新春の幻 5

文字数 855文字

 後日。再びのミーティングルーム。

「……はぁ、何だか疲れたわね。これがお正月ボケってやつかしら」
「絶対違うと思います」

 ため息をつく遠子(とおこ)に、理沙(りさ)が突っ込みを入れる。
 しかし皆、先日の疲れが取れない気分なのは同じだった。シミュレーターは結局、物置へと戻っている。

「おい、大変だぞみんな!」

 そんな気だるい午後の空気を破るように、ドアを乱暴に開ける音と才の大声が響く。

(さい)は元気だなぁ」
「俺だってだるだるしてたい気分だけど、そうもいかなくなっちゃったの! ――とにかく、この動画見てくれよ!」

 ぶつくさ言う祥太郎(しょうたろう)から視線を外し、彼は皆が見られるよう、タブレットをテーブルの上に置く。

『……これは大きな発見ですね』

 再生された動画は、ニュース番組のようだった。
 キャスターが投げかけた言葉に、大学教授だという男が答える。

『はい、今までこの地域からは、全くこういったものは発見されませんでしたから』

 画面には地図と一緒に、<新たな遺跡発見!>というテロップが踊っていた。

『この村を治めていたのは、ニコという女性のシャーマンのようです』

 唐突に出た、聞き覚えのある名前。
 全員だるさもすっかり忘れて画面の前へと集まってくると、食い入るように見つめ始める。

『彼女は神の声を聞いて村を発展させ、災害を防いだとも言われています』
「これ……じゃあ、わたしたちが行ったのって……?」
『当時祭られていた神像も出土したとのことですよね』

 思わずつぶやいたマリーに構わず、映像の中では、やり取りが続く。
 そこには、土で出来た像がアップになっていた。
 円筒形の体から、枝のようにうねうねと伸びる十本の腕。その中心には、形の崩れた五つの顔らしきものが見える。

『はい。これはどうやら、「ショータロー神」と呼ばれていたようです』
「……邪神の像じゃねーか」

 ぽつりと漏れた祥太郎の言葉で、部屋の中はどっと笑いに包まれた。
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