第14話 ミュラー・ザ・ギャンブラー①
文字数 2,558文字
「殺される、絶対殺されるよぉ......」
そう呟きながらオルマが震えながら街を歩く。
隣に並ぶジラールも悪態を吐きながら、ゴブリンをグルングルンと振り回す。
「そもそも金貨800枚なんてどうしろっつーんだ!? クソったれ!!」
俺が取り乱した二人を諭す。
「まぁ落ち着け、姫の居場所がわかった。これは朗報だ。問題はこれで解決する。姫さえ助ければ、後は国家権力でマフィアも掃除してもらえばいい」
ジラールがじとりと睨む。
「金貨800枚はどうすりゃいい? そこらの武器屋強盗したって、せいぜい金貨10枚も手に入らねーぞ。 マジでヤバいぞ......」
そこで俺が閃く。
「なぁさっきの戦いで使ってたお前のエモノなんだが、あれは魔道具なのか? 魔法みたいなもんがでてきたんだが......」
するとジラールが自慢げに語りはじめる。
「ああ、ハーミットつーんだ。古代遺跡で発掘された旧時代の遺物の類だ。それを俺がメンテナンスした。この引き金を引くと、中に装填された魔法が込められた弾丸が飛び出す。弾丸に魔法が込められてるから、それは魔道具屋か魔法使いに頼んでるが、弾丸自体は俺が作ってる。ネックは威力が強い弾丸を発砲すると、俺の気と体力がスゲー削られるから、さっきみたいのはもう今日は撃てないな」
急に饒舌になるジラール。
意外にこいつオタクなんじゃないのかと疑う。......気持ち悪いな......。
......まぁそんなことはいい、古代遺跡の遺跡か......。
俺はしばらく逡巡して、思いついた言葉を発する。
「そいつを質屋に売ろう、高く売れそうだ」
調子よくしゃべっているジラールの腰の……なんだっけ、ハートフル? まぁ古代遺跡の遺物は骨董品屋に売れば好事家が高く買ってくれるかもしれん。
「ふざけんな! 俺の相棒を質屋に売れだと!? 何考えてんだテメーは! 殺すぞ!!」
とっさに俺の胸倉を掴む激高したジラール、すかさず俺は腰にある剣を抜こうと手を鞘にかける。
それを見たオルマは仲裁もせず、俺の剣をじっと見て、はっとした顔で声を上げる。
「ミュラーもいい剣もってるじゃん! それいいヤツでしょう」
なんだわかってるじゃないか、この俺の愛剣の素晴らしさを、俺はジラールを見下すように語る。
「ふん、故郷の将軍である父に初陣の手柄に褒賞でもらった名剣だ。国の最高の職人に作らせた一等級の大業物なんだから、そこらの剣と一緒にされては困るな」
「それも売ろう!」
なっ!!!??
思わず絶句してしまう。オルマが俺とジラールの肩を叩いて呟く。
「大丈夫だよ、後で引き取ればいい、ここがどこか忘れた? カジノ大国サラブだよ、ベガスのカジノで大金を稼ぐ! まずは二人の武器を質に入れて、元手を増やすんだ! アタシ達なら金貨800枚なんて楽勝さ!」
オルマが非常に悪だくみしてる笑顔を俺に向けてきた。
あ、なんとなく察した。
俺たちはカジノにいる。
レンタルで借りた派手な礼服を着飾り、金貨10枚をもって。
向かう先は決まっていた、ルーレットのテーブルだ。
隣にいるオルマに小さい声で尋ねる。
「......仕掛けは問題ないか?」
「バッチリさ」
煌びやかな室内にいる、色とりどりの服で着飾る男女の群れをかき分け、目的の台へと俺たち三人は向かう。できるだけ堂々として。星屑のように輝き光るシャンデリアの下に目的の場所はあった。
テーブルの前に立つと、ジラールがディ―ラーに尋ねる。
「ここの席空いてるか?」
男のディ―ラーが答える。
「どうぞ」
そして俺は椅子に座る。
ルーレット、その華やかさから カジノの女王ともいわれている。賭け方は至ってシンプル、ディーラーが回転する数字の書かれた盤面、ウィ―ルに投げ入れたボールがどの番号に入るか予想する賭けである。
そのウィ―ルには赤と黒で分けられた38の数字の番号が配置されている。テーブル上にも同じ文字列と配色がされている。ディ―ラーがウィ―ルを回転させ、ボールを逆方向へとボールを投げ込み、『プレイスユアベット』と宣告して賭けが始まる。
プレイヤーはテーブルに書かれた番号にかけ金を置く。ウィ―ルの回転が弱まったところで『ノーモアベット』とプレイヤーに通告し、賭けを締め切らせる。
ボールが落ちた数字の所にプレイヤーが賭けた番号の所に落ちれば勝ち、落ちなければ負けという極めて単純な賭けである。
他のカジノのゲームと大きく違う所はプレイヤー同士の勝負ではなく、プレイヤーとカジノ側との勝負という点だろう。
ミュラーは手持ち金貨10枚を赤のマークが描かれている所に置いた。
そして告げる。
「俺のラッキーカラーで今夜は勝負する」
ディ―ラーは苦笑しながらウィ―ルを回転させ、ボールを投げ込む。
「かしこまりました、次からは合図の後にベットしてくださいね」
ウィ―ルの回転が弱まり、ディ―ラーが告げた。
「ノーモアベット!」
回転力無くしたウィ―ルにころころとボールが転がった。
そして落ちる。赤の15に。
ミュラーの勝ちである。
数字は二色なので倍率は2倍。金貨20枚をミュラーが勝ち取る。
仮にミュラーが数字の15にベットしていれば、この時の倍率は38倍となり、金貨380枚を勝ち取ることができた。
ディ―ラーが苦笑いを浮かべながら金貨を渡し、再びウィ―ルを回転させボールを投げ込んだ。
「プレイスユアベット!」
迷わずミュラーは全ての金貨を赤の一点に賭けた。
「今夜はこのまま赤に賭けさせてもらおうか」
ディ―ラーはその言葉に唖然とする。
そして告げる。
「ノーモアベット!」
ボールは赤の3に入っていった。
その現象にディーラーは我が目を疑う。
「どうした? 早く盤を回してくれ。次も赤だ。今回勝った分も含めて40枚全額ベットだ。今夜のラッキーカラーだからな」
ミュラーはほくそ笑みながら、戸惑うディーラーに宣告した。
そしてウィ―ルの中のボールは震えるディーラーの嘆きも空しく、再び赤の数字に転がっていった。
三人はすました顔をして、果実酒を飲みながら呟く。
「今夜はついてるな。あ、次も赤だ」
騒めく観客達、わなわなと肩を小刻み揺らしながらディーラーは思った。
こいつら絶対イカサマしてるだろ! クソが!
そう呟きながらオルマが震えながら街を歩く。
隣に並ぶジラールも悪態を吐きながら、ゴブリンをグルングルンと振り回す。
「そもそも金貨800枚なんてどうしろっつーんだ!? クソったれ!!」
俺が取り乱した二人を諭す。
「まぁ落ち着け、姫の居場所がわかった。これは朗報だ。問題はこれで解決する。姫さえ助ければ、後は国家権力でマフィアも掃除してもらえばいい」
ジラールがじとりと睨む。
「金貨800枚はどうすりゃいい? そこらの武器屋強盗したって、せいぜい金貨10枚も手に入らねーぞ。 マジでヤバいぞ......」
そこで俺が閃く。
「なぁさっきの戦いで使ってたお前のエモノなんだが、あれは魔道具なのか? 魔法みたいなもんがでてきたんだが......」
するとジラールが自慢げに語りはじめる。
「ああ、ハーミットつーんだ。古代遺跡で発掘された旧時代の遺物の類だ。それを俺がメンテナンスした。この引き金を引くと、中に装填された魔法が込められた弾丸が飛び出す。弾丸に魔法が込められてるから、それは魔道具屋か魔法使いに頼んでるが、弾丸自体は俺が作ってる。ネックは威力が強い弾丸を発砲すると、俺の気と体力がスゲー削られるから、さっきみたいのはもう今日は撃てないな」
急に饒舌になるジラール。
意外にこいつオタクなんじゃないのかと疑う。......気持ち悪いな......。
......まぁそんなことはいい、古代遺跡の遺跡か......。
俺はしばらく逡巡して、思いついた言葉を発する。
「そいつを質屋に売ろう、高く売れそうだ」
調子よくしゃべっているジラールの腰の……なんだっけ、ハートフル? まぁ古代遺跡の遺物は骨董品屋に売れば好事家が高く買ってくれるかもしれん。
「ふざけんな! 俺の相棒を質屋に売れだと!? 何考えてんだテメーは! 殺すぞ!!」
とっさに俺の胸倉を掴む激高したジラール、すかさず俺は腰にある剣を抜こうと手を鞘にかける。
それを見たオルマは仲裁もせず、俺の剣をじっと見て、はっとした顔で声を上げる。
「ミュラーもいい剣もってるじゃん! それいいヤツでしょう」
なんだわかってるじゃないか、この俺の愛剣の素晴らしさを、俺はジラールを見下すように語る。
「ふん、故郷の将軍である父に初陣の手柄に褒賞でもらった名剣だ。国の最高の職人に作らせた一等級の大業物なんだから、そこらの剣と一緒にされては困るな」
「それも売ろう!」
なっ!!!??
思わず絶句してしまう。オルマが俺とジラールの肩を叩いて呟く。
「大丈夫だよ、後で引き取ればいい、ここがどこか忘れた? カジノ大国サラブだよ、ベガスのカジノで大金を稼ぐ! まずは二人の武器を質に入れて、元手を増やすんだ! アタシ達なら金貨800枚なんて楽勝さ!」
オルマが非常に悪だくみしてる笑顔を俺に向けてきた。
あ、なんとなく察した。
俺たちはカジノにいる。
レンタルで借りた派手な礼服を着飾り、金貨10枚をもって。
向かう先は決まっていた、ルーレットのテーブルだ。
隣にいるオルマに小さい声で尋ねる。
「......仕掛けは問題ないか?」
「バッチリさ」
煌びやかな室内にいる、色とりどりの服で着飾る男女の群れをかき分け、目的の台へと俺たち三人は向かう。できるだけ堂々として。星屑のように輝き光るシャンデリアの下に目的の場所はあった。
テーブルの前に立つと、ジラールがディ―ラーに尋ねる。
「ここの席空いてるか?」
男のディ―ラーが答える。
「どうぞ」
そして俺は椅子に座る。
ルーレット、その華やかさから カジノの女王ともいわれている。賭け方は至ってシンプル、ディーラーが回転する数字の書かれた盤面、ウィ―ルに投げ入れたボールがどの番号に入るか予想する賭けである。
そのウィ―ルには赤と黒で分けられた38の数字の番号が配置されている。テーブル上にも同じ文字列と配色がされている。ディ―ラーがウィ―ルを回転させ、ボールを逆方向へとボールを投げ込み、『プレイスユアベット』と宣告して賭けが始まる。
プレイヤーはテーブルに書かれた番号にかけ金を置く。ウィ―ルの回転が弱まったところで『ノーモアベット』とプレイヤーに通告し、賭けを締め切らせる。
ボールが落ちた数字の所にプレイヤーが賭けた番号の所に落ちれば勝ち、落ちなければ負けという極めて単純な賭けである。
他のカジノのゲームと大きく違う所はプレイヤー同士の勝負ではなく、プレイヤーとカジノ側との勝負という点だろう。
ミュラーは手持ち金貨10枚を赤のマークが描かれている所に置いた。
そして告げる。
「俺のラッキーカラーで今夜は勝負する」
ディ―ラーは苦笑しながらウィ―ルを回転させ、ボールを投げ込む。
「かしこまりました、次からは合図の後にベットしてくださいね」
ウィ―ルの回転が弱まり、ディ―ラーが告げた。
「ノーモアベット!」
回転力無くしたウィ―ルにころころとボールが転がった。
そして落ちる。赤の15に。
ミュラーの勝ちである。
数字は二色なので倍率は2倍。金貨20枚をミュラーが勝ち取る。
仮にミュラーが数字の15にベットしていれば、この時の倍率は38倍となり、金貨380枚を勝ち取ることができた。
ディ―ラーが苦笑いを浮かべながら金貨を渡し、再びウィ―ルを回転させボールを投げ込んだ。
「プレイスユアベット!」
迷わずミュラーは全ての金貨を赤の一点に賭けた。
「今夜はこのまま赤に賭けさせてもらおうか」
ディ―ラーはその言葉に唖然とする。
そして告げる。
「ノーモアベット!」
ボールは赤の3に入っていった。
その現象にディーラーは我が目を疑う。
「どうした? 早く盤を回してくれ。次も赤だ。今回勝った分も含めて40枚全額ベットだ。今夜のラッキーカラーだからな」
ミュラーはほくそ笑みながら、戸惑うディーラーに宣告した。
そしてウィ―ルの中のボールは震えるディーラーの嘆きも空しく、再び赤の数字に転がっていった。
三人はすました顔をして、果実酒を飲みながら呟く。
「今夜はついてるな。あ、次も赤だ」
騒めく観客達、わなわなと肩を小刻み揺らしながらディーラーは思った。
こいつら絶対イカサマしてるだろ! クソが!