第24話 ハンティングデビュー①
文字数 2,012文字
ゴバ高原、サラブ島国北部に位置する草原地帯。
サラブは元々南部の湾岸部における交易で発展していた国である。
周囲を列強諸国に挟まれながらも、大海に守られ、強固な常備軍を有し、永世中立を保っていた。諸外国も攻め込むよりも、交易で得られる富の利権を有益と判断し、友好関係を維持してきていた。
そして様々な人種が渡来し、国力は上がり、やがて観光やカジノ等娯楽の文化まで発展していった。
だがこの国にも問題がある。狭い国土に対して人口密度が増えてしまったのだ。
現国主はその対策として、今まで未開の地であった北部の高原地帯の開拓を行い、交易に頼りきりの食料自給率を解決しようと決断した。
しかし課題があった。北部の草原地帯、ゴバ高原には獰猛な野生動物の領域であり、今も大型動物達が君臨していた。
開拓のために常備軍を幾度と派兵させるも、ことごとく失敗に終わる。
理由は明白である。
この国の兵士達は列強諸国の強兵にもひけを取らない強さを誇るが、あくまでそれは人間相手であるからだ。
この国の兵は狩りに不慣れのため、派兵のたびに多大な損害を被る。
しびれを切らした国主はある決断をとった。
大陸のハンター連盟に駆除を依頼し、見返りとしてハンター連盟に所属する者に治外法権を与えること。
これにより、ハンター達はサラブの法では裁けなくなる。
これにより国内の不満は噴出した。
そしてサラブの国民は外国から来るハンター達をアウトロー と蔑むようになる。
そしてサラブに先遣隊として送り込まれたのがブシュロンが率いるチームであった。
さらにその中にミュラー達が新隊員として加わる。
ミュラーとジラールは呆然として立ち尽くす。ただ見上げていた、目の前の生き物を。
ニワトリだ……。 馬鹿でっかいニワトリだ……。
オルマとクロエが男二人が茫然と立ちつくす姿を不思議そうに眺めた。
「何やってんの? はやく乗りなよ、さっさと狩りにいくよー」
この意味不明な生命体に乗馬を催促してきた。
理解が追いつかない。
「なんだこれは?」
オルマが不思議そうに首をかしげる。
「ニワトリだけど?」
「それはわかる! けど俺が知ってるニワトリはもっと小さい! そもそもニワトリに乗るのかこの国の人間は!?」
「ああ、ミュラーとジラールは外国人だもんね。うちに国だとこれが遠出用の乗り物だよ」
ジラールが毒づく。
「この国はマジでイカレてやがる! 蛮族どもめ!」
それにクロエがキッと睨みつける。
「だったら歩いていくことね。ゴバ高原まで徒歩だと丸一日かかるわよ」
慌てて俺が仲裁に入る。
「こっちが悪かった、だけど正直困る。こんなもの乗り方がわからんぞ」
改めて見上げる巨大なニワトリ一応、鞍と手綱はあるが、俺の故郷のウマの一回りも大きい怪鳥だ。
ゾウに乗れと言われて、いきなり乗れるヤツなんていない。
俺の不安にオルマが自信満々に答える。
「オーケー! じゃあ今回は特別に後ろに乗っけてあげるよー。けど二人乗りが限界だから、ジラールはクロエが乗っけてあげてね」
それを聞いて、クロエの耳がピンと立ち、とても嫌そうな顔をしている。
まぁジラールだもんな、アイツ、臭そうだし。
正直、俺もアイツと二人乗りは嫌だ。
悪戦苦闘しながらも、ようやく四人は二羽のニワトリに乗り、街を出た。
目指すは北へ、獣が退治にゴバ草原へ、と思ったが……。
ミュラーはあまりに不慣れな生き物の乗り心地に猛烈な不快感が全身に走り、それは塊となって胃から口へと吐き出されてしまった。
つまりは嘔吐である。
ニワトリの上は上下左右になってミュラーを振り回し、それは乗り物酔いさせるには充分だった。
驚いたオルマが振り返る。
「ちょっとミュラー、大丈夫?」
俺は口から泡を吹きながら辛うじて答える。
「……も、問題ない……」
「後ろに乗ってる時はちゃんとアタシの腰を持って、太ももをアタシの下半身をはさむ感じでやってよ!」
「……そんなマネはできん……」
「なんでさ!?」
「……俺の国では女性の肌に触るのは結婚相手しかしてはならない。それをやると不浄の存在として扱われる……」
「ここは君の国じゃないよ!?」
「……後生だ、ゲロしても軽蔑しないでくれ……そしてそのまま突っ走ってくれ……」
呆れたオルマはニワトリの尻にムチを入れて、より一層速度を上げた。
朦朧とした意識の中、平行して走るクロエ達を見る。
ジラールの野郎、思いっきり抱きついてやがる!
しかもクロエの尻を撫でてないか!?
なんていやらしい男だ。
男の風上にもおけん、最低な野郎だ……。
クズめ……。
数時間、気絶をこらえてなんとか目的のゴバ草原へと辿り着いた時には、オルマも、その跨るニワトリも俺の吐しゃ物まみれだった。
オルマがジトリとした目でこちらを見て、黙々とそれを洗う。
……俺はとても傷ついた。
帰りもこれに乗るのか……。
もう帰りたい……。
サラブは元々南部の湾岸部における交易で発展していた国である。
周囲を列強諸国に挟まれながらも、大海に守られ、強固な常備軍を有し、永世中立を保っていた。諸外国も攻め込むよりも、交易で得られる富の利権を有益と判断し、友好関係を維持してきていた。
そして様々な人種が渡来し、国力は上がり、やがて観光やカジノ等娯楽の文化まで発展していった。
だがこの国にも問題がある。狭い国土に対して人口密度が増えてしまったのだ。
現国主はその対策として、今まで未開の地であった北部の高原地帯の開拓を行い、交易に頼りきりの食料自給率を解決しようと決断した。
しかし課題があった。北部の草原地帯、ゴバ高原には獰猛な野生動物の領域であり、今も大型動物達が君臨していた。
開拓のために常備軍を幾度と派兵させるも、ことごとく失敗に終わる。
理由は明白である。
この国の兵士達は列強諸国の強兵にもひけを取らない強さを誇るが、あくまでそれは人間相手であるからだ。
この国の兵は狩りに不慣れのため、派兵のたびに多大な損害を被る。
しびれを切らした国主はある決断をとった。
大陸のハンター連盟に駆除を依頼し、見返りとしてハンター連盟に所属する者に治外法権を与えること。
これにより、ハンター達はサラブの法では裁けなくなる。
これにより国内の不満は噴出した。
そしてサラブの国民は外国から来るハンター達を
そしてサラブに先遣隊として送り込まれたのがブシュロンが率いるチームであった。
さらにその中にミュラー達が新隊員として加わる。
ミュラーとジラールは呆然として立ち尽くす。ただ見上げていた、目の前の生き物を。
ニワトリだ……。 馬鹿でっかいニワトリだ……。
オルマとクロエが男二人が茫然と立ちつくす姿を不思議そうに眺めた。
「何やってんの? はやく乗りなよ、さっさと狩りにいくよー」
この意味不明な生命体に乗馬を催促してきた。
理解が追いつかない。
「なんだこれは?」
オルマが不思議そうに首をかしげる。
「ニワトリだけど?」
「それはわかる! けど俺が知ってるニワトリはもっと小さい! そもそもニワトリに乗るのかこの国の人間は!?」
「ああ、ミュラーとジラールは外国人だもんね。うちに国だとこれが遠出用の乗り物だよ」
ジラールが毒づく。
「この国はマジでイカレてやがる! 蛮族どもめ!」
それにクロエがキッと睨みつける。
「だったら歩いていくことね。ゴバ高原まで徒歩だと丸一日かかるわよ」
慌てて俺が仲裁に入る。
「こっちが悪かった、だけど正直困る。こんなもの乗り方がわからんぞ」
改めて見上げる巨大なニワトリ一応、鞍と手綱はあるが、俺の故郷のウマの一回りも大きい怪鳥だ。
ゾウに乗れと言われて、いきなり乗れるヤツなんていない。
俺の不安にオルマが自信満々に答える。
「オーケー! じゃあ今回は特別に後ろに乗っけてあげるよー。けど二人乗りが限界だから、ジラールはクロエが乗っけてあげてね」
それを聞いて、クロエの耳がピンと立ち、とても嫌そうな顔をしている。
まぁジラールだもんな、アイツ、臭そうだし。
正直、俺もアイツと二人乗りは嫌だ。
悪戦苦闘しながらも、ようやく四人は二羽のニワトリに乗り、街を出た。
目指すは北へ、獣が退治にゴバ草原へ、と思ったが……。
ミュラーはあまりに不慣れな生き物の乗り心地に猛烈な不快感が全身に走り、それは塊となって胃から口へと吐き出されてしまった。
つまりは嘔吐である。
ニワトリの上は上下左右になってミュラーを振り回し、それは乗り物酔いさせるには充分だった。
驚いたオルマが振り返る。
「ちょっとミュラー、大丈夫?」
俺は口から泡を吹きながら辛うじて答える。
「……も、問題ない……」
「後ろに乗ってる時はちゃんとアタシの腰を持って、太ももをアタシの下半身をはさむ感じでやってよ!」
「……そんなマネはできん……」
「なんでさ!?」
「……俺の国では女性の肌に触るのは結婚相手しかしてはならない。それをやると不浄の存在として扱われる……」
「ここは君の国じゃないよ!?」
「……後生だ、ゲロしても軽蔑しないでくれ……そしてそのまま突っ走ってくれ……」
呆れたオルマはニワトリの尻にムチを入れて、より一層速度を上げた。
朦朧とした意識の中、平行して走るクロエ達を見る。
ジラールの野郎、思いっきり抱きついてやがる!
しかもクロエの尻を撫でてないか!?
なんていやらしい男だ。
男の風上にもおけん、最低な野郎だ……。
クズめ……。
数時間、気絶をこらえてなんとか目的のゴバ草原へと辿り着いた時には、オルマも、その跨るニワトリも俺の吐しゃ物まみれだった。
オルマがジトリとした目でこちらを見て、黙々とそれを洗う。
……俺はとても傷ついた。
帰りもこれに乗るのか……。
もう帰りたい……。