第102話 リアムの覚悟
文字数 1,580文字
「一人で死にに来るとは大した覚悟だ」
燃え盛る峰の森林の中、バリオスは一人悲壮な顔をしていたリアムを見据えて、炎撒き散らしていた。
リアムは肩をすくめて、不適に笑う。
「大事な部下を巻き添えにしたくないからね、君の魔法は派手過ぎる」
リアムの言葉にバリオスは反応する。
「俺を怒らせたのは貴様達だ。俺の静かな日常と幸せを潰してくれた。俺の怒りは西大陸を燃やし尽くすまでおさまらん」
西大陸を燃やし尽くす。
バリオスの、七大聖魔の目的がわかったリアムは嘆息した。
全く最悪な状況だ。
戦争に勝つ、負けるの問題じゃない。
この戦いの果てにあるのは大陸の全土の住民の命がかかっている。
全く、僕は職業軍人であって、人類の英雄じゃないんだぞ。
こんな役回りは僕じゃない。
けどやらなくてはならない。
こいつを、こいつらを野放しにはできない。
布石はすでに打った。
覚悟を決めたリアムは手から掌印を結ぶ。
「空間錬成、凍年縛牢。代償の贄!」
瞬く間に氷結の結果がリアムとバリオスの周囲に形成された。
結界内では吹雪が吹き荒れる。
バリオスはただ呆然とその光景を眺めていた。
「空間錬成……。しかも氷か……。俺と相性は最悪だな」
炎を司るバリオスにとって対となす氷雪系の魔法は天敵であった。
この結界内では氷河の魔力が循環しており、バリオスの炎は思うように生成できない。
ただバリオスはそれを面倒くさそうに溜息を吐くだけであった。
「舐められたものだな。俺の焦熱が人間如きの空間錬成で防げると思ってるのか?」
バリオスの殺意が舞い起こると同時に、業火の火柱が噴き出す。
それはリアムが結界内で練り上げた氷の魔力を凌駕する火力を出していた。
そしてバリオスは形成された氷の結晶で作られた結界に目を配り、それを手に触れる。
「なんだこの単純な結界式は。この程度で俺の炎を封じ込められると思っているのか?」
バリオスは軽く結界を叩くと、リアムの張った結界は容易くひび割れてしまう。
「人間、勉強不足だ。空間錬成は結界が基礎だ。循環される魔力出力より強固で複雑な結界を編む。基本中の基本だ」
バリオスが業火の刃をリアムの結界に切り刻む。結界は無惨に裂かれる。
しかしリアムは笑みを崩さない。
それを見て、バリオスはあることに気付く。
何故結界を破ったのに、空間錬成が発動を続けている?
結界内の空間で魔力が循環しているから、こいつの氷結魔法が発動しているのだ。
それが破られたのに何故?
バリオスが注意深く観察すると、破られた結界の先には膜ができていた。
分厚い氷の膜が。
リアムが歪んだ笑みを浮かべた。
「人間を舐めるなよ。エルフ。これは僕の命を賭けた結界だ。魔法に必要なのは触媒と詠唱。基本だよな。詠唱は破棄した。触媒の代償は僕の命だ」
リアムの言葉にバリオスはしてやられたという顔をする。
「そうか、時間稼ぎが最初から狙いだったか。そこにいるお前も既に魂だけの存在か。お前はこの空間の器になっていたのか……」
リアムは不適な笑みを浮かべ、宣告した。
「しばらく眠って貰うぞ、エルフ。外からからの解術は不可能だ。呪いも付与しているからな。自然解凍の期限は一年だ。起きた後に、人間の恐ろしさを思い知れ」
するとリアムの形を成していたものは、吹雪と共に消え去った。
そしてバリオスの身体が徐々に凍結していく。
自身の身体が徐々に氷になっていくのを感じながらバリオスは呟く。
「この魔法には感情が伝わるな。信念か……。理解に……苦し……む……」
バリオスは氷の石像となった。
リアムの命を賭した魔法により、七大聖魔の一人の封印に成功したのだ。
ミュラー達はリアムに託された一年、その間に戦線を維持しなければならなくなった。
リアムの覚悟を受け取ったミュラー達はリアムの遺志を継ぐことを決めた。
燃え盛る峰の森林の中、バリオスは一人悲壮な顔をしていたリアムを見据えて、炎撒き散らしていた。
リアムは肩をすくめて、不適に笑う。
「大事な部下を巻き添えにしたくないからね、君の魔法は派手過ぎる」
リアムの言葉にバリオスは反応する。
「俺を怒らせたのは貴様達だ。俺の静かな日常と幸せを潰してくれた。俺の怒りは西大陸を燃やし尽くすまでおさまらん」
西大陸を燃やし尽くす。
バリオスの、七大聖魔の目的がわかったリアムは嘆息した。
全く最悪な状況だ。
戦争に勝つ、負けるの問題じゃない。
この戦いの果てにあるのは大陸の全土の住民の命がかかっている。
全く、僕は職業軍人であって、人類の英雄じゃないんだぞ。
こんな役回りは僕じゃない。
けどやらなくてはならない。
こいつを、こいつらを野放しにはできない。
布石はすでに打った。
覚悟を決めたリアムは手から掌印を結ぶ。
「空間錬成、凍年縛牢。代償の贄!」
瞬く間に氷結の結果がリアムとバリオスの周囲に形成された。
結界内では吹雪が吹き荒れる。
バリオスはただ呆然とその光景を眺めていた。
「空間錬成……。しかも氷か……。俺と相性は最悪だな」
炎を司るバリオスにとって対となす氷雪系の魔法は天敵であった。
この結界内では氷河の魔力が循環しており、バリオスの炎は思うように生成できない。
ただバリオスはそれを面倒くさそうに溜息を吐くだけであった。
「舐められたものだな。俺の焦熱が人間如きの空間錬成で防げると思ってるのか?」
バリオスの殺意が舞い起こると同時に、業火の火柱が噴き出す。
それはリアムが結界内で練り上げた氷の魔力を凌駕する火力を出していた。
そしてバリオスは形成された氷の結晶で作られた結界に目を配り、それを手に触れる。
「なんだこの単純な結界式は。この程度で俺の炎を封じ込められると思っているのか?」
バリオスは軽く結界を叩くと、リアムの張った結界は容易くひび割れてしまう。
「人間、勉強不足だ。空間錬成は結界が基礎だ。循環される魔力出力より強固で複雑な結界を編む。基本中の基本だ」
バリオスが業火の刃をリアムの結界に切り刻む。結界は無惨に裂かれる。
しかしリアムは笑みを崩さない。
それを見て、バリオスはあることに気付く。
何故結界を破ったのに、空間錬成が発動を続けている?
結界内の空間で魔力が循環しているから、こいつの氷結魔法が発動しているのだ。
それが破られたのに何故?
バリオスが注意深く観察すると、破られた結界の先には膜ができていた。
分厚い氷の膜が。
リアムが歪んだ笑みを浮かべた。
「人間を舐めるなよ。エルフ。これは僕の命を賭けた結界だ。魔法に必要なのは触媒と詠唱。基本だよな。詠唱は破棄した。触媒の代償は僕の命だ」
リアムの言葉にバリオスはしてやられたという顔をする。
「そうか、時間稼ぎが最初から狙いだったか。そこにいるお前も既に魂だけの存在か。お前はこの空間の器になっていたのか……」
リアムは不適な笑みを浮かべ、宣告した。
「しばらく眠って貰うぞ、エルフ。外からからの解術は不可能だ。呪いも付与しているからな。自然解凍の期限は一年だ。起きた後に、人間の恐ろしさを思い知れ」
するとリアムの形を成していたものは、吹雪と共に消え去った。
そしてバリオスの身体が徐々に凍結していく。
自身の身体が徐々に氷になっていくのを感じながらバリオスは呟く。
「この魔法には感情が伝わるな。信念か……。理解に……苦し……む……」
バリオスは氷の石像となった。
リアムの命を賭した魔法により、七大聖魔の一人の封印に成功したのだ。
ミュラー達はリアムに託された一年、その間に戦線を維持しなければならなくなった。
リアムの覚悟を受け取ったミュラー達はリアムの遺志を継ぐことを決めた。