第113話 終戦
文字数 1,578文字
ミュラー、オルマ、クロエはこの戦争の戦没者の慰霊碑の前で祈りを捧げていた。
ジラールに、フェンディに、アーペルに、ブシュロンに、デルヴォーに、リアムに、彼らの魂が安らぐことを心から願った。
あれから半年が過ぎた。
テトに聞いたところ、西の同盟国もトワレ本国も連合国が奪還に成功し、グラスランド連盟の本国でカイン達は暴れ回っているそうだ。
グラスランド連盟の同盟国、キエフ大公国、ケルン魔法国、ファルツ竜王国、マインツ獣王国はカイン達の大空からの極大魔法で崩壊間近だと言う。
ミュラー達に絶望を与えた七大聖魔もカイン達によって何体かは討伐されたらしい。
今は荒廃した国土の回復とカイン達の快進撃で蹂躙されたグラスランドの地域の支配侵攻でテトも手一杯らしい。
テトの見立てではグラスランド連盟は解体され、その領土の大半をトワレが吸収するということだ。
あんな化け物達がいるなら、最初から出せばジラール達も犠牲にならなかったのにと、オルマは抗議したが、どうやらあの力を手に入れる為の修行期間がどうしても必要だったらしい。
あと数ヶ月もすればこの戦争も終わるだろう。ほぼ敗戦処理のような戦いだがと、テトは苦笑していた。
トワレでは戦果を上げた第一皇女が新しく王に即位するらしい。
何故かアジムートはトワレの元帥となって、今もグラスランドに進撃している。
大国を一人の英雄が殲滅する様を見て、人々は『国崩し』と畏怖し、そう呼称した。
ミュラーはその激烈な力を司る者達を羨望し、魅了され、その力を渇望した。
自分にもこれだけの力があればジラール達も失わずにすんだ。
ミュラーは自分の不甲斐なさを痛感し、心を燃やす。
もっと強くならなければいけない。
あの圧倒的な力が欲しい。
大切な仲間を、守る強さが俺にはまだ足りない。
あいつらの強さに並び、超えてみせる。
力への求道がミュラーの生きる希望となった。
半年が過ぎ、戦役も終わり、オルマとクロエはトゥールの港で故郷サラブへの帰り支度をしていた。
ミュラーはまだこの地に未練があった。
なかなか帰ろうとしないミュラーにクロエが窘める。
「あなた、ベガスに奥さんいるんでしょう? いつまで待たせるの? もう帰るわよ!」
痛いところを突かれたミュラーは大慌てで身支度をする。
しかしとても胸を張って帰る気持ちにはなれなかった。
大切な存在を失い、新しい世界に魅入られたミュラーは心ここに在らずの状態であった。
それを見たオルマとクロエはやれやれと首を振った。
帰路への船が港にたどり着く。
三人はそれに乗り込もうと足を運んだ時、その雑踏の中から眩しい笑顔がミュラーに向かって放たれていた。
ルカだった。
ルカがミュラーの元へ駆けつき、その身をミュラーにぶつけるように預けた。
狼狽えるミュラーに、意地悪そうな笑みで笑いかける。
「待ちくたびれたから、来ちゃった……」
狼狽したミュラーは忘れな草のような青い髪を撫でながら、しどろもどろに気持ちを伝える。
「えー、あ、えっと……。ただいま?」
後ろからオルマに頭を引っ張ったかれる。
「もっと気の利いた言葉ないの!」
ミュラーは最愛の女性の突然の再会に動揺したが、その愛らしい顔を見て、堪らず抱えていた感情が涙になって溢れでた。
ルカは泣き崩れたミュラーを子供のようにあやした。
その二人の光景を見て、オルマとクロエは安堵と共に微笑む。
「よかったね、オルマ」
「うん、クロエ。そうか、終わったんだ。帰れるんだー……」
オルマとクロエはこの時、戦争から生還したことを実感した。
思わず二人で抱きしめ合った。
港の鴎達が祝福の歌を空から唄った。
その鴎の群れから一人の男が現れる。
カインだ。
カインはミュラーを見定め、呟く。
「お前の嫁の交通費を払ったんだ。鍛えさせてもらうぞ。青髪」
ジラールに、フェンディに、アーペルに、ブシュロンに、デルヴォーに、リアムに、彼らの魂が安らぐことを心から願った。
あれから半年が過ぎた。
テトに聞いたところ、西の同盟国もトワレ本国も連合国が奪還に成功し、グラスランド連盟の本国でカイン達は暴れ回っているそうだ。
グラスランド連盟の同盟国、キエフ大公国、ケルン魔法国、ファルツ竜王国、マインツ獣王国はカイン達の大空からの極大魔法で崩壊間近だと言う。
ミュラー達に絶望を与えた七大聖魔もカイン達によって何体かは討伐されたらしい。
今は荒廃した国土の回復とカイン達の快進撃で蹂躙されたグラスランドの地域の支配侵攻でテトも手一杯らしい。
テトの見立てではグラスランド連盟は解体され、その領土の大半をトワレが吸収するということだ。
あんな化け物達がいるなら、最初から出せばジラール達も犠牲にならなかったのにと、オルマは抗議したが、どうやらあの力を手に入れる為の修行期間がどうしても必要だったらしい。
あと数ヶ月もすればこの戦争も終わるだろう。ほぼ敗戦処理のような戦いだがと、テトは苦笑していた。
トワレでは戦果を上げた第一皇女が新しく王に即位するらしい。
何故かアジムートはトワレの元帥となって、今もグラスランドに進撃している。
大国を一人の英雄が殲滅する様を見て、人々は『国崩し』と畏怖し、そう呼称した。
ミュラーはその激烈な力を司る者達を羨望し、魅了され、その力を渇望した。
自分にもこれだけの力があればジラール達も失わずにすんだ。
ミュラーは自分の不甲斐なさを痛感し、心を燃やす。
もっと強くならなければいけない。
あの圧倒的な力が欲しい。
大切な仲間を、守る強さが俺にはまだ足りない。
あいつらの強さに並び、超えてみせる。
力への求道がミュラーの生きる希望となった。
半年が過ぎ、戦役も終わり、オルマとクロエはトゥールの港で故郷サラブへの帰り支度をしていた。
ミュラーはまだこの地に未練があった。
なかなか帰ろうとしないミュラーにクロエが窘める。
「あなた、ベガスに奥さんいるんでしょう? いつまで待たせるの? もう帰るわよ!」
痛いところを突かれたミュラーは大慌てで身支度をする。
しかしとても胸を張って帰る気持ちにはなれなかった。
大切な存在を失い、新しい世界に魅入られたミュラーは心ここに在らずの状態であった。
それを見たオルマとクロエはやれやれと首を振った。
帰路への船が港にたどり着く。
三人はそれに乗り込もうと足を運んだ時、その雑踏の中から眩しい笑顔がミュラーに向かって放たれていた。
ルカだった。
ルカがミュラーの元へ駆けつき、その身をミュラーにぶつけるように預けた。
狼狽えるミュラーに、意地悪そうな笑みで笑いかける。
「待ちくたびれたから、来ちゃった……」
狼狽したミュラーは忘れな草のような青い髪を撫でながら、しどろもどろに気持ちを伝える。
「えー、あ、えっと……。ただいま?」
後ろからオルマに頭を引っ張ったかれる。
「もっと気の利いた言葉ないの!」
ミュラーは最愛の女性の突然の再会に動揺したが、その愛らしい顔を見て、堪らず抱えていた感情が涙になって溢れでた。
ルカは泣き崩れたミュラーを子供のようにあやした。
その二人の光景を見て、オルマとクロエは安堵と共に微笑む。
「よかったね、オルマ」
「うん、クロエ。そうか、終わったんだ。帰れるんだー……」
オルマとクロエはこの時、戦争から生還したことを実感した。
思わず二人で抱きしめ合った。
港の鴎達が祝福の歌を空から唄った。
その鴎の群れから一人の男が現れる。
カインだ。
カインはミュラーを見定め、呟く。
「お前の嫁の交通費を払ったんだ。鍛えさせてもらうぞ。青髪」