第96話 ミャラーの策
文字数 3,742文字
アルプ山脈から国境を超えて、ザクセン領に入り、今や周囲一帯が最前線となった紛争地域でミュラー達が見た光景は信じられないものだった。
敗走しているはずのトワレの残存兵が紡錘陣形を取り、あろうことか眼前に迫るミノタウロスの大群に向かって果敢に中央突破を敢行していた。
人の数倍はあるであろうミノタウロスが何百頭もいる。
しかしそれに臆することなくトワレの残存兵は勇敢に立ち向かう。
死兵と化し、死をも恐れぬ残存兵達の勢いの前にミノタウロス達は堪らず後退する。
しかし、残存兵はひたすら前へ突き進む。
中央にいたミノタウロス達の命が次々に刈り取られていく。
ついに中央突破を果たした残存兵はそのまま戦場を離脱するのかと思いきや、密集したミノタウロスの群れを反転して、半包囲した。
なんとミノタウロスより遥かに小柄な人間達が巨大なミノタウロス達を蹂躙していた。
苦戦したミノタウロス達は大勢を立て直そう後退するが、そこを残存兵達が猛追し、蹴散らし、散り散りなったミノタウロス達が次々に各個撃破されていった。
まるで生き物のように意思を持ったかのような動きをするトワレの軍勢にリアムは愕然とする。
「こんな戦場はあり得ない。アイツらミノタウロスの群れが怖くないのか!? 我が軍は敗走してるんじゃないのか!? それにあんな自在な陣形ができるなんて、戦場の常識を超えている!」
ミュラーは溜息をついて、肩を竦める。
「アジムートはこれを敗走だと思ってない。転進してるだけだと思ってる。転進を具申したのは恐らく俺の妹だな。よくもまぁ説き伏せたものだ。食糧が尽きない限り、アジムートは戦い続けるぞ……」
呟くミュラーの側には不満そうな顔をしたフェンディがいる。
「なんで私がついてこられなきゃいけないのよ! ブシュロンとかがいるでしょ!」
騒ぐフェンディをミュラーは宥める。
「……安心しろ。……俺に策がある」
「オルマに聞いたけど、あんたの考えってどうせろくでもないことなんでしょ!」
ウマに跨りながらリアムは二人に呼びかける。
「急ごう、行軍の早さが尋常じゃない。置いてかれてしまうかもしれない」
リアムに急かされ、二人はウマを飛ばす。
フェンディは悪い予感を感じながら、ウマの手綱を捌いた。
アジムートの元に伝令が走る。
「報告! またトワレ正規軍勢の生き残りが合流したいと申し出ております!」
その知らせを聞いてアジムートは上機嫌になる。
「あいわかった! 合流を許す。我が軍の与力となっておおいに働けい! ゼニスの言った通りじゃ! 転進すればするほど我が軍は膨れ上がるぞ! 今や出陣の五倍じゃ! なかなか大軍を率いるのは面白いではないか! 痛快じゃ!」
兄妹の中でアジムートの扱いが一番上手いの末妹のゼニスだった。
兄達が敗戦で顔が青くなり、沈黙してるなか、ゼニスだけはアジムートの機微を察知し、転進すればトワレ軍が合流して、大軍を率いる機会が機会が持てると具申したのだ。
そしてこうも進言した。
「父上、我が軍が竜やケルベロスの大軍を前に戦い、どれだけ暴れられるか。見てみたくはありませぬか?」
アジムートが突進を命じれば、兵達はそれに従うしかない。
どうせ死ぬなら少しでも希望がある前へ進むしかない。
もし、下がったり、逃げたりすれば、容赦なく斬り殺されるのだ。
生きるために突貫する、そうしてアジムートの兵達は強くなっていった。
そうしてアジムートの軍勢は死戦をくぐりぬけた。
すると新たな伝令がまた知らせに入る。
「トワレ本国より援軍が来ました!」
「遅いわ! 今頃何しに来おった! 食糧でも用意しておるのか! 数は何万だ!?」
伝令が顔を白くしながら、ヤケクソに声を上げる。
「数は三名! 閣下の子息、ミュラー殿とその細君、他一名であります!」
アジムートはそれが耳に入ると、瞬間、持っている大剣を二つにへし折った。
そして周囲に怒気を放つ。
アジムートの顔がだんだんと険しくなり、鬼の形相になりつつある。
共回りはすっかりアジムートの迫力に気圧される。
しかしミュラーの妹、ゼニスだけは違った。
「知恵ある兄上のことです。きっとこの戦場をより面白くさせる策を持ってきたに違いありませぬ。閣下、戦いは数ではないと日頃から仰ってたではありませんか」
寡兵をもって、大軍を打ち破る。
アジムートの美徳の一つであった。
そう教え説いてきた娘に諭され、アジムートは感情を抑え、低い声で伝令に指示する。
「……通せ」
ミュラーの兄妹達はミュラーはやはり父に殺される運命だったと実感した。
ミュラーのせいで、戦場に赴くことになった妹ゼニスも同情を禁じ得なかった。
アジムートを前に、ミュラーは膝を折り、頭を下げていた。
傍らにはリアムとフェンディもおり、ミュラーと同様に傅く。
アジムートは不機嫌そうにミュラーを見据え、対面を許す。
「面をあげよ!」
ミュラーは神妙な面持ちで顔を上げる。続くようにリアム、フェンディが顔を上げる。
リアムとフェンディはその本陣の異様さに気付く。
生首が飾られてあったのだ。人だけではなく、さきほどのミノタウロス、ケルベロス、フェンリル、オーク、ドワーフ、果てはドラゴンの首まで並んでいた。
そのおぞましい光景にフェンディは硬直する。
しかし、リアムはゴクリと唾を呑み込み、思考をめぐらせる。
流石軍神アジムート……。
この戦力があれば勝算が上がる!
アジムートの側に控えるゼニスが、アジムートに申し伝える。
「兄上は閣下に面白き策を持って参陣したようです。幼少より神童と呼ばれた兄上のことです。聞いて損はないかと」
険しい顔をしたアジムートは軽く首を縦に振る。
「申してみよ! 貴様に忌々しい竜の群れを薙ぎ払う策があるのか! 城のような巨躯を持つベヒーモスを蹴散らす妙案があるのか!?」
アジムートの怒声に不慣れなリアムとフェンディは圧倒される。
しかしミュラーは顔色一つ変えない。
そして静かに口を開く。
「閣下、御武運が来ましたぞ」
ミュラーの意外な言葉にアジムートだけでなく、他の者まで注視する。
ミュラーは続ける。
「閣下は西大陸にアユタヤの旗を立てて見たくはありませぬか? 今トワレ本国は混乱しております。このミュラー、閣下が西に覇を唱えるべく好機を伺っておりました。トワレ正規軍は弱い、今こそ閣下の武を知らしめるべき刻! しかしここでグラスランドに寝返るなぞ、武門の風上にも置ませぬ! 今はトワレと共闘し、グラスランドを返り討ちにし、弱ったトワレを返す刀で撃ち破るべし!」
リアムは内心青ざめた。
コイツ、寝返りやがった!
フェンディはミュラーの言葉が信じられなかった。
まさか仲間から裏切られるとは。
そして嫌な予感がした。
まさか私やリアムもこの生首みたいに飾られるの!?
アジムートはミュラーの言葉に関心を持つ。
確かに祖国アユタヤをより強国にしたい気持ちはある。
何より西大陸に覇を唱えるのはアジムートの宿願であった
。何よりもっと大きな軍勢、百万の軍勢を率いて戦がしてみたい欲求があったのだ。
確かにミュラーの進言を聞けば、西大陸が手に入ればそれも叶うかもしれない。
「愚息よ。その為の策があるのであろう?」
ミュラーは再び頭を下げ、申し開く。
「は! 僭越、勝手ながらこのミュラー、すでにトワレ本国に拠点を築いております。閣下には是非ここは陣払いし、その拠点で御身を構えて頂き所存でございます。今ならトワレも補給や援軍を閣下なら為に惜しみませぬ。それを利用してグラスランドを存分に打ち払い、残ったトワレの軍を屠るべし!」
アジムートは痛快な笑みを浮かべた。
「なんじゃもう城まで築いておったか! 流石儂の息子よ! 良かろうその策乗った!」
「戦の習いにて、トワレの将校と我が細君を閣下の質にと献上致します!」
リアムもフェンディも観念した。
ミュラーは裏切ったのだ。
所詮外国人、祖国の為に動いていたのだ。
しばらくこの蛮族どもの人質生活か……。
しかし痛快に笑うアジムートはミュラーの申し出を断った。
「いらん、いらん。我が息子がかような心配をするな。儂は子供を愛しておる。何より其方の細君は一騎当千の強者と云うではないか。槍働きでその忠義を示してくれ。これ、ゼニス。これよりミュラーの案内に従い西に向かう。全軍にそう命じよ」
ミュラーはアジムートの側に近づく時、リアムに小声で囁く。
「頼むから、早くアルプ山脈に拠点を、この際砦でいい。一刻も早く築いてくれ。間に合わなかったら、コイツは暴れ狂う。その時は自爆するから、後は頼む……」
その時、リアムとフェンディは気付いた。
ミュラーな身体が、服が冷や汗でびしょ濡れであることを。
そして悟った。
これはミュラー、一世一代のハッタリなのだ。
ミュラーの覚悟を無駄にする訳には行かない。
リアムとフェンディは立ち上がる。
「閣下! 恐れ入ります。入城前に、式典の準備をしたく、先に失礼致します」
そう言ってリアムとフェンディは足早にその場を後にする。
ミュラーは心の底から願った。
仲間達の力を。
そして呪った。
自分の生まれを。
敗走しているはずのトワレの残存兵が紡錘陣形を取り、あろうことか眼前に迫るミノタウロスの大群に向かって果敢に中央突破を敢行していた。
人の数倍はあるであろうミノタウロスが何百頭もいる。
しかしそれに臆することなくトワレの残存兵は勇敢に立ち向かう。
死兵と化し、死をも恐れぬ残存兵達の勢いの前にミノタウロス達は堪らず後退する。
しかし、残存兵はひたすら前へ突き進む。
中央にいたミノタウロス達の命が次々に刈り取られていく。
ついに中央突破を果たした残存兵はそのまま戦場を離脱するのかと思いきや、密集したミノタウロスの群れを反転して、半包囲した。
なんとミノタウロスより遥かに小柄な人間達が巨大なミノタウロス達を蹂躙していた。
苦戦したミノタウロス達は大勢を立て直そう後退するが、そこを残存兵達が猛追し、蹴散らし、散り散りなったミノタウロス達が次々に各個撃破されていった。
まるで生き物のように意思を持ったかのような動きをするトワレの軍勢にリアムは愕然とする。
「こんな戦場はあり得ない。アイツらミノタウロスの群れが怖くないのか!? 我が軍は敗走してるんじゃないのか!? それにあんな自在な陣形ができるなんて、戦場の常識を超えている!」
ミュラーは溜息をついて、肩を竦める。
「アジムートはこれを敗走だと思ってない。転進してるだけだと思ってる。転進を具申したのは恐らく俺の妹だな。よくもまぁ説き伏せたものだ。食糧が尽きない限り、アジムートは戦い続けるぞ……」
呟くミュラーの側には不満そうな顔をしたフェンディがいる。
「なんで私がついてこられなきゃいけないのよ! ブシュロンとかがいるでしょ!」
騒ぐフェンディをミュラーは宥める。
「……安心しろ。……俺に策がある」
「オルマに聞いたけど、あんたの考えってどうせろくでもないことなんでしょ!」
ウマに跨りながらリアムは二人に呼びかける。
「急ごう、行軍の早さが尋常じゃない。置いてかれてしまうかもしれない」
リアムに急かされ、二人はウマを飛ばす。
フェンディは悪い予感を感じながら、ウマの手綱を捌いた。
アジムートの元に伝令が走る。
「報告! またトワレ正規軍勢の生き残りが合流したいと申し出ております!」
その知らせを聞いてアジムートは上機嫌になる。
「あいわかった! 合流を許す。我が軍の与力となっておおいに働けい! ゼニスの言った通りじゃ! 転進すればするほど我が軍は膨れ上がるぞ! 今や出陣の五倍じゃ! なかなか大軍を率いるのは面白いではないか! 痛快じゃ!」
兄妹の中でアジムートの扱いが一番上手いの末妹のゼニスだった。
兄達が敗戦で顔が青くなり、沈黙してるなか、ゼニスだけはアジムートの機微を察知し、転進すればトワレ軍が合流して、大軍を率いる機会が機会が持てると具申したのだ。
そしてこうも進言した。
「父上、我が軍が竜やケルベロスの大軍を前に戦い、どれだけ暴れられるか。見てみたくはありませぬか?」
アジムートが突進を命じれば、兵達はそれに従うしかない。
どうせ死ぬなら少しでも希望がある前へ進むしかない。
もし、下がったり、逃げたりすれば、容赦なく斬り殺されるのだ。
生きるために突貫する、そうしてアジムートの兵達は強くなっていった。
そうしてアジムートの軍勢は死戦をくぐりぬけた。
すると新たな伝令がまた知らせに入る。
「トワレ本国より援軍が来ました!」
「遅いわ! 今頃何しに来おった! 食糧でも用意しておるのか! 数は何万だ!?」
伝令が顔を白くしながら、ヤケクソに声を上げる。
「数は三名! 閣下の子息、ミュラー殿とその細君、他一名であります!」
アジムートはそれが耳に入ると、瞬間、持っている大剣を二つにへし折った。
そして周囲に怒気を放つ。
アジムートの顔がだんだんと険しくなり、鬼の形相になりつつある。
共回りはすっかりアジムートの迫力に気圧される。
しかしミュラーの妹、ゼニスだけは違った。
「知恵ある兄上のことです。きっとこの戦場をより面白くさせる策を持ってきたに違いありませぬ。閣下、戦いは数ではないと日頃から仰ってたではありませんか」
寡兵をもって、大軍を打ち破る。
アジムートの美徳の一つであった。
そう教え説いてきた娘に諭され、アジムートは感情を抑え、低い声で伝令に指示する。
「……通せ」
ミュラーの兄妹達はミュラーはやはり父に殺される運命だったと実感した。
ミュラーのせいで、戦場に赴くことになった妹ゼニスも同情を禁じ得なかった。
アジムートを前に、ミュラーは膝を折り、頭を下げていた。
傍らにはリアムとフェンディもおり、ミュラーと同様に傅く。
アジムートは不機嫌そうにミュラーを見据え、対面を許す。
「面をあげよ!」
ミュラーは神妙な面持ちで顔を上げる。続くようにリアム、フェンディが顔を上げる。
リアムとフェンディはその本陣の異様さに気付く。
生首が飾られてあったのだ。人だけではなく、さきほどのミノタウロス、ケルベロス、フェンリル、オーク、ドワーフ、果てはドラゴンの首まで並んでいた。
そのおぞましい光景にフェンディは硬直する。
しかし、リアムはゴクリと唾を呑み込み、思考をめぐらせる。
流石軍神アジムート……。
この戦力があれば勝算が上がる!
アジムートの側に控えるゼニスが、アジムートに申し伝える。
「兄上は閣下に面白き策を持って参陣したようです。幼少より神童と呼ばれた兄上のことです。聞いて損はないかと」
険しい顔をしたアジムートは軽く首を縦に振る。
「申してみよ! 貴様に忌々しい竜の群れを薙ぎ払う策があるのか! 城のような巨躯を持つベヒーモスを蹴散らす妙案があるのか!?」
アジムートの怒声に不慣れなリアムとフェンディは圧倒される。
しかしミュラーは顔色一つ変えない。
そして静かに口を開く。
「閣下、御武運が来ましたぞ」
ミュラーの意外な言葉にアジムートだけでなく、他の者まで注視する。
ミュラーは続ける。
「閣下は西大陸にアユタヤの旗を立てて見たくはありませぬか? 今トワレ本国は混乱しております。このミュラー、閣下が西に覇を唱えるべく好機を伺っておりました。トワレ正規軍は弱い、今こそ閣下の武を知らしめるべき刻! しかしここでグラスランドに寝返るなぞ、武門の風上にも置ませぬ! 今はトワレと共闘し、グラスランドを返り討ちにし、弱ったトワレを返す刀で撃ち破るべし!」
リアムは内心青ざめた。
コイツ、寝返りやがった!
フェンディはミュラーの言葉が信じられなかった。
まさか仲間から裏切られるとは。
そして嫌な予感がした。
まさか私やリアムもこの生首みたいに飾られるの!?
アジムートはミュラーの言葉に関心を持つ。
確かに祖国アユタヤをより強国にしたい気持ちはある。
何より西大陸に覇を唱えるのはアジムートの宿願であった
。何よりもっと大きな軍勢、百万の軍勢を率いて戦がしてみたい欲求があったのだ。
確かにミュラーの進言を聞けば、西大陸が手に入ればそれも叶うかもしれない。
「愚息よ。その為の策があるのであろう?」
ミュラーは再び頭を下げ、申し開く。
「は! 僭越、勝手ながらこのミュラー、すでにトワレ本国に拠点を築いております。閣下には是非ここは陣払いし、その拠点で御身を構えて頂き所存でございます。今ならトワレも補給や援軍を閣下なら為に惜しみませぬ。それを利用してグラスランドを存分に打ち払い、残ったトワレの軍を屠るべし!」
アジムートは痛快な笑みを浮かべた。
「なんじゃもう城まで築いておったか! 流石儂の息子よ! 良かろうその策乗った!」
「戦の習いにて、トワレの将校と我が細君を閣下の質にと献上致します!」
リアムもフェンディも観念した。
ミュラーは裏切ったのだ。
所詮外国人、祖国の為に動いていたのだ。
しばらくこの蛮族どもの人質生活か……。
しかし痛快に笑うアジムートはミュラーの申し出を断った。
「いらん、いらん。我が息子がかような心配をするな。儂は子供を愛しておる。何より其方の細君は一騎当千の強者と云うではないか。槍働きでその忠義を示してくれ。これ、ゼニス。これよりミュラーの案内に従い西に向かう。全軍にそう命じよ」
ミュラーはアジムートの側に近づく時、リアムに小声で囁く。
「頼むから、早くアルプ山脈に拠点を、この際砦でいい。一刻も早く築いてくれ。間に合わなかったら、コイツは暴れ狂う。その時は自爆するから、後は頼む……」
その時、リアムとフェンディは気付いた。
ミュラーな身体が、服が冷や汗でびしょ濡れであることを。
そして悟った。
これはミュラー、一世一代のハッタリなのだ。
ミュラーの覚悟を無駄にする訳には行かない。
リアムとフェンディは立ち上がる。
「閣下! 恐れ入ります。入城前に、式典の準備をしたく、先に失礼致します」
そう言ってリアムとフェンディは足早にその場を後にする。
ミュラーは心の底から願った。
仲間達の力を。
そして呪った。
自分の生まれを。