第104話 プランB

文字数 1,129文字

チェーンソーが街路樹の枝払いをしている。2019年の台風で、街路樹が転倒したため、市が2年がかりで、全ての街路樹の枝祓いをしている。

この物語は、ゼロリセット計画が実現するというストーリーである。これは、木が倒れる前に枝払いをするのに似ている。ゼロリセット計画がなかったからといって、年功型雇用という木は、IT化や人権問題といった台風にいつまでも耐えられる訳ではない。もちろん、倒れるまで、手を付けないというプランBのシナリオもありうる。これは、ゼロリセット計画のない世界だ。
そこで、プランBを概観して、筆者が、ゼロリセット計画を使ったプランAを物語に採用した理由を明確にしておこう。筆者は、運命論者ではない。未来が、プランAになるか、プランBになるかは、読者次第である。

プランBでは、いつ年功型雇用という木が倒れるのだろうか。ドライビングフォースは、ジョブ型雇用による労働市場の成立である。年功型雇用を辞職して、ジョブ型雇用に移行する方が、経済的に合理的な行動になれば、年功型組織からは、雇用難民が発生して、人がいなくなる。その時点で、年功型雇用の企業はつぶれてしまう。株価は、業績を先読みするので、こうした人の流れが見えてきた時点で、年功型雇用企業の株価は下落して、対策が打てなくなる。代わりに台頭するのはジョブ型雇用企業である。おそらく、多くのベンチャー投資家の描いている将来像はこんなものだろう。
雇用難民が発生する前に、新規雇用者、特に、自分の労働に価値があると思っている人は、年功型雇用の企業には、就職しなくなる。現在は、この段階である。つまり、年功型雇用の企業は、優秀な新規人材の確保が出来なくなっている。ジョブ型雇用が進んで、ジョブ型雇用をとる企業が、全体のある比率、例えば、3割くらいを越えれば、雇用難民が発生するだろう。
この物語が、プランAにこだわる理由は、次の3点である。

● プランBで、雇用形態が変わる時期は、プランAより遅くなる。
● プランBでは、社会的な混乱が生ずる。
● プランBで、ジェンダー問題などの人権問題の解消が出来るかは定かでない。

従って、この物語では、プランAを採用した。T商事で、リセット後の雇用が混乱しているように見えるかもしれない。しかし、プランBで、雇用難民が生じた場合の混乱はこの程度ではおさまらない。プランAはプランBに比べれば、ソフトランディングなのである。



 この物語は、2021年3月時点の国際情勢をヒントに、2022年4月から、物語を構成しています。このため、連想される国際情勢はあると思われます。
とはいえ、この物語はフィクションです。登場人物、組織やその名称は、実在の人物や組織とは関係がありません。
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