第５話　統一国家

「本当にアメリカや日本が無くなって、世界が１つの国になった、ということですか？」
　信じられないという顔で訊き返した。独裁という言葉は、喉に仕舞った。
「ええ、そうです。アメリカ、日本、中国、世界の国は５年前に全て無くなり、グレートアースという国家が誕生しました」
　また機械的に説明してきた。
　その口振りと、マネキン女の愛想のない表情は、見方によっては、まるで感情のないロボットか、アンドロイドのように思えた。
「いったい、どうやって？　もし本当にそうなら、北朝鮮の核問題や中近東の戦争のレベルではない。アメリカと中国やロシアの、核の全面戦争が起きてしまう」
　俺も同じ口調で疑問を投げ返した。
「いいえ、核戦争などは起きませんでした。ちょっとした戦争はありましたが、反乱軍は直ぐに全滅して、統一国家が誕生しました」　　
　また感情のない声で説明してきた。
「いったい、誰が？　どうやって実現させたのですか？」
　肝心な質問に答えなかったので、再度訊き返した。
　世界の国が一つになったという喜びなど、なぜかまったく湧かずに、不安だけが増していた。嫌な予感だけが、増幅していた。