第9話 AIの家畜

文字数 488文字

 すると、向かい合わせの倉庫のような灰色の四角い建物から、10数人の男たちがぞろぞろと出てきた。その姿を眼にして、少し安堵した。だが、その人たちの様子からは、生気が伝わってこない。全員が工場の作業員のような同じ衣服を身に着けているが、通夜に参列している人たちのように暗い姿をしていて、どうも様子がおかしい。
 まるで全員が囚人か、奴隷のように見える。
「あの人たちは?」
 刑務所の監視員のように、背後にぴたりと立っている女に訊ねた。
「あの人たちは芝刈りや草木の手入れをしている人たちです」
 横に並ぶと、女は淀みなく答えてきた。
「他には人を見かけませんが、それに車が走れるような道もないようですけど。いったいここはどういう都市なのですか?」
 作業を始めている人たちの様子を確かめるように見つめながら、すぐに訊き返した。
「この第7区にいるのは、あそこにいる人間たちだけです」
 まるで飼い主が奴隷でも見るような眼をして、また機械的な声で答えてきた。
「人間たち? あんたも、あの人たちと同じ人間じゃないのか?」
 女の見下すような言い草に、思わず強い声で訊き返した。
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