第85話 ゼロリセット計画の質疑応答:2024年1月

文字数 1,200文字

(T商事とAAパートナーズが、ゼロリセット計画について、質疑応答する)
2024年1月。ネット会議。
ゼロリセット計画の質疑応答が開始された。
「質問を受け付けます」
クリントンCEOが口をひらいた。
「新しい船、つまり、新しい組織の計画は誰が立てるのですか」
神奈川常務が口を開いた。
「そこが、ポイントです。組織計画を立てる人と組織で働いている人は、兼務できません。OS入れ替えで言えば、アプリケーションとOSの開発者は、別のチームです。組織が小さい場合、いわば簡単なOSの場合には、小人数で兼務も可能です。しかし、現在のGUIを搭載して巨大化したOSでは、OSとアプリケーションの開発は兼務できません。
この例え話には2つの意味があります。第1は、複雑なOSの改造と複雑な組織の改造は、どちらも、素人が片手間で兼務しては出来ないということです。第2は、現在の組織改革では、DXが、組織の効率性を決定するということです。
これから、組織改革には、組織マネジメントとITの専門家が必須です。
一方、組織に固有の問題の解決には、その組織の人材の必要です。
しがらみを回避するために、タスクフォースのメンバーは、解散後も、クライエントの組織には、戻れないルールを採用します。簡単に言えば、タスクフォースのメンバーが、自分に都合の良いポストを作って、おさまれば、タスクフォースは、失敗します。
経営危機に陥ったIBMは、異業種のナビスコのCEOのルイス・ガストナーを招いて、再建に成功しています。このように、組織改革には、雇用がジョブ型で専門家を投入すること、しがらみがない人材が改革を執行することが必要です。
タスクフォースメンバーは、解散後、クライエントの組織に戻れないルールは必須です。日本の組織改革は、労働市場がないために、この条件を無視して失敗しています。これは、政府が企業にセーフティネットの役割を与えてきたことに原因があります。例えば、南太平洋のタヒチでは、大家族がセーフティネットです。大家族の一員は、職がなくとも、大家族に属していれば、食べることに困りません。一方、給与などの収入は個人ではなく、大家族のものです。こうして、大家族が、運命共同体のセーフティネットになります。年功型雇用も、企業を中心としたセーフティネットです。企業にいる限りは、仕事がなくても、出勤すれば、給与が出ます。年功型雇用は、戦時体制のためのセーフティネットなのです。そのため、労働生産性は下がり続けます。
労働市場のない日本では、タスクフォースが解散後の再就職は、難しいですから、一定期間は、失業保険のような収入保障をした方がよいかもしれません。とはいえ、年功型雇用が壊れ、ジョブ型雇用が実現して、労働市場ができるのは時間の問題です。
ゼロリセット計画では、企業年金は、整理が必要で、分割払いでもよいですが、一時金に置き換えて、清算します」
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