第72話 ブラック・フライデー:2023年11月

文字数 531文字

(南山洋子は、ユニバーサル・ジェンダー党の支持率向上策で悩んでいる)

2023年11月。東京。スーパーマーケット。
洋子は、スーパーに食料品の買い出しに来ていた。しかし、高齢者の支持率が低い問題が頭を離れず、半ば、ぼーっとしていた。スーパーは、ブラック・フライデーの売り出し中だった。ブラック・フライデーとは、アメリカで、サンクスギビングで、閉まっていた商店が、一斉に、開店する日をさす。日本では、サンクスギビングは、どこかに行って、ブラック・フライデーは、売り上げを伸ばすための安売りの日になっていた。ブラック・フライデーには、特売商品が、大きく場所を取ってディスプレイされている。
食料品売り場の隣は、おもちゃ売り場だった。5歳くらいの男の子が、母親にねだっている姿が目に入った。
「お母さん。あのかぼちゃ形のライトが欲しいんだよ。買ってもらえる」
「だって、去年も同じようなライトを買ったでしょう」
「でも、あれは、こわれちゃって、明かりがつかないんだ」
「仕方がないわね。今度は、こわさないように、注意して使ってね」
「うん。こわさないように、注意します。ライト、買ってもらえるんだね」
「1つだけよ」
その時、洋子ははっと、気づいた。「そうだ。おねだりすればいいんだ」と。
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