第101話 アルプ山脈攻防劇
文字数 1,502文字
リアムの目論みは命中した。
要塞からグラスランド軍が退いていき、アルプ山脈に侵攻を開始したのだ。
空前絶後の大軍勢が南北に挟むように険しい山岳に押し寄せる。
しかし、それもリアムの想定内であった。
山道は塞がれ、山の至る所にミュラー達が張り巡らした罠が仕掛けられていた。
さらにアルプ山脈の攻略は容易ではない。
肝心の砦は地下で健在しており、地下道がアリの巣のように広がっていた。
そして敵を待ち構える塹壕が掘られていた。
先の戦いで、山脈を行き来したミュラー突っ込んでやアジムートの軍勢はすでにこのアルプ山脈を知り尽くしていた。
それが散兵となって、山を駆け、敵兵を狩る。
対してグラスランド軍勢は数十万の大群だが、地の利が無かった。
初めて登る山岳で戦争をするには部が悪過ぎた。
落とし穴で串刺しにされる者、山の険しさに憔悴したところを狙われる者。
登山を諦め下山しようとしところを落石の嵐に遭い、命を落とす者。
そびえ立つ山脈から遭難し、迷った先に崖から突き落とされる者。
グラスランド軍勢は山脈の攻略どころか、山の中腹で右往左往し、巨獣と竜の群れは麓で待機を余儀なくされた。
空からワイバーンの群れが偵察しても、森林の奥深くから無数の矢の餌食となった。
レッドドラゴンが大空を舞い、天空から灼熱の息を吐いても、地下に潜ったミュラー達には無意味だった。
ミュラー達に通信魔法が付与された結晶があったのも大きな効果があった。
これのおかげでグラスランド軍の動きは筒抜けとなり、アジムートの素早い指揮を許すことになった。
先手で待ち構えられ、逆に相手に攻められる。
大規模魔法や竜の群れで攻勢に出れば、地下に潜る。
堪らず撤退しようとすれば、突如として出現するアジムートの軍勢がしつこく追撃を仕掛ける。
グラスランド軍は大軍をもってしても、アルプ山脈の攻略は困難を極めてた。
しかも退けば、さらに被害が増すことになり、すっかり山に釘付けの状況に追い込まれた。
うかうかしていてはアスターテやイゼル要塞に籠るトワレ軍勢に背後を狙われるかもしれない。
早期攻略を断念し、山の麓に堅牢な陣を構え、アルプ山脈の砦の兵糧が尽きるのを待った。
リアムはミュラーとゼニスに伝える。
「そろそろグラスランドの連中が兵糧攻めを仕掛けてくると思うが、問題ない。リューが、サラブの支援で貰った備蓄が充分ある。数年は山に篭れるぐらいにな。アジムート将軍には存分に指揮を振るように伝えてくれ」
ゼニスがリアムに問いかける。
「数年? そんなに山に籠るのか? 流石に兵の士気が下がる。父上も飽きるだろう」
リアムはニヤリと笑い返す。
「大丈夫だ。奴らがもたんさ。奴らの陣立ては観測済みだ。しばらく嫌がらせに奴らの兵站を叩く。まぁこれまでの我々の動きを警戒して、兵糧は各地に点在するようになったがね。地道に潰していくさ」
アルプ山脈の激しい攻防は一月立とうとしていた。
グラスランドの兵達はすっかり疲弊していた。
そんな厭戦気分のグラスランド軍に変化が起きた。
いや、戦況に変化が起きたのだ。
アルプ山脈の山岳の一つが爆炎によって消失したのだ。
ミュラー達は通信魔法を駆使し、味方の被害状況を調べていると、結晶から底冷えする男の声が聞こえた。
『便利な物を持ってるじゃないか。羨ましいなぁ。俺は焦熱のバリオス。これからハイキングに行く。そこで待っていろ。一人残らず焼き殺してやる』
そこで通信は切れる。
焼け砕けた山の光景にミュラーが絶望する中、リアムは身体を震えさせながらも、笑みを歪めた。
問題ない、想定内だ。
僕ならやれる。
要塞からグラスランド軍が退いていき、アルプ山脈に侵攻を開始したのだ。
空前絶後の大軍勢が南北に挟むように険しい山岳に押し寄せる。
しかし、それもリアムの想定内であった。
山道は塞がれ、山の至る所にミュラー達が張り巡らした罠が仕掛けられていた。
さらにアルプ山脈の攻略は容易ではない。
肝心の砦は地下で健在しており、地下道がアリの巣のように広がっていた。
そして敵を待ち構える塹壕が掘られていた。
先の戦いで、山脈を行き来したミュラー突っ込んでやアジムートの軍勢はすでにこのアルプ山脈を知り尽くしていた。
それが散兵となって、山を駆け、敵兵を狩る。
対してグラスランド軍勢は数十万の大群だが、地の利が無かった。
初めて登る山岳で戦争をするには部が悪過ぎた。
落とし穴で串刺しにされる者、山の険しさに憔悴したところを狙われる者。
登山を諦め下山しようとしところを落石の嵐に遭い、命を落とす者。
そびえ立つ山脈から遭難し、迷った先に崖から突き落とされる者。
グラスランド軍勢は山脈の攻略どころか、山の中腹で右往左往し、巨獣と竜の群れは麓で待機を余儀なくされた。
空からワイバーンの群れが偵察しても、森林の奥深くから無数の矢の餌食となった。
レッドドラゴンが大空を舞い、天空から灼熱の息を吐いても、地下に潜ったミュラー達には無意味だった。
ミュラー達に通信魔法が付与された結晶があったのも大きな効果があった。
これのおかげでグラスランド軍の動きは筒抜けとなり、アジムートの素早い指揮を許すことになった。
先手で待ち構えられ、逆に相手に攻められる。
大規模魔法や竜の群れで攻勢に出れば、地下に潜る。
堪らず撤退しようとすれば、突如として出現するアジムートの軍勢がしつこく追撃を仕掛ける。
グラスランド軍は大軍をもってしても、アルプ山脈の攻略は困難を極めてた。
しかも退けば、さらに被害が増すことになり、すっかり山に釘付けの状況に追い込まれた。
うかうかしていてはアスターテやイゼル要塞に籠るトワレ軍勢に背後を狙われるかもしれない。
早期攻略を断念し、山の麓に堅牢な陣を構え、アルプ山脈の砦の兵糧が尽きるのを待った。
リアムはミュラーとゼニスに伝える。
「そろそろグラスランドの連中が兵糧攻めを仕掛けてくると思うが、問題ない。リューが、サラブの支援で貰った備蓄が充分ある。数年は山に篭れるぐらいにな。アジムート将軍には存分に指揮を振るように伝えてくれ」
ゼニスがリアムに問いかける。
「数年? そんなに山に籠るのか? 流石に兵の士気が下がる。父上も飽きるだろう」
リアムはニヤリと笑い返す。
「大丈夫だ。奴らがもたんさ。奴らの陣立ては観測済みだ。しばらく嫌がらせに奴らの兵站を叩く。まぁこれまでの我々の動きを警戒して、兵糧は各地に点在するようになったがね。地道に潰していくさ」
アルプ山脈の激しい攻防は一月立とうとしていた。
グラスランドの兵達はすっかり疲弊していた。
そんな厭戦気分のグラスランド軍に変化が起きた。
いや、戦況に変化が起きたのだ。
アルプ山脈の山岳の一つが爆炎によって消失したのだ。
ミュラー達は通信魔法を駆使し、味方の被害状況を調べていると、結晶から底冷えする男の声が聞こえた。
『便利な物を持ってるじゃないか。羨ましいなぁ。俺は焦熱のバリオス。これからハイキングに行く。そこで待っていろ。一人残らず焼き殺してやる』
そこで通信は切れる。
焼け砕けた山の光景にミュラーが絶望する中、リアムは身体を震えさせながらも、笑みを歪めた。
問題ない、想定内だ。
僕ならやれる。