第94話 統一戦争
文字数 1,441文字
アスターテ要塞に急行したミュラー達が耳にしたのは信じられない知らせだった。
ファルツ竜王国がレッドドラゴンの大群を率いてトワレ本国に侵攻していること。
獣王国マインツが数え切れない大型肉食獣、ベヒーモス、フェンリル、ガルーダ、ケルベロスなどの危険種の群れを率いて、グラスランドに進駐しているトワレ軍が蹂躙していること。
ケルン魔法国が参戦し、歴戦の魔道大隊が出陣していること。
亜人の部族達、リザードマン、ドワーフ、鬼人族、鳥人族、最強の種族の龍族まで立ち上がったこと。
信じられない凶報に執務室のリアムは頭を掻きむしった。
しかも前線の噂で囁かれたことには耳を疑った。
伝説の存在である七大聖魔がグラスランドに尽力しているというのだ。
リアムは悲報が記載された報告書を感情に任せて破り捨てる。
このままではトワレ連合どころか、西大陸全土が戦火に晒されてしまう。
奴ら、人類を滅ぼす気か?
放っておけばこれはもう戦争ではなく、一方的な虐殺が始まる。
確かにトワレ連合の国力は健在だ。
その気になれば50万の兵を動員することだって可能だ。
まだ兵の数ではこちらが優っている。
その分タチが悪い。
連合軍上層部はまだ戦争で巻き返せると勘違いしてやがる。
今全面降伏すれば、死人は少なくて済む。
だが抵抗なんかすれば、グラスランド連盟は容赦しない。
軍人が殺されるのは、仕方ない。
だがこの戦いで巻き込まれる国民まで戦火の炎で焼き殺されることになる。
しかも大量に。
わざわざグラスランドのドラゴンが一般人を巻き込まないように、平原で炎を撒き散らす配慮があるわけがない。
人が集まる街や村を無差別に襲撃するのは明白だ。
それだけはなんとしても阻止しなければならない。
リアムは地図を凝視して、持てる限りの思考を巡らせる。
イゼル要塞とアスターテ要塞を南北に走るアルプ山脈、ここで時間を稼ぐ。
大自然を要塞化すれば、首都ハイネの国民が南の湾岸都市トゥールまで避難できるはずだ。
リアムは地図をペンで書き込みながら、知恵の限りを絞り出す。
敵はおそらくハイネを落とした後、北側の支配に移る、その間に同盟国のティアマトとアムリッツも本腰を入れる。
その間に南のトゥールで大勢を立て直す。
グラスランドが西大陸で大暴れしていれば、南大陸の国も黙ってはいまい。東のビガロス神聖国や南のルシア帝国も必ず動くはずだ。
リアムは頭の中に今起こる戦争の絵図を描きながら、深く溜息を吐く。
ポケットにあるタバコに火をつけ、深く肺に吸い込む。
机に置かれた紅茶はすでに冷え切っていた。
それでも不安を抑えるために、乾いてしまった喉の渇きを潤すために口に含む。
いったい何人の屍が出来上がるのだろうか。
どれだけの血が流れてしまうのか。
もう、いつ戦争が終わるのか。
僕はもう見当もつかない。
リアムは運命というものを呪い、普段は信仰していないシヴァ神に祈りを捧げた。
どうか我が母国が早く無条件降伏しますように。
深く祈った後に、会議室で待機しているミュラー達に今後の方針を伝えるために、重い足取りで部屋から立ち去る。
連中には謝罪しないといけない。
わざわざサラブという外国から来たのに、きっと母国で骨を埋めることは出来ないだろう。
大丈夫だ、寂しくはない。
僕も近い将来君らと同じ大地の中で共に眠ることになるのだから。
後に統一戦争と呼ばれる幕開けだった。
後世に史上最も苛烈を極めた戦争と伝えられる。
ファルツ竜王国がレッドドラゴンの大群を率いてトワレ本国に侵攻していること。
獣王国マインツが数え切れない大型肉食獣、ベヒーモス、フェンリル、ガルーダ、ケルベロスなどの危険種の群れを率いて、グラスランドに進駐しているトワレ軍が蹂躙していること。
ケルン魔法国が参戦し、歴戦の魔道大隊が出陣していること。
亜人の部族達、リザードマン、ドワーフ、鬼人族、鳥人族、最強の種族の龍族まで立ち上がったこと。
信じられない凶報に執務室のリアムは頭を掻きむしった。
しかも前線の噂で囁かれたことには耳を疑った。
伝説の存在である七大聖魔がグラスランドに尽力しているというのだ。
リアムは悲報が記載された報告書を感情に任せて破り捨てる。
このままではトワレ連合どころか、西大陸全土が戦火に晒されてしまう。
奴ら、人類を滅ぼす気か?
放っておけばこれはもう戦争ではなく、一方的な虐殺が始まる。
確かにトワレ連合の国力は健在だ。
その気になれば50万の兵を動員することだって可能だ。
まだ兵の数ではこちらが優っている。
その分タチが悪い。
連合軍上層部はまだ戦争で巻き返せると勘違いしてやがる。
今全面降伏すれば、死人は少なくて済む。
だが抵抗なんかすれば、グラスランド連盟は容赦しない。
軍人が殺されるのは、仕方ない。
だがこの戦いで巻き込まれる国民まで戦火の炎で焼き殺されることになる。
しかも大量に。
わざわざグラスランドのドラゴンが一般人を巻き込まないように、平原で炎を撒き散らす配慮があるわけがない。
人が集まる街や村を無差別に襲撃するのは明白だ。
それだけはなんとしても阻止しなければならない。
リアムは地図を凝視して、持てる限りの思考を巡らせる。
イゼル要塞とアスターテ要塞を南北に走るアルプ山脈、ここで時間を稼ぐ。
大自然を要塞化すれば、首都ハイネの国民が南の湾岸都市トゥールまで避難できるはずだ。
リアムは地図をペンで書き込みながら、知恵の限りを絞り出す。
敵はおそらくハイネを落とした後、北側の支配に移る、その間に同盟国のティアマトとアムリッツも本腰を入れる。
その間に南のトゥールで大勢を立て直す。
グラスランドが西大陸で大暴れしていれば、南大陸の国も黙ってはいまい。東のビガロス神聖国や南のルシア帝国も必ず動くはずだ。
リアムは頭の中に今起こる戦争の絵図を描きながら、深く溜息を吐く。
ポケットにあるタバコに火をつけ、深く肺に吸い込む。
机に置かれた紅茶はすでに冷え切っていた。
それでも不安を抑えるために、乾いてしまった喉の渇きを潤すために口に含む。
いったい何人の屍が出来上がるのだろうか。
どれだけの血が流れてしまうのか。
もう、いつ戦争が終わるのか。
僕はもう見当もつかない。
リアムは運命というものを呪い、普段は信仰していないシヴァ神に祈りを捧げた。
どうか我が母国が早く無条件降伏しますように。
深く祈った後に、会議室で待機しているミュラー達に今後の方針を伝えるために、重い足取りで部屋から立ち去る。
連中には謝罪しないといけない。
わざわざサラブという外国から来たのに、きっと母国で骨を埋めることは出来ないだろう。
大丈夫だ、寂しくはない。
僕も近い将来君らと同じ大地の中で共に眠ることになるのだから。
後に統一戦争と呼ばれる幕開けだった。
後世に史上最も苛烈を極めた戦争と伝えられる。