第41話 年功型雇用の問題点整理:2023年5月

文字数 2,093文字

(年功型雇用の問題点を整理する)

2023年5月。
この物語では、年功型雇用と女性比率の変更が大きな焦点になるので、ここでは、この問題を具体例で説明する。
煩わしいと感じる人は、この節は読み飛ばしてもらっても構わない。

(1)女性比率の変更と年功型雇用
1)ジョブ型雇用の場合
社員が100人で、年間10人が退職し、10人を新規に採用する(入替率10%/年、以下/年は省略)と仮定する。50%の女性優枠を設定する。開始年の女性比率を25%とすれば、退職者10人中2.5人が女性である。新たに10人雇用して、50%の5人が女性の場合、1年目は、女性は、2.5人減って、5人増え、差し引き2.5人増(2.5%増、27.5%)になる。2年目は、女性は、退職者10人中2.75人で、採用者の10人の中の5人であるから、差し引き2.25人増える。以下、繰り返し計算(数字はパーセント)を示す。これから45%に達するにはに17年かかる。
年 女性数 退職数 雇用数 増減
1 25.00 2.50 5.00 2.50
2 27.50 2.75 5.00 2.25
3 29.75 2.98 5.00 2.03
(途中省略)
14 43.65 4.36 5.00 0.64
15 44.28 4.43 5.00 0.57
16 44.85 4.49 5.00 0.51
17 45.37 4.54 5.00 0.46
同様に、入替率20%の場合には、9年かかる。

2)年功型雇用の場合
40年雇用の年功型雇用の入換率は、2.5%である。社員が100人なら、年間2.5人が退職し、同数を新規に採用する。ここで、50%の女性優先枠を設定する。開始年の女性比率は25%とする。
退職者が年齢の玉突きで発生すれば、退職者の女性比率は、全体の女性比率の影響を受けずにほぼ一定と見做せる。この点は、ジョブ型雇用と異なる。1回の入替で女性は、2.5x 0.25人減って、2.5x0.5人増えるので、女性比率の増加分は、2.5x0.25人=0.6人になる。女性比率が、50%になるまでの時間は、(50-25)/0.6=40年になる。同様に、女性比率が、45%(9割水準)になるまでの時間は、(45-25)/0.6=33年になる。
3)まとめ
まとめておこう。ジョブ型、年功型の後の数字は代替率である。

       ジョブ型(20) ジョブ型(10)    年功型(2.5)
9割水準(45%)  9年       17年       33年
6割水準(30%)  2年       4年        8年

このように、入替率の極端に低い年功型雇用は、女性差別になっている。

(2)年功型雇用のその他の問題点
1)社会変化への追従性
この30年の間に、世界は変化したが、日本だけは取り残されている。ここでは、年功型雇用の社会変化への追従性の問題を整理する。
a)非現実的な時定数
人口問題では、生産年齢人口、つまり、子供を生むことの出来る女性の年齢を20歳以上とすれば、20歳の女性の人口は、20年前の出生数で決まる。この20年が時定数である。年功型雇用の時定数は40年で、この倍もある。
b)組織システムの欠陥
ジョブ型雇用では、労働生産性の低い部門は、賃金が安くなり、人が集まらなくなり、自ずと淘汰される。ジョブ型雇用には、組織を自動的に再編するメカニズムが組み込まれている。
一方、年功型組織には、生産性の低い部門が淘汰されない。企業で業績が悪くなると、不採算部門を切り離すこともあるが、組織改変のメカニズムが内包されていないため、切り離しは困難を伴う上、時期が、遅すぎる例が多い。ジョブ型雇用を前提としたライフプランを立てている人は解雇されると、人生が狂ってしまう。
原発をトイレのないマンションに例えた人がいるが、年功型雇用は、止められない点で、ブレーキのない列車と言えるかも知れない。
2)倫理上の欠陥
年功型雇用に慣れてしまうと、ムラ社会の倫理に慣れて、認知バイアスが生じ、倫理違反でも、そのことが理解できない。UNGP(ビジネスと人権に関する指導原則)によって、この問題は重要になる。
a)同一労働同一賃金
正社員と非常勤のように、年功型雇用は、賃金はポスト(一種の身分)についていて、同一労働、同一賃金ではない。
b)成果主義
賃金がポストについているから、成果主義は、問題外である。評価されないから努力しなくなる。成果主義の賃金は、能力ポテンシャルと出来高で決まる。能力ポテンシャルを年功に入れ替えているため、年功型雇用の中に形式的に出来高を入れても、成果主義にはならない。
c)鉄の三角形
政治家、官僚、お抱え企業の既得利権の三角形が存在する。年功型雇用は天下りと政治家の利益誘導を支え、不必要な補助金やハコモノの建設に不要な予算が割かれ、新たに必要な政策が進まなくしている。
d)不祥事の隠蔽
年功型雇用では、定年前に退職すると、若年時に搾取された分を、取り戻せない。このため、不祥事は隠蔽される。


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