第28話 未知との遭遇②
文字数 2,177文字
ソレの背後にブシュロンがいた。
ミュラーは頼もしい助っ人の登場に安堵する。
ブシュロンがソレの首を片手で鷲掴みしていた。
そしてソレを持ち上げると同時に強烈な蹴りを炸裂させる。
余りの威力にソレが空中高く吹き飛ぶ。
すかさずブシュロンが宙を舞い、それに拳の連撃を浴びせる。
そして止めの一撃といわんばかりの豪快な上段回転蹴りをソレに放つ。
ソレが地面に落ちた時、その衝撃で大地が裂けた。
しかしソレは立ち上がろうとしていた。
ミュラーが信じられない光景を見て驚愕している最中、ブシュロンは冷静に分析する。
「ふむ、物理攻撃は効かんか……。SSクラスのアヤカシだな。アーペル! 結界を張ってくれ。デルヴォー! 負傷者を複体修術で手当てだ。フェンディが重症だ」
すると言葉と同時に法衣を纏った女性が現れ、詠唱を始める。
そして次に大柄な体躯、左目に眼帯をした男がフェンディを抱きかかえ、俺の前へと姿を現わす。そして告げる。
「ここから俺達に任せろ」
すると屈強な男たちが出現し、それぞれ、ジラール、オルマ、クロエを担ぎ上げていた。勿論、俺も担ぎ上げられる。
そしてブシュロンが低い声で呼びかける。
「空間錬成を発動させる。全員この場から離れろ」
法衣を纏った女性が詠唱を終えると、ブシュロンとソレの間の空間にひずみが生じる、そしてそれは硝子のような光で二人を包み込む。
「空間錬成展開! 出でよ焔銛 」
刹那、ブシュロンの身体から巨大な火柱が走り、ソレが爆炎に包まれる。
空間錬成 結界術の発展術式
本来、魔法術師の本来の力を最大限発揮できるよう空間を変化させ、さらに周囲に被害が及ばないように作られた結界術である。
結界内は自身の魔力が循環と還元され、本来の2倍以上の魔力が術者の力へと発揮される。さらに結界内は発動術者の魔力で構成されているため、結界内の相手は自身の魔力を込めることが非常に困難になる。例えるなら、水中で火を発火させる、そのような不利な環境下に相手はさらされる。
すなわち、空間錬成の中に入ってしまえば魔法での脱出は困難極まる。ただし結界は本来、発動術者の魔法を結界内に封印させるためのものなので、術者の魔法出力を大きく超える衝撃を与えれば破壊できる。
発動条件は空間を構成させる魔法式、そしてその空間の形を形成させる結界術式が必要となる。
創世の魔術師カインが古代魔法を現代に蘇らせた究極魔法の一つである。
しかしブシュロンの空間錬成は未熟であり、他者に結界術を張り巡らせてもらうことによって、はじめてそれが発動できる。
燃え盛る炎の中、ブシュロンは右手をかざした。その手のひらには灼熱の塊が螺旋を描き、槍のように形成されていた。
ブシュロンは弓矢を放つような動作で、その炎の槍を放つ。
放たれた槍は空中を燃え裂きながらソレに一直線に走る。
そしてソレを射貫く。
刹那、直撃したソレは業火に焼かれ、消し炭のように砕け散る。
同時に結界はひび割れて、崩れていく。
ブシュロンの足元には焦げた木炭になったソレの残塊が散っていた。
そして魔力を使い果たしたブシュロンが片膝をつく。
気づけば彼の片手は酷い火傷を負っていた。
法衣を纏った女性が駆け寄る。
「マスター、無事ですか!?」
「うむ、右手を代償にしたが、相手が未知のアヤカシである以上、何をしてくるかわからん。だからこちらは切り札を出さざるえなかった。私より、そのアヤカシの残塊を結界で封印してくれ、持ち帰って上に報告せねばならん。事後処理は任せたぞアーペル」
アーペルと呼ばれた女性がソレの残塊を見分確認しようと触れようとした時、
「触らない方がいい、アヤカシの生命力は未知数だ」
突然全身をローブで包んだ若い男が現れた。
その姿を見てブシュロンが苦笑いする。
「応援要請はしてましたが、あなたがきてたのですか……。ハンターでもないのに。」
「勿論、応援のアヤカシハンターも街に来てるよ。俺は弟子の闘い方に興味をもったからここにきたんだ」
若い男が結晶石を取り出すと、その石は瞬く間に光を放ち、ソレの残塊が一つ残らず吸い込まれる。
結晶石を腰の布袋にしまい、負傷したブシュロンの右腕に手を触れた。
すると一瞬でブシュロンの腕の怪我が治った。
そばにいたアーペルが驚愕する。
若い男は両手を頭の後ろに組んで、まるで何事もなかったかのように気楽にブシュロンに話しかける。
「仲間が怪我してるんだろ? ついでに治してやる。せっかくベガスにきたんだ観光がしたい」
それを聞いたブシュロンが苦笑し、答える。
「上への報告書はどうします?」
「随伴したアヤカシハンターにやらせるさ。そもそも俺はお前も専門家ではないからな」
ブシュロンが指を左右に振る。
「観光は明日にしましょう。今夜は新歓コンパです。ベガスの名物料理と名酒を是非楽しんでください」
「あんまり賑やかな宴席は好きじゃないんだけどね」
「うちの女性陣が酌をしますよ」
「おお! そいつは好きだ! 大好きだ! 早く怪我人の女の子を治療しよう」
若い男が満面の笑顔を浮かべると、すぐさま移動魔法を展開する。
ブシュロン達、その仲間達は瞬時にその場を後にした。
残された巨竜の肉塊にはハゲタカとハイエナが群がっていた。
この草原の厳しさを物語る光景であった。
ミュラーは頼もしい助っ人の登場に安堵する。
ブシュロンがソレの首を片手で鷲掴みしていた。
そしてソレを持ち上げると同時に強烈な蹴りを炸裂させる。
余りの威力にソレが空中高く吹き飛ぶ。
すかさずブシュロンが宙を舞い、それに拳の連撃を浴びせる。
そして止めの一撃といわんばかりの豪快な上段回転蹴りをソレに放つ。
ソレが地面に落ちた時、その衝撃で大地が裂けた。
しかしソレは立ち上がろうとしていた。
ミュラーが信じられない光景を見て驚愕している最中、ブシュロンは冷静に分析する。
「ふむ、物理攻撃は効かんか……。SSクラスのアヤカシだな。アーペル! 結界を張ってくれ。デルヴォー! 負傷者を複体修術で手当てだ。フェンディが重症だ」
すると言葉と同時に法衣を纏った女性が現れ、詠唱を始める。
そして次に大柄な体躯、左目に眼帯をした男がフェンディを抱きかかえ、俺の前へと姿を現わす。そして告げる。
「ここから俺達に任せろ」
すると屈強な男たちが出現し、それぞれ、ジラール、オルマ、クロエを担ぎ上げていた。勿論、俺も担ぎ上げられる。
そしてブシュロンが低い声で呼びかける。
「空間錬成を発動させる。全員この場から離れろ」
法衣を纏った女性が詠唱を終えると、ブシュロンとソレの間の空間にひずみが生じる、そしてそれは硝子のような光で二人を包み込む。
「空間錬成展開! 出でよ
刹那、ブシュロンの身体から巨大な火柱が走り、ソレが爆炎に包まれる。
空間錬成 結界術の発展術式
本来、魔法術師の本来の力を最大限発揮できるよう空間を変化させ、さらに周囲に被害が及ばないように作られた結界術である。
結界内は自身の魔力が循環と還元され、本来の2倍以上の魔力が術者の力へと発揮される。さらに結界内は発動術者の魔力で構成されているため、結界内の相手は自身の魔力を込めることが非常に困難になる。例えるなら、水中で火を発火させる、そのような不利な環境下に相手はさらされる。
すなわち、空間錬成の中に入ってしまえば魔法での脱出は困難極まる。ただし結界は本来、発動術者の魔法を結界内に封印させるためのものなので、術者の魔法出力を大きく超える衝撃を与えれば破壊できる。
発動条件は空間を構成させる魔法式、そしてその空間の形を形成させる結界術式が必要となる。
創世の魔術師カインが古代魔法を現代に蘇らせた究極魔法の一つである。
しかしブシュロンの空間錬成は未熟であり、他者に結界術を張り巡らせてもらうことによって、はじめてそれが発動できる。
燃え盛る炎の中、ブシュロンは右手をかざした。その手のひらには灼熱の塊が螺旋を描き、槍のように形成されていた。
ブシュロンは弓矢を放つような動作で、その炎の槍を放つ。
放たれた槍は空中を燃え裂きながらソレに一直線に走る。
そしてソレを射貫く。
刹那、直撃したソレは業火に焼かれ、消し炭のように砕け散る。
同時に結界はひび割れて、崩れていく。
ブシュロンの足元には焦げた木炭になったソレの残塊が散っていた。
そして魔力を使い果たしたブシュロンが片膝をつく。
気づけば彼の片手は酷い火傷を負っていた。
法衣を纏った女性が駆け寄る。
「マスター、無事ですか!?」
「うむ、右手を代償にしたが、相手が未知のアヤカシである以上、何をしてくるかわからん。だからこちらは切り札を出さざるえなかった。私より、そのアヤカシの残塊を結界で封印してくれ、持ち帰って上に報告せねばならん。事後処理は任せたぞアーペル」
アーペルと呼ばれた女性がソレの残塊を見分確認しようと触れようとした時、
「触らない方がいい、アヤカシの生命力は未知数だ」
突然全身をローブで包んだ若い男が現れた。
その姿を見てブシュロンが苦笑いする。
「応援要請はしてましたが、あなたがきてたのですか……。ハンターでもないのに。」
「勿論、応援のアヤカシハンターも街に来てるよ。俺は弟子の闘い方に興味をもったからここにきたんだ」
若い男が結晶石を取り出すと、その石は瞬く間に光を放ち、ソレの残塊が一つ残らず吸い込まれる。
結晶石を腰の布袋にしまい、負傷したブシュロンの右腕に手を触れた。
すると一瞬でブシュロンの腕の怪我が治った。
そばにいたアーペルが驚愕する。
若い男は両手を頭の後ろに組んで、まるで何事もなかったかのように気楽にブシュロンに話しかける。
「仲間が怪我してるんだろ? ついでに治してやる。せっかくベガスにきたんだ観光がしたい」
それを聞いたブシュロンが苦笑し、答える。
「上への報告書はどうします?」
「随伴したアヤカシハンターにやらせるさ。そもそも俺はお前も専門家ではないからな」
ブシュロンが指を左右に振る。
「観光は明日にしましょう。今夜は新歓コンパです。ベガスの名物料理と名酒を是非楽しんでください」
「あんまり賑やかな宴席は好きじゃないんだけどね」
「うちの女性陣が酌をしますよ」
「おお! そいつは好きだ! 大好きだ! 早く怪我人の女の子を治療しよう」
若い男が満面の笑顔を浮かべると、すぐさま移動魔法を展開する。
ブシュロン達、その仲間達は瞬時にその場を後にした。
残された巨竜の肉塊にはハゲタカとハイエナが群がっていた。
この草原の厳しさを物語る光景であった。