第８４話 ゼロリセット計画の概要：２０２４年１月
文字数 1,918文字
（T商事とAAパートナーズが、ゼロリセット計画について、検討する）
2024年1月。ネット会議。
T商事とAAパートナーズのズーム会議が始まった。
「昨日は要請書をありがとうございました。社内で、『ゼロリセット計画』には、よくわからない点が多いという質問が出ましたので、補足説明をお願いしました。本日、早速応えていただいて、感謝しております」と、T商事の杉川社長が言った。
「ことは、急を要する。当社も、出来る限り支援するつもりだ。今回は、組織改革担当のジョーンズに『ゼロリセット計画』の説明を依頼した。
まず、ジョーンズの説明と質疑応答で進めたい」
AAパートナーズのクリントンCEOが発言した。
「それでは、ゼロリセット計画を説明します」
ジョーンズが口を開いた。
「この方法は、コンピュータ・システムの更新方法からアイデアをもらっています。
一般に、組織の寿命は30年と言われます。これは、創業時にあった組織の活力が、30年も経つと、なくなることを指します。この問題は、経営学では、解決策が見つからない難問でした。
皆さんは、仕事にPCを使っていると思います。PCのいろいろな仕事（ジョブ）やアプリケーションはOSを通して行われます。OSはいわば、PCの組織です。OSのルールに従って、複数のアプリケーションはデータのやり取りをしています。
OSも使っているうちに不具合が出くるので、バグを修正したり、機能改善をします。
これも、皆様の会社の組織改革と同じです。
事前に送付した円と四角が書いてある資料を示します。
左の円は、古いOSです。右の四角が新しいOSです。
バグの修正や、機能改善には、OSのアップデート、簡単に言えば、パッチファイルを使ったバージョンアップで対応します。
しかし、アップデートは万能ではありません。大改造には、アップデートではなく、OSを丸ごと入れ替える必要があります。OSはアップデートを繰り返すと、だんだんパフォーマンスが低下して動きが鈍くなります。アップデートは、通行止に、迂回路を作るようなもので、パフォーマンスが落ちます。通行止のたびに迂回路を追加すると、道路は曲がりくねって、速度が落ち、いつかは、道路をゼロから作り直した方がいい時がきます。OSの入れ替えは、そうした荒療治です。
問題が発生する毎に、企業の組織に新しい担当部署を追加する方法は、迂回路と同じで、パフォーマンスが低下し、どこかで、耐えられる限界を超えます。
企業組織のDXには2つの問題があります。
第1は、組織の仕事の流れが、DXに対応していない場合です。この場合、DXには効果がありません。
第2は、組織がアップデートによる制度疲労を起こしている場合です。つまり、手直しするより組織をゼロから作りなおした方が良い状態に達した場合です。例えば、年功型雇用とジョブ型雇用では、組織のOSが違います。年功型雇用を残しながら、新社員をジョブ型雇用で採用をすると、会社の中に2系統の組織が併存します。PCでいえば、古いOSと新しいOSを同時に使うようなもので、混乱を避けるには、統一が必要です。古い年功型組織は、継続できないので、ジョブ型組織に統一する必要があります。
さて、第2の問題で、企業の組織ゼロから組み直す時には、第1の問題点も同時に解決出来るように、新しい組織をゼロから設計すべきです。つまり、これが、ゼロリセット計画になります。
資料の2ページ目に、2艘の船の絵があります。
企業を左の古い木造船だとします。ここに、LANケーブルを引き、WiFiをセットすると、船の中は配線だらけになります。それよりも、LANやWiFiに対応した新しい船を作って、乗り換えた方が効率的です。ゼロリセット計画は、DXに対応した、仕事の効率の良い組織を作って、その船に乗り換えます。右の新しい船は、DXと親和性の高いジョブ型雇用になっています。
日本企業の年功型を維持した組織改革は、船に乗ったまま、修理をする方法です。本格的な修理は、乗員と乗客を船（企業）から降ろして、無人にしてドックに入れます。しかし、現在は、船（企業）を降りたら、行く先がない（再就職できない）ので、溺れてしまう。だから、ぼろ船に穴が開いたら板を当てて、しがみついています。一方、海外の競争企業は、性能の良い新造船に乗っています。これでは、国際競争力を取り戻せません。組織の部分的な改修は、コストが掛かるだけで効果はありません。ゼロリセット計画は、一番合理的な方法なのです。弊社は、T商事に無理をお願いしているのではありません。その点をご理解ください。
以上で、説明を終わります。質疑応答は、休憩の後にしましょう」
2024年1月。ネット会議。
T商事とAAパートナーズのズーム会議が始まった。
「昨日は要請書をありがとうございました。社内で、『ゼロリセット計画』には、よくわからない点が多いという質問が出ましたので、補足説明をお願いしました。本日、早速応えていただいて、感謝しております」と、T商事の杉川社長が言った。
「ことは、急を要する。当社も、出来る限り支援するつもりだ。今回は、組織改革担当のジョーンズに『ゼロリセット計画』の説明を依頼した。
まず、ジョーンズの説明と質疑応答で進めたい」
AAパートナーズのクリントンCEOが発言した。
「それでは、ゼロリセット計画を説明します」
ジョーンズが口を開いた。
「この方法は、コンピュータ・システムの更新方法からアイデアをもらっています。
一般に、組織の寿命は30年と言われます。これは、創業時にあった組織の活力が、30年も経つと、なくなることを指します。この問題は、経営学では、解決策が見つからない難問でした。
皆さんは、仕事にPCを使っていると思います。PCのいろいろな仕事（ジョブ）やアプリケーションはOSを通して行われます。OSはいわば、PCの組織です。OSのルールに従って、複数のアプリケーションはデータのやり取りをしています。
OSも使っているうちに不具合が出くるので、バグを修正したり、機能改善をします。
これも、皆様の会社の組織改革と同じです。
事前に送付した円と四角が書いてある資料を示します。
左の円は、古いOSです。右の四角が新しいOSです。
バグの修正や、機能改善には、OSのアップデート、簡単に言えば、パッチファイルを使ったバージョンアップで対応します。
しかし、アップデートは万能ではありません。大改造には、アップデートではなく、OSを丸ごと入れ替える必要があります。OSはアップデートを繰り返すと、だんだんパフォーマンスが低下して動きが鈍くなります。アップデートは、通行止に、迂回路を作るようなもので、パフォーマンスが落ちます。通行止のたびに迂回路を追加すると、道路は曲がりくねって、速度が落ち、いつかは、道路をゼロから作り直した方がいい時がきます。OSの入れ替えは、そうした荒療治です。
問題が発生する毎に、企業の組織に新しい担当部署を追加する方法は、迂回路と同じで、パフォーマンスが低下し、どこかで、耐えられる限界を超えます。
企業組織のDXには2つの問題があります。
第1は、組織の仕事の流れが、DXに対応していない場合です。この場合、DXには効果がありません。
第2は、組織がアップデートによる制度疲労を起こしている場合です。つまり、手直しするより組織をゼロから作りなおした方が良い状態に達した場合です。例えば、年功型雇用とジョブ型雇用では、組織のOSが違います。年功型雇用を残しながら、新社員をジョブ型雇用で採用をすると、会社の中に2系統の組織が併存します。PCでいえば、古いOSと新しいOSを同時に使うようなもので、混乱を避けるには、統一が必要です。古い年功型組織は、継続できないので、ジョブ型組織に統一する必要があります。
さて、第2の問題で、企業の組織ゼロから組み直す時には、第1の問題点も同時に解決出来るように、新しい組織をゼロから設計すべきです。つまり、これが、ゼロリセット計画になります。
資料の2ページ目に、2艘の船の絵があります。
企業を左の古い木造船だとします。ここに、LANケーブルを引き、WiFiをセットすると、船の中は配線だらけになります。それよりも、LANやWiFiに対応した新しい船を作って、乗り換えた方が効率的です。ゼロリセット計画は、DXに対応した、仕事の効率の良い組織を作って、その船に乗り換えます。右の新しい船は、DXと親和性の高いジョブ型雇用になっています。
日本企業の年功型を維持した組織改革は、船に乗ったまま、修理をする方法です。本格的な修理は、乗員と乗客を船（企業）から降ろして、無人にしてドックに入れます。しかし、現在は、船（企業）を降りたら、行く先がない（再就職できない）ので、溺れてしまう。だから、ぼろ船に穴が開いたら板を当てて、しがみついています。一方、海外の競争企業は、性能の良い新造船に乗っています。これでは、国際競争力を取り戻せません。組織の部分的な改修は、コストが掛かるだけで効果はありません。ゼロリセット計画は、一番合理的な方法なのです。弊社は、T商事に無理をお願いしているのではありません。その点をご理解ください。
以上で、説明を終わります。質疑応答は、休憩の後にしましょう」
