第43話 ミュラー純愛白書②

文字数 2,155文字

 館の奥は浴場になっていた。
 さきほど俺を案内した二人の少女が下着姿になって、俺の前後にはさむように俺の身体を洗う。
 それはもう入念に。
 身体だけでなく、髪の毛や歯磨きまでされた。特に下半身を丹念に洗われた。
 病気の防止のためだろうか。
 年端もいかない少女に全裸を晒されるのは妙な気分だ。
 生憎おれはロリコンじゃないため、興奮はしないが、何か羞恥心をくすぐられる。
 一通り洗い終わると、風呂布を巻かれ、別室へと案内される。
 そこには紺色のドレスを着崩したルカがベッドに座っていた。
 俺を見て、恥じらうように頬を赤く染めながら、丁寧に頭を下げる。

 今からこの娘を好き放題できるかと思うと、心が猛る。

 しかし、俺は作法を知らない。やり方も知らない。

 恥を覚悟でルカにそのことを伝えた。

 すると彼女は艶めかし仕草でその美しいドレスを脱ぎ、その細い身体に纏うもの、全てがなくなった。

 そしてその小さな右手で俺の左手を握る。

 そして導くように顔を近づけた。

 その緑に輝くその瞳が俺に迫る。

 俺の顔が瞳の奥に入った時、口に湿った感覚を覚えた。

 ルカの唇はとても柔らかった。
 そして小さな舌が俺の口内に入っていく。
 舌と舌が絡み合った。
 衝動的に俺はルカの背中を抱きしめた。

 柔らかかった。柔肌とはよくいったものだ。

 生れて初めて触る女の裸の感触に夢中になっていた。
 果実のような、その膨らみをおそるおそる触れ、だんだんと大胆に指を沈み込めるようになっていた。
 すると俺の口内を蹂躙していたルカの舌が反応していった。

 いつまでも続く唇の重なり合いが終わる。

 ルカが甘い吐息を漏らす。

 そして女性の全てを曝け出す。

 刹那、俺の中の欲望が爆ぜた。

 我を失った俺はルカの細い身体をむさぼり尽くす。

 積年の屈折した心の奥底にある歪んだナニカが塊となり、肥大しつつあったものをひたすらルカにぶつけ、弾かせ、解き放つ。

 ひどく乱暴に扱ったかもしれない、しかしルカの煽情的な姿を見るたびに、劣情感が絶え間なく巻き起こり、欲望に身を任せた。

 俺はこれまで溜めこんでいた鬱屈した感情を全て、出し切るようにルカの中に放ち、注ぎ込んだ。

 甲高い嬌声を上げながらもルカはそれを優しく包み、受け止めてくれた。

 果てなく続く歪んだ感情のすべてを、時も、我も忘れるほどに、ルカに放ち続けた。

 休むことなく何度でも。

 ルカはか細い身体はそのすべてを懸命に内包する。
 
 華奢なルカはとっくに限界を超えていたが、娼婦の矜持か、優しさからか、果てなく続く俺の欲望を優しくすくいあげてくれた。

 そのすべてを。


 俺の心の靄が消え、心の奥底の染み込んだ感情拭いきれた時、夜明け空がベガスを照らす。
 その陽の光に包まれながら、俺とルカは重なり合っていた。
 ルカは俺の固い身体をその細身で一晩中包み込んでくれた。
 今は俺の胸で荒い呼吸をしていた。
 無理もない。
 休むことなく、俺を受け止め続けてくれたのだ。
 一晩中。
 視界はクリアになった。
 今まで何に悩んでいたのか忘れてしまったくらいだ。
 ただ今は忘れな草の花のように美しいルカの青い髪を撫でていた。
 肩で息をする彼女を優しく、愛おしく撫でた。

 とても穏やかで、幸せな時間だった。

 そして沸き起こる達成感。

 俺は男になったのだ! 

 これで一人前だ!!

 翌日俺はオルマとクロエがカフェでおしゃべりしている所を見て、二人に近づき、昨夜の武勇伝を熱く語った。

 二人ともまるで篝火に群がる害虫を見るような目で俺を見ていた。

 クロエは引いていた。
 文字通り、俺から距離を離した。侮蔑の眼差しで。
 オルマは険しい顔で眉をひそめて、
「えっと、ミュラーくんはお店でハッスルしてきたってことかな? そんな話アタシたちにして何を求めてるの?」
「男になったんだ!」
「それは聞いた!」
「最高だったんだ!」
「そんなこと聞きたくない!」
「わからないのか!?」
「知るか!!」
 オルマは頭を抱えて、
「えっとミュラーくんは初めてだったんだよね?」
「ああ!」
「初めてをお店に?」
「ああ!!」
「あ……あ……あ……あ…………」
 オルマはショックを受けたかのように空いた口が塞がらなかった。
 そしてますます険しい顔で尋ねる。
「……あのさ、一人で行ったんじゃないよね? ……ミュラーくんそういうの疎いもんね。ちなみに誰と行ったの?」
「ジラールだ!」
 するとちょうどジラールが現れて俺に声をかける。
「どうだミュラー。良かったか?」
 機嫌よさそうなジラールにオルマが大股で近づいて胸倉を掴む。
「ジラール! どうしてくれんのさ! ミュラーが素人童貞になっちゃったじゃんか!!」

 素人童貞?

 知らない言葉だ、クロエに尋ねると無視された。
 オルマが必死に俺に説明した。
「ミュラー、素人童貞ってのは、童貞よりも恥ずかしいことなんだよ。人として品性を疑うようなことなんだよ。恥を知るべきだよ!」

 ショックだった。

 みんな祝福してくれるかと思ったら、軽蔑された。

 俺はジラールを睨む。
「けど良かったろ? あのままじゃお前、チームの誰か強姦してたぜ?」

 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべるジラールの顔に渾身の力を込めた握り拳を叩きこんだ。

 殺すつもりでぶん殴った。

 そして大喧嘩になった。
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登場人物紹介

ミュラー=ルクルクト

性別 男

紛争国家群ロアの将軍アジムートの三男。

剣術と魔法を巧みに操る。

身長178センチ 体重63キロ

趣味 読書 遺跡巡り

武家の出自のため世間に疎い。本人は自覚してないがかなり空気が読めない天然で、結構差別的なところがある

オルマ

カジノ大国ベガス出身、獣族の漁師の家庭で生まれ育つ

性別 女

金属性の糸を巧みに操る

身長160センチ 体重★★ 胸は小さい

趣味 釣り

ちゃっかりした性格で機転もきく。横着者。ひょうひょうとした性格だが、判断力は高い

ジラール

性別 男

聖王国出身の傭兵であった。スラム育ちの孤児

古代の遺物、ハーミットの使い手

身長188センチ 75キロ

趣味 武器や防具の鍛冶やメンテナンス

性格は至って粗野、粗暴。下品である。乱暴な一面もあるが仲間想いで、困っている人は見捨てない面もある

クロエ

性別 女

カジノ大国、中部出身。オルマと同じく獣族だが一族でも高貴な身分の生まれである

長い槍を巧みに操る。

身長168センチ 体重★★ 胸は人並み

趣味 毒物の調合

物静かで温厚そうな見た目をしているが、性格は結構腹黒。華奢な身体をしているが抜群の身体能力を持っている。


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