悪夢を招く者 12
文字数 4,513文字
マスターはシミ一つなくなった増報装置 の表面をしばしの間眺め、寂しげに笑った。それから目を閉じると、長い息を吐 く。再び目を開けた時には、その表情は引きしまったものへと変わっていた。
「才 君、『ゲート』消滅までの時間は?」
振り返らず投げかけられた言葉に、少しの沈黙の後、答えが返ってくる。
「……約1時間。その後、大規模な『ストーム』が発生」
「ありがとう。――マリー君、『ストーム』対策の結界をこの部屋中心に展開」
「かしこまりまして」
「理沙 君と祥太郎 君は、スタッフを出来るだけアパートから離れた場所へと避難させてくれ」
「頑張ります!」
「了解!」
喪失 に浸 り続けている暇 などないということは、全員が分かっていた。今出来ることに集中するため、それぞれ気持ちを切り替える。
リミットまでの1時間は、遠子が用意してくれた時間だ。
祥太郎は理沙を連れてすぐさま転移を開始し、部屋に残された三人も、それぞれの仕事に取り掛かる。
「失 ・翼 ・如 ・鷲 ・斎 ・糸 ・絡 ・操 !」
マスターは足で床をつかむかのように力強く立ち、素早く印を結ぶ。見た目には消えても、『ゲート』の存在そのものがなくなっているわけでは、まだない。捕縛 よりもゆるく、糸のように細いつながりで『仮止 め』をするために、神経を注ぐ。
「無相繋縛糸 !」
気合とともに突き出された右手。その指先から細く鋭い風が生まれ、先ほどまで『ゲート』があった場所へと突き刺さる。跳ね返った力は強く吹いたが、立っていられないほどのものではない。すぐにマスターは、背後のマリーへと合図を出す。
「イーア・イルス・イーヴェ――我、フォンドラドルードの盟約に連なる者なり。大地を抱き、天翔ける精霊たちよ、ここに集いて守護者となれ」
この場を守る結界のデザインを考えた時、『綻びの言葉 』はすぐに見つかった。遠子が口にした言葉が、導いてくれたのだ。
『秘密の庭の守り人 !』
放たれた言葉と共に、床のあちらこちらに光が生まれ、壁を伝って天井へと向かい伸び始める。それは次第に枝分かれをし、部屋全体を包み込んでいった。
「ちょっと待てよ」
周囲に目を向けていた才が小さく言う。彼が『視 て』いるのは張り巡らされた結界ではなく、頭の中の『モニタ』だ。情報を素早く確認し、可能性の高い一つの『未来』を伝える。
「8時方向の守りが弱い。吹っ飛んじまうかも」
「えっ、じゃあ別の術を重ねがけ――でも、今のままもう少し展開した方が……」
背後に視線をやりながら迷うマリーの肩を、大きく優しい手が叩いた。
「大丈夫。マリー君はそのまま続けてくれ」
その言葉が終わらないうちに、触れられた肩から強いエネルギーが流れ込んでくるのを感じる。結界は急速に拡大し始め、まるで太古の木の根のように強固に絡み合った。
「才君、これでどうかな?」
「……おー! バッチリ。後は念のため、もっと広範囲にかけた方がいいな」
「よし。まずは一旦、部屋を出よう。才君もその方が良いだろう?」
「そうっすね。直接見渡せる範囲の方が正確だし」
「ではマリー君、私も手伝うから引き続き頼むよ」
「ちょ、ちょっと待ってくださる? マスター。もう『ゲート』の方はよろしいんですか?」
「ああ、もう処理は完了したよ」
「え、マジで? もっと色々かかるもんかと」
「まぁ私も、少しばかりパワーアップしてしまったことだしね」
言ってさっさと歩き出した背中を、二人はあわてて追う。
「祥太郎さん、あっちにも人の気配があります!」
「よっしゃ、転移させた!」
「他に誰かいますかー? いたら返事してくださいねー?」
一方の理沙と祥太郎は、アパート内を移動しながら、まだ残っているスタッフを捜索していた。見つけ次第、説明もそこそこに避難場所へと転移させる。時間がないということもあったが、『悪夢 』に操られていた影響か、動くこともままならない者も多かったからだ。
「みんな大丈夫かなぁ」
「完全に寝てるだけの人もいましたし、大きな気 の乱れもないので、多分大丈夫だとは思うんですけどね……あたしたちが付き添ってる訳にもいかないですし、とにかく今は避難を優先した方がいいかも」
「そうだね。――あっ、ドクターはどうしてるんだろう? あの人はちょっとアレだけど、専門家だから居てくれると安心だから」
「アレとはどういう意味だね、転移少年」
「うわっ! ――ど、ドクター!? 何でここに!?」
「それはこちらの台詞だが」
言われて見回すと、真っ白な部屋。どうやら無意識のうちに医務室へと転移してきてしまったようだ。ドクターは相変わらず甲冑 のような『白衣 』を着ている。
「さあ、アレとはどういう意味なのか、具体的に言ってみたまえ」
「そんなことよりドクター、今、『ゲート』の影響で、大きな『ストーム』? が発生するとかで、皆さん多目的ホールに避難してもらってるんです。ドクターも行って、健康状態を診てもらえませんか?」
理沙が状況を説明すると、ドクターは祥太郎へと詰め寄るのをやめ、がしゃんと首を振る。
「成る程、了解した。何やら騒がしかったので、ちょうど様子を見にいくところだったのだ」
「じゃあ、僕が転移を――」
「それは必要ない。君たちは引き続きスタッフの捜索を続けてくれたまえ」
言うが早いかドクターは医務室の窓を開け、そこから飛び出す。駆け寄った二人が目にしたのは、飛行機のような翼を生やした『白衣』で空へと昇っていくドクターの後ろ姿だった。
「……なんだあれ」
「とにかく祥太郎さん、あたしたちも急ぎましょう!」
「そ、そうだね」
――こうして事情を知る者も、知らない者も、それぞれが、今出来ることをやっていく。
「全員避難させた!」
「多目的ホールです。怪我してる人や、体調崩してる人は、ドクターが見てくれてます!」
「おかえりなさい! こっちもOKよ!」
「よし、私たちもアパートの外へ! ――才君、どうした?」
「……あ、いえ。さっきから、あいつの姿が見えなくて」
「棒人間 君か」
「一緒じゃなかったんですか? あたしたち、アパート中を探しましたけど、会いませんでしたよ」
「さっき、ロープでぐるぐる巻きにされたじゃない? でも、結界を張る時にはいなかったのよね。もしかしたら、巻き込まれて向こうに行っちゃったんじゃ……?」
「でも、どっかに分かんないように隠れてるのかもよ? 僕たちに会う前もずっと隠れてたみたいだし」
話している間にも、時間は過ぎていく。マスターは、一旦目を閉じ、それから皆の顔を見て、決断を告げた。
「いずれにしろ、棒人間君ならきっと大丈夫だ、信じよう。今はまず、外へ」
「ですね。……あと10分ってとこだ。祥太郎、頼む」
外に出ると、すでに空は明るくなっていた。皆、気が抜けそうになるのを堪 え、塀の外からアパートを見上げる。才はしばらくぶつぶつとつぶやいた後、急に切羽詰 まった声を出す。
「――やべぇ、何でだ? 最初の想定より、被害がでかくなる」
「才、大丈夫なのか?」
「ほとんどは今までの準備で防げるはずだ。ちょっと未知数な部分もあるが――」
「トーコはどうなるのかしら……」
広がりかけた不安を払しょくするように、穏やかな声が響く。
「問題ない。恐らく遠子君の判断で『ゲート』を破壊後、こちら側にエネルギーを逃がすことにしたんだろう。こちらにはアパートがあり、優秀なチームが居るからね。――才君は引き続き予知を。マリー君は詠唱 を続けて。祥太郎君と理沙君はサポートだ」
それには力強い答えが返ってくる。そして間もなく――その時は、来た。
アパートの内部で起きる轟音 。その衝撃でアパートが揺れ、地面が揺れた。窓が割れる音があちらこちらで聞こえる。そこから漏れ出した突風は、こちらまで届いた。
「そろそろでっけー瓦礫 が飛んでくる! 2時方向!」
「よし、僕が公園あたりに飛ばす!」
「細かいのはあたしに任せてください! ――はぁっ!」
才の指示のもと『ゲート』、そしてアパートへと張り巡らされた結界へ働きかけるマスターとマリーを守るように動く、祥太郎と理沙。
次第に嵐の残滓 が力を失って行く中、唐突に、軽やかな音が聞こえた。飛んでくる異物 にいち早く気づき、キャッチしたのは理沙だった。
「棒人間さん!?」
確かに、それは棒人間の姿をしていた。けれども手のひらに収まるほどの小ささで、まるで紙で作ったかのように軽い。
「理沙ちゃんマジで!? 見せてくれ!」
彼女の声を聞き、才を筆頭 に皆が集まって来る。差し出された手に移されたそれは、突然手足をバタバタとさせ始めた。
「こんにちは! ボクだっピ!」
「お前、何ふざけて――」
「みんなは大丈夫だったっピ? きっとモンダイナイっピね! そろそろ落ち着いて、誰かに気づいてもらえてたら嬉しいっピ」
才の言葉に反応するそぶりは見せず、小さな棒人間は語り続ける。
「ボーニンゲン……?」
「えっと、これはボクの一部だけど、ボクじゃないんだっピ。急いで切り離して、置いてったんだっピ。ボクの本体とはつながってないから、メッセージを伝えてしばらくしたら、消えちゃうっピ」
決して大きくはないその声。聞き洩 らさぬように、一同は口をつぐんだ。
「実はボクは今、遠子さんさんと一緒にいるんだっピ。正確には、その予定だっピ。あっちの世界には、ミカタは誰もいないんだっピ。ヒトリボッチはとってもさみしいから、ボクも勝手についてくことにしたんだっピ。師匠はさみしくなっちゃうけど、アパートには祥太郎さんも、マリーちゃんさんも、理沙ちゃんさんも、マスターさんも、スタッフさんも、いっぱいいっぱい、いるんだっピ。贅沢 モノだっピ! でも、ボクも遠子さんさんがいるから、ヒトリじゃないんだっピよ!」
その単調な動きは段々とゆっくりに、黒かった体もグレーになっていく。
「……そろそろ時間だっピ。また遠子さんさんも連れてアパートに帰るから、おみやげも楽しみに待ってて欲しいんだっピ!」
チャイムのような音が鳴った。棒人間の姿は、ついに消える時を迎える。
「なんだよアイツ。カッコいいことしやがって……」
その軽やかな音色は、悪夢が去ったのを告げているかのようだった。
「
振り返らず投げかけられた言葉に、少しの沈黙の後、答えが返ってくる。
「……約1時間。その後、大規模な『ストーム』が発生」
「ありがとう。――マリー君、『ストーム』対策の結界をこの部屋中心に展開」
「かしこまりまして」
「
「頑張ります!」
「了解!」
リミットまでの1時間は、遠子が用意してくれた時間だ。
祥太郎は理沙を連れてすぐさま転移を開始し、部屋に残された三人も、それぞれの仕事に取り掛かる。
「
マスターは足で床をつかむかのように力強く立ち、素早く印を結ぶ。見た目には消えても、『ゲート』の存在そのものがなくなっているわけでは、まだない。
「
気合とともに突き出された右手。その指先から細く鋭い風が生まれ、先ほどまで『ゲート』があった場所へと突き刺さる。跳ね返った力は強く吹いたが、立っていられないほどのものではない。すぐにマスターは、背後のマリーへと合図を出す。
「イーア・イルス・イーヴェ――我、フォンドラドルードの盟約に連なる者なり。大地を抱き、天翔ける精霊たちよ、ここに集いて守護者となれ」
この場を守る結界のデザインを考えた時、『
『
放たれた言葉と共に、床のあちらこちらに光が生まれ、壁を伝って天井へと向かい伸び始める。それは次第に枝分かれをし、部屋全体を包み込んでいった。
「ちょっと待てよ」
周囲に目を向けていた才が小さく言う。彼が『
「8時方向の守りが弱い。吹っ飛んじまうかも」
「えっ、じゃあ別の術を重ねがけ――でも、今のままもう少し展開した方が……」
背後に視線をやりながら迷うマリーの肩を、大きく優しい手が叩いた。
「大丈夫。マリー君はそのまま続けてくれ」
その言葉が終わらないうちに、触れられた肩から強いエネルギーが流れ込んでくるのを感じる。結界は急速に拡大し始め、まるで太古の木の根のように強固に絡み合った。
「才君、これでどうかな?」
「……おー! バッチリ。後は念のため、もっと広範囲にかけた方がいいな」
「よし。まずは一旦、部屋を出よう。才君もその方が良いだろう?」
「そうっすね。直接見渡せる範囲の方が正確だし」
「ではマリー君、私も手伝うから引き続き頼むよ」
「ちょ、ちょっと待ってくださる? マスター。もう『ゲート』の方はよろしいんですか?」
「ああ、もう処理は完了したよ」
「え、マジで? もっと色々かかるもんかと」
「まぁ私も、少しばかりパワーアップしてしまったことだしね」
言ってさっさと歩き出した背中を、二人はあわてて追う。
「祥太郎さん、あっちにも人の気配があります!」
「よっしゃ、転移させた!」
「他に誰かいますかー? いたら返事してくださいねー?」
一方の理沙と祥太郎は、アパート内を移動しながら、まだ残っているスタッフを捜索していた。見つけ次第、説明もそこそこに避難場所へと転移させる。時間がないということもあったが、『
「みんな大丈夫かなぁ」
「完全に寝てるだけの人もいましたし、大きな
「そうだね。――あっ、ドクターはどうしてるんだろう? あの人はちょっとアレだけど、専門家だから居てくれると安心だから」
「アレとはどういう意味だね、転移少年」
「うわっ! ――ど、ドクター!? 何でここに!?」
「それはこちらの台詞だが」
言われて見回すと、真っ白な部屋。どうやら無意識のうちに医務室へと転移してきてしまったようだ。ドクターは相変わらず
「さあ、アレとはどういう意味なのか、具体的に言ってみたまえ」
「そんなことよりドクター、今、『ゲート』の影響で、大きな『ストーム』? が発生するとかで、皆さん多目的ホールに避難してもらってるんです。ドクターも行って、健康状態を診てもらえませんか?」
理沙が状況を説明すると、ドクターは祥太郎へと詰め寄るのをやめ、がしゃんと首を振る。
「成る程、了解した。何やら騒がしかったので、ちょうど様子を見にいくところだったのだ」
「じゃあ、僕が転移を――」
「それは必要ない。君たちは引き続きスタッフの捜索を続けてくれたまえ」
言うが早いかドクターは医務室の窓を開け、そこから飛び出す。駆け寄った二人が目にしたのは、飛行機のような翼を生やした『白衣』で空へと昇っていくドクターの後ろ姿だった。
「……なんだあれ」
「とにかく祥太郎さん、あたしたちも急ぎましょう!」
「そ、そうだね」
――こうして事情を知る者も、知らない者も、それぞれが、今出来ることをやっていく。
「全員避難させた!」
「多目的ホールです。怪我してる人や、体調崩してる人は、ドクターが見てくれてます!」
「おかえりなさい! こっちもOKよ!」
「よし、私たちもアパートの外へ! ――才君、どうした?」
「……あ、いえ。さっきから、あいつの姿が見えなくて」
「
「一緒じゃなかったんですか? あたしたち、アパート中を探しましたけど、会いませんでしたよ」
「さっき、ロープでぐるぐる巻きにされたじゃない? でも、結界を張る時にはいなかったのよね。もしかしたら、巻き込まれて向こうに行っちゃったんじゃ……?」
「でも、どっかに分かんないように隠れてるのかもよ? 僕たちに会う前もずっと隠れてたみたいだし」
話している間にも、時間は過ぎていく。マスターは、一旦目を閉じ、それから皆の顔を見て、決断を告げた。
「いずれにしろ、棒人間君ならきっと大丈夫だ、信じよう。今はまず、外へ」
「ですね。……あと10分ってとこだ。祥太郎、頼む」
外に出ると、すでに空は明るくなっていた。皆、気が抜けそうになるのを
「――やべぇ、何でだ? 最初の想定より、被害がでかくなる」
「才、大丈夫なのか?」
「ほとんどは今までの準備で防げるはずだ。ちょっと未知数な部分もあるが――」
「トーコはどうなるのかしら……」
広がりかけた不安を払しょくするように、穏やかな声が響く。
「問題ない。恐らく遠子君の判断で『ゲート』を破壊後、こちら側にエネルギーを逃がすことにしたんだろう。こちらにはアパートがあり、優秀なチームが居るからね。――才君は引き続き予知を。マリー君は
それには力強い答えが返ってくる。そして間もなく――その時は、来た。
アパートの内部で起きる
「そろそろでっけー
「よし、僕が公園あたりに飛ばす!」
「細かいのはあたしに任せてください! ――はぁっ!」
才の指示のもと『ゲート』、そしてアパートへと張り巡らされた結界へ働きかけるマスターとマリーを守るように動く、祥太郎と理沙。
次第に嵐の
「棒人間さん!?」
確かに、それは棒人間の姿をしていた。けれども手のひらに収まるほどの小ささで、まるで紙で作ったかのように軽い。
「理沙ちゃんマジで!? 見せてくれ!」
彼女の声を聞き、才を
「こんにちは! ボクだっピ!」
「お前、何ふざけて――」
「みんなは大丈夫だったっピ? きっとモンダイナイっピね! そろそろ落ち着いて、誰かに気づいてもらえてたら嬉しいっピ」
才の言葉に反応するそぶりは見せず、小さな棒人間は語り続ける。
「ボーニンゲン……?」
「えっと、これはボクの一部だけど、ボクじゃないんだっピ。急いで切り離して、置いてったんだっピ。ボクの本体とはつながってないから、メッセージを伝えてしばらくしたら、消えちゃうっピ」
決して大きくはないその声。聞き
「実はボクは今、遠子さんさんと一緒にいるんだっピ。正確には、その予定だっピ。あっちの世界には、ミカタは誰もいないんだっピ。ヒトリボッチはとってもさみしいから、ボクも勝手についてくことにしたんだっピ。師匠はさみしくなっちゃうけど、アパートには祥太郎さんも、マリーちゃんさんも、理沙ちゃんさんも、マスターさんも、スタッフさんも、いっぱいいっぱい、いるんだっピ。
その単調な動きは段々とゆっくりに、黒かった体もグレーになっていく。
「……そろそろ時間だっピ。また遠子さんさんも連れてアパートに帰るから、おみやげも楽しみに待ってて欲しいんだっピ!」
チャイムのような音が鳴った。棒人間の姿は、ついに消える時を迎える。
「なんだよアイツ。カッコいいことしやがって……」
その軽やかな音色は、悪夢が去ったのを告げているかのようだった。