第2話 マネキン女

文字数 403文字

「宮島さん、起きて下さい」
 そこに、どこか金管楽器の音色のような女の声が、脳内に飛び込んできた。
 その声に反応して、俺は数十年、いや百年以上かもしれない、閉じていた二重瞼をゆっくりと開けた。
 瞳に全ての照明を浴びせられたようで、すごく眩しい。
「どうですか、気分は?」  
 声をかけてきたのは、デパートの婦人服売り場あたりにでも並んでいそうな、白人のマネキンのような容姿をした女だった。
 いや、本当にマネキンのように見える。じっとしていれば、まったく分からない。俺が老眼でなくても、そういう風に見えるだろう。
 そのマネキン女は、優しげな口調で訊いてきたが、どこか冷たさも感じる。
「ここは?」
 俺は長らく使っていなかった口をぎこちなく動かし、逆に訊き返した。
 声に続いて瞳を動かし、周りに眼をやった。
 眠りに入る前の景色は、そこにはなかった。何もかもが、がらりと変わっていた
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