第52話 激闘
文字数 2,085文字
ゆっくりと身を起こして、ミュラーは仲間に呼びかける。
「ジラール、オルマ、黒服の男達はくれてやる。どうやらコイツはオレに用があるようだ」
ミュラーの呼びかけに答えるように二人は頷き、武器を持って構える。
「来るなら来い、大人の戦い方をそっちのガキ共に教えてやる」
ミュラーがそう告げると、ランスを抜き、前傾姿勢になって構える。
それを見たリヴァはニヤリと笑みを浮かべた。
野獣が捕食するように構える。
両者が全身に気 をみなぎらせる。
そしてゆっくりと間合いを詰めていく。
先に動いたのはリヴァであった。
あっという間にミュラーの懐に入り込み、鋭い刃物のような手刀で、その首を狙う。
ミュラーのランスは片方の手で掴まれていた。
しかし、その手刀は届かなかった。
そしてリヴァの視界が揺らぐ。
ミュラーの渾身の膝蹴りがリヴァの顎を捉えていたのだ。
ミュラーは予めリヴァが接近するのを予測していた。
体術の使い手なら、確実に近接に持ち込む。
敢えて相手に間合いを与えて、獲物が罠にかかるのを待っていた。
素早くランスを引き、倒れかけたリヴァの胴体をその柄で叩き込もうとした。
しかし今度はミュラーの視界が変化する。
目線の先には空があった。
リヴァは掴んだランスを持ち上げ、振り下ろす。
ランスを持ったミュラーは宙に浮き、地面へと叩きつけられる。
地面に伏したミュラーに追撃するべく、リヴァは手刀を繰り出す。
しかし身体を投げられたと理解したミュラーは既に抜刀して剣を振り抜いていた。
リヴァの手刀とミュラーの斬撃がぶつかり合う。
瞬間火花が散る。
それを見て、ミュラーは実感した。
オレの剣を素手で防ぐとは。気 を腕に集中させているな。まともに食らったら、身体が両断されるな。
実際、ミュラーの剣ではリヴァの指先に擦り傷すら与えられなかった。
これならどうだ。
ミュラーは体勢を立て直し、剣の切先に気(タオ)を集中させた。
それを見たリヴァは再びニヤリと笑う。
そして自身の腕に気 を集中させた。
「無駄だぜ! オレは剣士と何度も殺りあってきたんだ。剣術じゃオレに勝てねぇぜ!」
ミュラーは直感した。
コイツの動きは直線的だ。
なら、動きも予測しやすい。
再びリヴァが襲い掛かる。
その素早さはあっという間にミュラーの間合いを殺し、その眼前に肉薄しようとしていた。
ミュラーの胴が手刀で貫かれようとしていた。
「爆ぜろ」
刹那、地面に置かれていた、ミュラーのランスが爆炎を放ちながら爆散した。
業火が二人を包む。
不意に起きたことにリヴァは一瞬戸惑う。
その隙をつかれた。
リヴァは太ももに激痛が走っていたことを感じた。
自身の脚はミュラーの剣が突き刺さっていたのだ。
それを確認した瞬間、今度は右腕に激痛が襲う
。
ミュラーの手刀がリヴァの右腕を斬り落としていたのだ。
「悪いが真似させてもらった。一番厄介だったその速さを封じた。その脚じゃさっきの動きはできまい」
ミュラーは転がり落ちたリヴァの腕を拾い上げ、火魔法で焼き尽くした。
リヴァはその様子を忌々しい目で睨む。
ミュラーはおどけたポーズで挑発する。
「どうした? 来るなら来い。次は左腕を火葬してやる」
猛り狂ったリヴァは左腕をかざし、気 を集中させる。
膨大な量の気 がうごめくように集まる。
その異様さにミュラーは身構える。
やはりまだ奥の手をもっていたな……。
左手に集まった気 をリヴァが放とうとした時、突然、彼の背後から金髪の軍服を着た男が現れる。
「リヴァ、時間だ。退くぞ」
振り返ったリヴァはその男に抗議するように叫ぶ。
「レオン! このままじゃ帰れねぇ! あの野郎、俺の右腕を!」
レオンと呼ばれた男は静かな声で、
「腕は治せばいい。ヤツが大鷲と組んでいることがわかったことだけでも収穫だ。時期がくればまた戦わせてやる」
ミュラーがリヴァを挑発する。
「おい、逃げるのはいいが、その脚に刺さった剣は返せ。高いんだぞ」
その言葉に激高したリヴァをレオンという男は押さえて、剣を引き抜き、ミュラーに投げ渡す。
そしてまた落ち着いた声でミュラーに言い放つ。
「あまり怒らすなよ、次に会ったら殺してやる」
ミュラーが二コリとほくそ笑む。
「次があったらな」
すると、レオンとリヴァはオルマの糸で縛られてしまった。
姿を隠していたオルマが現れ、宣告する。
「少しでも動いたら、コイツで輪切りにするよ」
その言葉を聞き、レオンは静かに笑う。
「フっ、これで捕らえたつもりか? 笑わすなよ」
そう言い放つと、レオンの身体は炎に包まれる。
そしてオルマの糸が焼け落ちる。
立ち込める炎の中でレオンとリヴァは姿をくらました。
ジラールも現れ、ハーミットを放とうとしたが、リューが制止した。
「今は体勢の立て直しが最優先です。そして一刻も早く、ドラゴのところに向かわねば! 向こうも襲われているかもしれません!」
ミュラーは炎の先を見つめ、再認識した。
今度の獲物はこいつらだな。確実に仕留めて、盛大に血祭りにあげてやる。
心の中で殺意の炎をたぎらせた。
「ジラール、オルマ、黒服の男達はくれてやる。どうやらコイツはオレに用があるようだ」
ミュラーの呼びかけに答えるように二人は頷き、武器を持って構える。
「来るなら来い、大人の戦い方をそっちのガキ共に教えてやる」
ミュラーがそう告げると、ランスを抜き、前傾姿勢になって構える。
それを見たリヴァはニヤリと笑みを浮かべた。
野獣が捕食するように構える。
両者が全身に
そしてゆっくりと間合いを詰めていく。
先に動いたのはリヴァであった。
あっという間にミュラーの懐に入り込み、鋭い刃物のような手刀で、その首を狙う。
ミュラーのランスは片方の手で掴まれていた。
しかし、その手刀は届かなかった。
そしてリヴァの視界が揺らぐ。
ミュラーの渾身の膝蹴りがリヴァの顎を捉えていたのだ。
ミュラーは予めリヴァが接近するのを予測していた。
体術の使い手なら、確実に近接に持ち込む。
敢えて相手に間合いを与えて、獲物が罠にかかるのを待っていた。
素早くランスを引き、倒れかけたリヴァの胴体をその柄で叩き込もうとした。
しかし今度はミュラーの視界が変化する。
目線の先には空があった。
リヴァは掴んだランスを持ち上げ、振り下ろす。
ランスを持ったミュラーは宙に浮き、地面へと叩きつけられる。
地面に伏したミュラーに追撃するべく、リヴァは手刀を繰り出す。
しかし身体を投げられたと理解したミュラーは既に抜刀して剣を振り抜いていた。
リヴァの手刀とミュラーの斬撃がぶつかり合う。
瞬間火花が散る。
それを見て、ミュラーは実感した。
オレの剣を素手で防ぐとは。
実際、ミュラーの剣ではリヴァの指先に擦り傷すら与えられなかった。
これならどうだ。
ミュラーは体勢を立て直し、剣の切先に気(タオ)を集中させた。
それを見たリヴァは再びニヤリと笑う。
そして自身の腕に
「無駄だぜ! オレは剣士と何度も殺りあってきたんだ。剣術じゃオレに勝てねぇぜ!」
ミュラーは直感した。
コイツの動きは直線的だ。
なら、動きも予測しやすい。
再びリヴァが襲い掛かる。
その素早さはあっという間にミュラーの間合いを殺し、その眼前に肉薄しようとしていた。
ミュラーの胴が手刀で貫かれようとしていた。
「爆ぜろ」
刹那、地面に置かれていた、ミュラーのランスが爆炎を放ちながら爆散した。
業火が二人を包む。
不意に起きたことにリヴァは一瞬戸惑う。
その隙をつかれた。
リヴァは太ももに激痛が走っていたことを感じた。
自身の脚はミュラーの剣が突き刺さっていたのだ。
それを確認した瞬間、今度は右腕に激痛が襲う
。
ミュラーの手刀がリヴァの右腕を斬り落としていたのだ。
「悪いが真似させてもらった。一番厄介だったその速さを封じた。その脚じゃさっきの動きはできまい」
ミュラーは転がり落ちたリヴァの腕を拾い上げ、火魔法で焼き尽くした。
リヴァはその様子を忌々しい目で睨む。
ミュラーはおどけたポーズで挑発する。
「どうした? 来るなら来い。次は左腕を火葬してやる」
猛り狂ったリヴァは左腕をかざし、
膨大な量の
その異様さにミュラーは身構える。
やはりまだ奥の手をもっていたな……。
左手に集まった
「リヴァ、時間だ。退くぞ」
振り返ったリヴァはその男に抗議するように叫ぶ。
「レオン! このままじゃ帰れねぇ! あの野郎、俺の右腕を!」
レオンと呼ばれた男は静かな声で、
「腕は治せばいい。ヤツが大鷲と組んでいることがわかったことだけでも収穫だ。時期がくればまた戦わせてやる」
ミュラーがリヴァを挑発する。
「おい、逃げるのはいいが、その脚に刺さった剣は返せ。高いんだぞ」
その言葉に激高したリヴァをレオンという男は押さえて、剣を引き抜き、ミュラーに投げ渡す。
そしてまた落ち着いた声でミュラーに言い放つ。
「あまり怒らすなよ、次に会ったら殺してやる」
ミュラーが二コリとほくそ笑む。
「次があったらな」
すると、レオンとリヴァはオルマの糸で縛られてしまった。
姿を隠していたオルマが現れ、宣告する。
「少しでも動いたら、コイツで輪切りにするよ」
その言葉を聞き、レオンは静かに笑う。
「フっ、これで捕らえたつもりか? 笑わすなよ」
そう言い放つと、レオンの身体は炎に包まれる。
そしてオルマの糸が焼け落ちる。
立ち込める炎の中でレオンとリヴァは姿をくらました。
ジラールも現れ、ハーミットを放とうとしたが、リューが制止した。
「今は体勢の立て直しが最優先です。そして一刻も早く、ドラゴのところに向かわねば! 向こうも襲われているかもしれません!」
ミュラーは炎の先を見つめ、再認識した。
今度の獲物はこいつらだな。確実に仕留めて、盛大に血祭りにあげてやる。
心の中で殺意の炎をたぎらせた。