前はやる、絶対やる。このままミュラーを連れて、拠点に向かうぞ」
さらにクソガキがさらに挑発してきた。
「この臆病者! 来るなら来なさいよ! 青髪、あんたの顔は覚えたわよ! 次に会ったら覚悟しなさい!」
貴様に次はない。
無詠唱魔法を発動しようとしたら、魔力が練れない。
リューの野朗のしわざか!
暴れようとする俺をみんなが連れ、街から離れることになった。
無法者の楽園の中についた時、立ち尽くす男がいた。
ブシュロンだ。
無理もない。
店の中はグチャグチャだ。
特に落書きが酷い。
店の外から中まで書かれていた。
『ハンター死すべし』
獲物に使う罠や装備まで破壊されていた。
犯人はすぐにわかった。
あのクソガキだ。
拘束されていた俺は嘆き倒れるブシュロンに声を荒げる。
「今すぐアイツら、始末しよう! 許せん!」
ブシュロンは哀しく首を左右に振った。
「気持ちはわかるが、駄目だ。あの連中は国からから正式に雇われてるから、こっちが捕まる……。……みんな、今は耐えてくれ……」
全員の顔が俯いた。
オルマがポツリと呟く。
「……しばらく狩りはできないね……」
あのクソガキの生意気な顔が嫌でも頭に浮かんでくる。
腹が立ってきた。
火炙りにしてくれる!
ジラールが優しく肩を叩く。
「代筆屋のバイトだけじゃ、新婚暮らしは大変だろ? 鍛冶の手伝いも紹介するぜ……」
その言葉を聞いて、俺は声にならない叫びを上げた。
外国の騎士団がまるで戦場から凱旋してきたかのように列をなして街路を行進していた。
街の人から好奇の視線を受け、奴らは手を振っていた。
数にして百人以上はいる。
先頭にいるのは、小さな甲冑に身を包んだ少女だった。
長い金髪碧眼に整った顔立ち、歳の頃は16歳ぐらいだろう。
その少女が大柄な騎士達を率いている。
なにごとだ?
隣にいたクロエに尋ねる。
「何でも軍事力が低下したから、外国の傭兵を国が雇っているらしいわ。まぁあんな事件があったわけだから」
そう告げたクロエはオレをジトリと睨む。
そうだった。
まぁオレは悪くない。
この国が腐ってたから悪いんだ。
オレのせいじゃない。
隊を指揮していたアーペルが興味なさげに指示を出す。
「とにかく、衛兵にコイツらを突き出すぞ。それから拠点に戻って、ブシュロンと今後の方針を決める。長いミーティングになりそうだな」
すると捕虜の男達が行進していた少女に向かって助けの声を上げた。
「隊長! 助けて下さい! この蛮族から解放して下さい!」
すると傭兵団の先頭にいた少女が駆けつけて、俺達に抗議を始めた。
「何をしてるんですか! 不当に我が団員を拘束するなんて! 何をしたと言うんですか!」
俺が静かに答えた。
「業務妨害に、殺人未遂だ。これから衛兵に突き出す。邪魔をするな小娘」
すると少女は金髪を靡かせて、華麗にオレの顔に唾を吐きかけた。
「この蛮族がっ! このことは市に抗議させて頂きます!」
俺の殺気を察したジラールとオルマが、全力で俺を羽交締めしたため、抜剣ができなかった。
クソガキめ……。
クソガキは声高々に宣言した。
「我々はイルカ騎士団! この国の正義を正します! 我が名はフィーネ、よく覚えておくのね。蛮族ども!」
ジラール達を振り解こうとした時、リューが慌てて現れた。
相変わらず辛気臭い顔してるな。
「こんな昼間っから揉め事を起こさないで下さい。ミュラーさん、今度は何をしたんですか?」
この男は何故俺が悪い前提で話を始めるんだ?
俺とクソガキの言い分を聞いて、リューはうんざりした顔をして、嘆息する。
「わかりました、その人達の身柄は市で預かる形になります。ただ治外法権が適用されますので、この国で裁くことはできません。……あなたは厄介ごとばっかりもってきますね……」
リューが衛兵に指示を出して、昨日捕まえた男達を連行する。
するとクソガキが中指を立てて、舌を出した。
あまりの侮辱サインに俺の我慢は限界だった。
俺を止めるジラールをぶん投げて、切り捨てようとした。
しかしオルマの糸とアーペルの植物魔法で身体をぐるぐる巻きにされる。
そしてデルヴォーとクロエが獣用の網で身体の自由を奪った。
俺は思わず呻く。
「ここまですることないんじゃないか?」
アーペルは頭を抱えながら答える。
「お前はやる、絶対やる。このままミュラーを連れて、拠点に向かうぞ」
さらにクソガキがさらに挑発してきた。
「この臆病者! 来るなら来なさいよ! 青髪、あんたの顔は覚えたわよ! 次に会ったら覚悟しなさい!」
貴様に次はない。
無詠唱魔法を発動しようとしたら、魔力が練れない。
リューの野朗のしわざか!
暴れようとする俺をみんなが連れ、街から離れることになった。
無法者の楽園の中についた時、立ち尽くす男がいた。
ブシュロンだ。
無理もない。
店の中はグチャグチャだ。
特に落書きが酷い。
店の外から中まで書かれていた。
『ハンター死すべし』
獲物に使う罠や装備まで破壊されていた。
犯人はすぐにわかった。
あのクソガキだ。
拘束されていた俺は嘆き倒れるブシュロンに声を荒げる。
「今すぐアイツら、始末しよう! 許せん!」
ブシュロンは哀しく首を左右に振った。
「気持ちはわかるが、駄目だ。あの連中は国からから正式に雇われてるから、こっちが捕まる……。……みんな、今は耐えてくれ……」
全員の顔が俯いた。
オルマがポツリと呟く。
「……しばらく狩りはできないね……」
あのクソガキの生意気な顔が嫌でも頭に浮かんでくる。
腹が立ってきた。
火炙りにしてくれる!
ジラールが優しく肩を叩く。
「代筆屋のバイトだけじゃ、新婚暮らしは大変だろ? 鍛冶の手伝いも紹介するぜ……」
その言葉を聞いて、俺は声にならない叫びを上げた。