第93話 最高裁の見解:2024年1月

文字数 1,650文字

(最高裁判所が、ゼロリセット計画に対する見解を発表した)

2024年1月。東京。最高裁判所。
「これから。記者会見を始めます。司会進行は、私、山中裁判官が行います。
最高裁判所が、過去に、今回のような記者会見をした例はありません。
しかし、現在の日本経済の転落は、止まる様子はありません。戦争状態になっています。
南山首相から『裁判を恐れて企業の組織改革が遅れれば、日本経済は再起不能になってしまう。ゼロリセット計画の合法性について、基本線だけでもよいから、最高裁判所の見解を明らかにしてほしい。』という要請が、2日前にありました。
自殺者の数も日に日に急増しており、最高裁判所としても、日本の危機を乗り切るために役立つのであれば、前例にとらわれずに、出来るだけのことをすべきであるという意見になりました。
以下は法的な拘束力を持たない見解であることにご注意願います。以下は、現在、最高裁判所で、合意されている基本的なガイドラインを示しています。個別案件の合法性は、個々の裁判で検討されるもので、その点は、今までと、なんらかわりません。以上、お含み置きますようお願いします。 
この計画については、まず、公平性、違法性、実効性の面で、検討しました。
(この部分は省略)
以上で、大きな問題はないとが確認されました。例外として、違法性には、一点大きな課題が残っています。
ゼロリセット計画の最大の課題は、誰が、タスクフォースの暴走を止めるかという点につきます。性善説に立てば、これほど良いシステムはありませんが、性悪説に立てば、これほど、危険なシステムもありません。タスクフォースの成否は、最低でも1年は新組織を運営した後でないと、判断できません。1年以上の時間が経過した時点で、第3者がタスクフォースの健全性を評価するシステムが必須です。タスクフォースは、評価に備えて、検討過程の十分な資料を残す義務があります。つまり、資料が残っていなかったら、それで有罪と考えるフレームの設定が必要です。また、タスクフォース・メンバーは、日本国の力が及ばない海外に逃亡しないように、事後評価終了までは、原則、国内に留まることを義務づけるべきです。逃亡防止が趣旨ですから、海外でも、日本国に準じた法的な扱いが出来る国は、問題はありません。また、日本人に限定する問題でもありません。例えば、タスクフォースに、アメリカ人が入っていても問題はないでしょう。
従って、タスフォースを第3者が評価するシステムが完備されているという条件付きですが、ゼロリセット計画は、合法であるという意見の一致をみました。
タスクフォースの全作業の評価を、1年後に行うとした場合、その時点までは、間違った判断がなされたか否かがわかりませんので、タスクフォースにとっては、大きなプレッシャーになります。タスクフォースはその性格上、情報公開には、馴染みにくいのですが、可能な範囲で、行っている作業について、随時、レポートを出すなどの情報公開を行うことが望ましいでしょう。情報公開があれば、政府も裁判所も、可能な範囲で、支援ができます。これは、前例のない社会実験なので、政府と裁判所は出来る範囲で支援をすべきと考えます。
なお、出国制限ですが、外務省と法務省から、犯罪者以外にそのような、扱いをした例はないが、技術的には、可能という返答をもらっています。
これらの問題は、個人の行動の自由を制限しますので、タスクフォース・メンバーが仕事をうける時点で、契約書に条件が明示される必要があります。そのようなテクニカルな問題は、最高裁判所の扱うマターではありません。地方裁判所の窓口サービスを利用してください。また、この件について、地方裁判所で判断が異ならないようにするために、地方裁判所を結んだゼロリセットネットワークを明日から、開設する予定です。
見解の説明は以上です」
最高裁判所は、ゼロリセット計画による全役員と全従業員の同時解雇は、特例であり、違法に当たらないという見解を出した。
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